メキシコ生まれ、メキシコ育ちのジャイール氏は、数年前まで縁もゆかりもなかった日本のサッカークラブ、アスルクラロ沼津(明治安田J3リーグ)を応援している。
きっかけは2018年、インターネット上で偶然、サッカーのユニフォームを着た日本のアニメキャラクターの画像を見つけたことだった。
サッカーを愛するジャイール氏は、ユニフォームをきっかけに「これは何というアニメだろうか」と興味を持ち、調べてみると『ラブライブ!サンシャイン!!』であることがわかった。そして、何気なく『ラブライブ!』シリーズを見始めたところ、いつのまにかアニメに夢中になっており、同シリーズの舞台となる沼津市がホームタウンのアスルクラロ沼津の動向も追うようになったという。
アスルクラロ沼津の応援を始めたジャイール氏は、日本在住の友人経由で公式ユニフォームを複数枚入手。そして、アスルクラロ沼津のユニフォームを着てメキシコのスタジアムにサッカー観戦に行き、同国の全国放送に大きく映し出され、アスルクラロ沼津の公式SNSやJリーグの公式SNS(英語版)に取り上げられた。
また、2022年にはJ3ライセンス維持(ホームスタジアム照明改修資金の調達のため)を目的としたクラブのクラウドファンディングにメキシコから支援。更に今年4月には2024 JリーグYBCルヴァンカップ・1stラウンド2回戦、アスルクラロ沼津対北海道コンサドーレ札幌の最も高額なチケット(SS指定席)を購入して、自身のXで「チケットを無償で譲渡したい」、「スタジアムを埋めないと!」と投稿し、代わりに応援してくれる人へチケットを託したこともある。
そんなジャイール氏の夢は、アスルクラロ沼津をスタジアムで応援すること。そのための貯金を続け、12日に父親と念願の来日を果たした。
メキシコの空港へ向かう前に「ついにこの日が来た。既に泣きそうだよ」と語っていたジャイール氏は、成田空港に到着すると沼津へ直行。すると、SNSなどでジャイール氏の存在を認識していたアスルクラロ沼津サポーターが沼津駅で同氏の存在に気づき、駅から約2キロメートル離れた同氏の宿泊先まで道案内をしてくれた。
そして翌日の13日、ジャイール氏は『ラブライブ!サンシャイン!!』とのコラボマッチとして開催された2024明治安田J3リーグ第32節アスルクラロ沼津とカマタマーレ讃岐の試合に、「沼津市を深く感じるためにスタジアムまで歩く」と言い、宿泊地から約4〜5キロメートル離れた愛鷹広域公園多目的競技場に徒歩で到着。数年前から夢見てきた、アスルクラロ沼津のスタジアム応援を果たした。
試合は43分にアスルクラロ沼津がクイックリスタートから和田育のゴールで先制するも、47分、64分にカマタマーレ讃岐にゴールを許し、1-2で敗れた。
応援するチームの敗戦に心を痛めたジャイール氏だったが、スタジアムそして、試合終了後には居酒屋でアスルクラロ沼津のサポーターと交流を深め「ここに来れて嬉しい。試合には負けてしまったけれど、サッカーはボールをゴールに入れる以上の何かがある」と、サッカーをきっかけに日本のサポーターとの絆を作リ出した幸せを語った。
取材・文=阿部将仁
【写真・動画】アスルクラロ沼津vsカマタマーレ讃岐のハイライト及び、アスルクラロ沼津公式やJリーグの公式SNS(英語版)、メキシコの全国放送に映るジャイール氏