一般販売が始まった日産自動車の「キャラバン マイルーム」が好調だ。キャンピングカーは自動車メーカーが作るクルマをベース車両として使用し、さまざまなビルダーが手掛けるのが一般的だが、メーカー自らが作ると何が違うのか。日産の担当者に話を聞いてみた。
技術の日産が本気を出した?
キャラバン マイルームは商用車「キャラバン」の車中泊仕様。お気に入りの空間をそのまま外に持ち込めるというのがコンセプトだ。
木材をふんだんに使用した内装はまさに部屋といった感じ。車内で過ごせばクルマに乗っていることを忘れてしまいそうな空間を作り上げている。
キャラバン マイルームの大きな特徴になっているのが、2列目シートに採用されている「2in1シート」だ。「ドライブモード」「ベッドルームモード」「リビングルームモード」の3役を兼ねるこのシートは、モードによって座面と背もたれの硬さが変わるという性質を備えている。
例えば前向きのドライブモードでは、いわゆる一般的な自動車の後部座席のような座り心地なのだが、シートの部分を引き上げて背もたれの状態にして、もともと背もたれだった部分をたたんでシートにすれば「リビングルームモード」に切り替わり、ソファーのように柔らかい座り心地に一変するのだ。
表面と裏面で硬さの異なるクッションパッドを採用することで実現した仕組みだが、シーンごとにおける利用者の快適性を想定して作り込まれていることが伝わってくるポイントだ。
自動車メーカーが作るキャンピングカーの強みは?
2024年8月に一般販売が始まったキャラバン マイルームだが、日産担当者に聞けばすでに多くの受注が入っているという。要因については「昨年190台限定で販売した際に購入できず、待っていたお客様が多かったのでは」との分析だった。
キャラバン マイルームには上位モデルの「グランド プレミアムGX」(570.9万円~)と「プレミアムGX」(551.65万円~)の2つのグレードが存在する。
簡単に違いを言えば、「グランド プレミアムGX」はワンタッチオートスライドドアやスライドドアオートクロージャーなどが標準装備になっていたり、ステアリングに本革を使っていたりする。上級グレードは快適装備が少し多くて、内装がちょっとおしゃれだと考えればいい。
現状では想定以上に「グランド プレミアムGX」の方が人気とのこと。販売価格を見ると20万円ほどの差があるが、それくらいであれば、より装備や内装が充実している方が魅力的と考えるユーザーが多いということだろう。
一般的にはビルダーが手掛けることが多いキャンピングカーだが、自動車メーカー自らが作る場合の強みとは何なのか。担当者が挙げたのは品質の高さだ。
キャラバン マイルームは架装した状態でメーカー基準の検査を行い、ガタつきがないかどうかなどを入念に調べている。この検査には走行実験も含まれ、そこで得られた課題はクルマ作りにフィードバックしているとのこと。要は、普通に日産車を購入するのと変わらない品質が保証されているわけだ。
また、一般的なキャンピングカーの場合、架装を手がけた会社以外ではメンテナンスを行えないことが多いが、キャラバン マイルームであれば全国の日産ディーラーでメンテナンスが受けられる。
キャラバン マイルームは旅に出たくなるクルマであるだけに、旅先で思わぬ事故やトラブルに巻き込まれて破損してしまうケースも想定される。そんな時でも、全国の日産ディーラーに駆け込めば対応してもらえるということが、大きな安心感につながっているのは想像に難くない。こんなところも、自動車メーカーがキャンピングカーを作る意義と言えるかもしれない。