トマトの品種紹介
トマトの品種にはいくつかの分類方法があります。用途別には、生食用、調理用、加工用の品種に分けられます。日本では生食用の品種が多く、色、形、大きさ、食味が異なるさまざまなトマトがあります。色で分けると、桃色系(ピンク系)、赤系、緑系など。大きさで分けると、大玉、中玉(ミディ)、小玉(ミニ)があります。
本記事では、トマトの大きさ別に、21品種の特徴や味わいを紹介します。
大玉トマトの品種
大玉トマトは、果重約100g以上のものです。大きいものは200g以上で収穫されるものもあります。日本の大玉トマトは桃色系がその多くを占めています。「桃太郎」「ファースト」「りんか@409」などが、代表品種です。
桃太郎
完熟トマトの先駆けとなった桃色系トマト。現在、最も多く生産されている品種です。赤く色づいてから収穫しても輸送中の傷みが少なく棚持ちがいい品種として開発されました。腰高で丸みがあり、果重は平均200gほど。糖度が高く酸味もあり、バランスのとれた味わいです。肉質がしっかりしているので、生食はもちろん、スープや炒め物などの加熱調理にも幅広く使えます。
1985年の初代「桃太郎」以来、桃太郎シリーズ(タキイ種苗)として20種類以上がラインナップされています。岡山県、福島県、北海道をはじめ全国各地で栽培されています。主に6月から12月に収穫される夏秋トマトですが、さまざまな作型に対応しており、産地をリレーして通年で流通しています。スーパーや青果店、産地の直売所、ネット通販などで購入できます。
ファースト
昭和初期に愛知県で開発された桃色系トマト。あいちの伝統野菜に認定されています。果重は平均230gほどで、果実の先端がとがっているのが特徴。甘さと酸味のバランスがよく「昔ながらのトマトの味」が楽しめます。また、皮が薄く、ゼリー部分が少なく実が崩れにくいので、サンドイッチやトマトスライスなどの調理に向いています。
かつては主要品種としてさかんに生産されましたが、栽培や輸送の難しさから、今では比較的希少な品種です。愛知県をはじめ全国の産地で冬春トマトとして栽培され、12月から5月に出荷される旬の味覚。スーパーや産地の直売所、ネット通販などで購入できます。
りんか®409
完熟で収穫してからも日持ちのする桃色系トマト。高温期の着果が安定する品種として開発されました。腰高で丸みがあり、皮も果肉も濃いめの赤色です。肉質は緻密でややねっとりとした食感。甘みが強く酸味もあり、コクとうまみが感じられます。生食はもちろん、パスタソースなどの加熱調理にも適しています。
露地栽培や水耕栽培にも向いている品種で、全国各地で栽培されています。病気に強いので減農薬栽培にも向いています。産地や栽培方法によっても異なりますが、主に夏秋トマトとして6月から11月に出荷されています。スーパーや産地の直売所、ネット通販などで購入できます。
サンロード
完熟で収穫してからも日持ちのする桃色系トマト。果実が割れにくく、病気に強い品種として開発されました。腰高で丸みがあり、果重は平均150〜250gです。肉質はやわらかくジューシー。甘みが強く、適度に酸味もあり、うまみが感じられます。その特徴を生かして、トマトジュース、リゾット、カレーなどにも。
さまざまな病気に耐性があるので、減農薬栽培にも向いています。全国的に栽培され、ブランド化している産地もあります。主に夏秋トマトとして栽培され、6月から11月が収穫期ですが、初夏や初冬にずらして出荷している産地もあります。スーパーや産地の直売所、ネット通販などで購入できます。
パルト
赤く熟した状態で出荷できる「王様トマト」シリーズ(サカタのタネ)として開発された桃色系トマト。腰高で丸みがあり、果重は平均200g程度。肉質は硬めでシャキシャキとした食感です。甘みが強く、適度な酸味があり、バランスの取れた味わい。果肉がしっかりしているので崩れにくく、トマトカップサラダやおでんの具などに丸ごと使ってもよし。
主に夏秋トマトとして全国的に栽培されています。早熟栽培ができる品種のため、通常よりも収穫期を1カ月ほど早めて5月から10月に出荷されることが多いようです。スーパーや青果店、産地の直売所、ネット通販などで購入できます。
ルネッサンス
色は全体的に赤く、ファーストトマトのように先端がとがり、縦半分にカットするとハート型になります。平均果重は150gほど。皮は薄く、果肉がしっかりしていて、ゼリーが少ないことが特徴。フルーツトマト栽培で使われることが多い品種ですが、一般的な方法で栽培されたルネッサンスは、甘さと酸味のバランスが取れた味わいです。
愛知県農業総合試験場とサカタのタネが共同開発した品種で、愛知県設楽町の名倉地区の特産品。8月から10月に収穫される夏秋トマトで、スーパーや産地の直売所、ネット通販で購入できます。
中玉トマトの品種
中玉トマトは、果重30〜60g程度、果径4〜5cm程度のもの。ミディトマトともいいます。栽培方法を工夫して糖度を高めたフルーツトマトや房ごと収穫できるものも多くあり、食べきりサイズで需要が高まっています。
フルティカ
真っ赤でふっくらと丸い中玉トマト。平均果重は40~50g。糖度は平均7~8度と高く、酸味が少なく、コクとうまみがあり、果物のような味わいです。果肉は滑らかで弾力があり、果皮は薄く、ゼリー部分が少なく食味の良さに定評あり。丸かじりはもちろん、ピザのトッピングやカプレーゼなどの調理にも適しています。
裂果しにくいため夏秋期の露地栽培にも向いています。産地は国内各地に点在し、露地やハウスで栽培され、通年出荷されています。1本の房の両側にぎっしり並んで実がなるので、房どりして売られることもあります。スーパーや産地の直売所、ネット通販などで購入できます。
レッドオーレ
濃赤色でまん丸い球形、果重は平均50gほどでピンポン玉大の赤玉トマトです。糖度が高く酸味はほどんどなく、果肉は粘質でとろりとした、フルーティーな味わいが特徴です。生のままグリルしてもよし、お肉と一緒に煮込んでもよし。同じシリーズで果実が薄黄色のイエローオーレー、橙色のオレンジオーレもあります。
さまざまな作型に対応できる品種のため、全国各地で栽培され通年で出回っています。なかでも静岡県清水区の三保・駒越地区は代表的な産地の一つ。温暖な気候を利用したハウス栽培で、9月中旬から6月下旬に出荷しています。スーパーや産地の直売所、ネット通販などで購入できます。
シンディスイート
色鮮やかでツヤがあり、やや腰高の球形で見た目もよい赤玉トマト。平均重量は40gほど。平均糖度は9度と甘みが強く、酸味もあり、フルーツのような食味です。皮が厚く果肉もしっかりしていて食べ応えがあります。生のまま丸かじりはもちろん、サラダ、ピクルスやマリネ、加熱調理にも向いています。
裂果しにくく、日持ちもよく、複合耐病性があるので減農薬栽培にも向いています。同じ種類で橙色のシンディーオレンジもあります。山形県、新潟県、北海道をはじめさまざまな地域で栽培され、6月から11月に収穫・出荷される夏秋トマトです。スーパーや青果店、産地の直売所、ネット通販などで購入できます。
華クイン
赤紅色でツヤがあり、腰高の球形で先端が少しとがった形のよい赤玉トマトです。平均果重は40g。糖度が高く、ほどよい酸味と濃厚なうまみも感じられ、バランスの取れた味わいです。皮が薄く、おやつ感覚で食べられ、サラダやお弁当にぴったりです。
富山県、長野県、山形県など各地で生産され、新潟県の魚沼・十日町では、華クインがカルシウムとビタミンが豊富なことから「カルビタ」と名付け、昼夜の寒暖差で高糖度に栽培してブランド化しています。夏秋トマトとして6月から11月に収穫・出荷され、スーパーや青果店、産地の直売所、ネット通販などで購入できます。
カンパリ
1990年代にオランダから日本へ導入された中玉トマト。ヨーロッパ、カナダ、メキシコでも生産量が多く、世界的に知られている品種です。まん丸の球形で、果重は40~50g。肉質は適度にしっかりとしていて皮に張りがあり、糖度に加えて酸味もあり、トマトらしい爽やかな味わいです。冬場は糖度が上がり濃厚な味になります。パスタソースやグリル、煮込み料理にも向いています。
ヨーロッパでは房どり収穫用として普及していますが、日本では個どりで栽培され、出荷されています。北海道、千葉、神奈川、大分、熊本をはじめ全国各地で栽培され、ハウスや露地など各作型に対応し、通年で出回っています。スーパーや産地の直売所、ネット通販などで購入できます。
シシリアンルージュ
イタリアで生まれた調理用トマト。果径4~5cmほどの縦長で果重は20~30gの赤系の中玉です。甘みに加えてほどよい酸味があり、うまみ成分のグルタミン酸がとても多く含まれています。機能性成分のリコピンとプロリンも豊富。加熱するとうまみが凝縮するので、オリーブオイル炒めなどシンプルな調理法で本格的な味わいになります。
育種家のマウロ氏にちなんで、「マウロの地中海トマト」シリーズとして日本で展開されています。長野県、群馬県など、各地で栽培され、幅広い作型に対応しているので通年で出回りますが、旬は6月から9月。スーパーや産地の直売所、ネット通販などで購入できます。
サラダプラム
鮮やかな赤色で、卵形をした赤系中玉トマト。平均果重は25gほど。甘みとほどよい酸味もあり爽やかな味わい。ゼリーと果肉のバランスもよく、葉物野菜に負けない食感。独特の形でサラダやパスタを彩ります。
カゴメのオリジナル品種として直轄・契約菜園で通年栽培され、全国に流通しています。スーパーで購入することができます。
ミニトマトの品種
ミニトマト(小玉トマト)は、果重約10~30gで果径は約1~3cmのもの。チェリートマトともいいます。一口サイズで食べやすく、色形がさまざまあり、赤系は同量の大玉トマトと比べて栄養価が高い。ちなみにプチトマト(販売終了)はミニトマトの品種の一つです。
アイコ
ミニトマトの代表的な品種の一つ。明るい赤色でツヤがあり、細長い卵形で、果重は20g前後、長さは3~4cmになります。糖度が高く、酸味は控えめ。果肉は厚めでゼリーが少なく、肉質がなめらかで食味のよさに定評があります。サラダやマリネ、型崩れしにくいので加熱調理にも適しています。
さまざまな作型に対応し、全国的に栽培され、通年出荷されています。スーパーや青果店、産地の直売所、ネット通販などで購入できます。アイコシリーズには、イエローアイコ、オレンジアイコ、茶色のチョコアイコもありカラーバリエーションも豊富です。
千果(チカ)
ミニトマトの代表的な品種の一つ。鮮やかな赤色でツヤがあり、果形3cm程度の球形で、果重は15~20g。糖度が高く、酸味とのバランスがよく、肉質は緻密でゼリーは少なめ、果皮が薄めで食味に定評があります。色形がよいのでお弁当の彩りによく使われています。糖度が高いのでデザートとしてそのまま食べてもおいしく、パウンドケーキなどスイーツの具材にも適しています。
さまざまな作型に対応し、全国各地で栽培され、1年中出回っています。スーパーや青果店、産地の直売所、ネット通販などで購入できます。濃い黄色のオレンジ千果もあります。
フラガール
赤く直径4cm前後の縦長の楕円形で、果重は18~24g程度です。濃厚な甘みとほどよい酸味が調和したフルーティーなミニトマト。プリっとシャキシャキでクリスピーな食感。サラダやパスタ、冷やしてフルーツ感覚で食べるのがおすすめ。ヘタ離れがいいので調理しやすいことも特徴。ヘタ離れがよく果実のみ収穫されることもあります。
主に夏秋トマトとしてさまざまな産地で栽培されています。6月から11月に収穫・出荷され、スーパーや青果店、産地の直売所、ネット通販などで購入できます。濃い黄色のフラガールオランジェもあります。
キャンディドロップ
赤く直径3~4cmのプラム形で、果重は15~22g程度です。糖度12度以上に育てることもできるとても甘い品種です。皮はパリッと果肉はサクッとした食感で、濃厚な甘さが口の中で弾けます。甘さを生かしてスイーツとして生でそのまま食べるのはもちろん、フルーツサラダの色どりにも適しています。
主に夏秋トマトとしてさまざまな産地で栽培されています。6月から11月に収穫・出荷され、スーパーや青果店、産地の直売所、ネット通販などで購入できます。
ピンキー
やや腰高の球形で、果径26mm前後、果重は15~20gほど。真っ赤なトマトと比べると少し色が薄めで、光沢がありつやつやしています。皮は薄く柔らかいので、口の中に残らず食べやすいことが特徴。糖度が高く、酸度は少し低め。甘みと酸味のバランスがよく、大玉トマトに似た食味・食感があります。そのまま丸ごと食べるのがおすすめ。
さまざまな作型に対応し、全国各地で栽培され、通年で出荷されています。スーパーや青果店、産地の直売所、ネット通販などで購入できます。ピンキーカクテルは、ピンキーを改良したミディトマト品種です。
アンジェレ
ヨーロッパ生まれのミニトマトで、デーツ形でヘタなしで収穫されます。甘みがあり(8度)酸味が少なく、うまみが感じられます。皮は硬めで果肉がしっかりとしていてゼリー部分が少なく、サクッとした食感で食べ応えがあります。生食でそのままはもちろん、マリネやピクルス、肉巻きなどの加熱調理にも適しています。
JA全農のオリジナル品種で、契約したJAの生産者のみが栽培でき、全国統一規格でA品のみが出荷されています。東日本では秋冬トマトとして、西日本では冬春トマトとして栽培され、スーパーや青果店、JA直売所、JAネット通販などで購入できます。
ロッソナポリタン
濃い赤色で、果径3~4cmのプラム形、果重は10〜15g。同じく「マウロの地中海トマト」シリーズで中玉の、シシリアンルージュを小さくしたようなミニトマト。平均糖度が9~11度と高く、うまみ成分のグルタミン酸も多く含まれています。機能性成分のプロリンとリコピンも高い。皮はやや硬めで歯応えがあり、果肉が緻密で濃厚な味わい。生食と調理の兼用品種で、ナポリタンソースがおいしく作れます。
幅広い作型に対応し、沖縄から北海道まで全国各地で栽培され、通年で出回ります。スーパーや産地の直売所、ネット通販などで購入できます。
乙女の涙スウィーティア
長さ約5cmの涙のような長粒形。果皮に張りがあり、ゼリーが少なく、果肉は緻密でプリっとした食感。糖度は9〜12度と高く、最旬の春ごろに最も糖度が上がり、ベリー系の甘い香りが感じられます。フルーツ感覚でそのまま食べても、細長い形を生かして巻きずしの具にするなど、カットやスライスしたときの形のバリエーションが豊富で料理の彩りとしても存在感を放ちます。
高知県の井上石灰工業が開発した品種で同社のみが栽培している希少品種。冬春トマトとして1月から6月ごろに収穫・出荷され、全国のデパート、スーパー、ネット通販で購入できます。
とにかく甘いトマトが好きな人におすすめの品種
キャンディドロップ
果物に匹敵する高糖度のミニトマト。プリッと弾けるような食感で口の中に甘さが広がります。
ロッソナポリタン
高糖度でグルタミン酸が豊富なミニトマト。硬めの果皮の下にコクのある甘さが詰まっています。
さっぱりとしたトマトが好きな人におすすめの品種
ルネッサンス
柔らかめの食感で口当たりがよく、爽やかな酸味が感じられる桃色系大玉トマト。
サラダプラム
すっきりとした味がサラダにぴったり。葉物野菜に負けない食感の中玉トマト。
甘みと酸味のバランスの良い品種
桃太郎
甘みがあってほどよい酸味もある桃色系大玉トマト。日本のトマトの代表格。
ファースト
穏やかな甘さと爽やかな酸味のある桃色系大玉トマト。昔ながらのトマトの味。
千果
糖度が高くほどよく酸味もあり、日本人好みのトマトの味が凝縮したミニトマト。
硬めの食感のトマトが好きな人におすすめの品種
アンジェレ
皮に張りがあり果肉もしっかりめの中玉トマト。デーツ形でパリッとした食感が楽しめます。
カンパリ
皮に張りがあり果肉は硬め。トマトらしい味わいで食べ応えのある中玉トマト。
子どもにおすすめの品種
華クイン
薄皮で甘みと酸味のバランスが良く食べやすい中玉トマト。カルシウムとビタミンCも豊富です。
ピンキー
薄皮で甘みと酸味のバランスの取れたミニトマト。口の中に皮が残らずやさしい味わいです。
好みや用途で選んでトマトをよりおいしく
日本では甘いトマトが好まれ、使い切りの中玉や一口サイズのミニトマトで高糖度の品種が次々と開発されています。近年は大玉トマトも樹上完熟で収穫できる品種が開発・改良され、甘みやうまみのあるものが増えています。トマトは青臭くて苦手だという思い込みを覆す品種もたくさんあります。糖度と酸度だけでなく、肉質や皮の厚さやうまみなど、品種ごとに食味が異なるトマト。好みや用途、食べるシーンに合わせて選んでみてはいかがでしょう。