JR東日本は8日、プラットホーム上家の耐震補強に関して、溶接が不要となる2つの新工法を開発・導入し、一部の駅で約80%の工期短縮を実現するなど、施工性が大幅に向上したと発表した。
同社は首都直下地震の想定震度が上昇したエリアがあることに加え、新たな活断層の顕在化など新たな知見を踏まえ、地震対策に取り組んでいる。その一環で、大地震発生時の揺れを抑え、崩壊を防ぐことを目的としたプラットホーム上家の耐震補強に2017年度から取り組んでおり、対象は約320駅になるという。
しかし、既存の技術だと補強部材の取付けに溶接が必要。鉄道工事で溶接を行うには作業制約が多く、事前準備や火災防止対策などさまざまな作業を限られた時間で行うことになってしまう。そこで今回、施工性と生産性向上、品質管理のしやすさを目的として、溶接が不要となる「スマートウィクシス工法(SW工法)」「スマートボクシス工法(SB工法)」という2つの新工法を開発した。この2つの工法は、東鉄工業およびセンクシアとの共同開発であり、登録商標・特許出願済となっている。
「スマートウィクシス工法」は、H形鋼柱が変形しやすい方向に斜めの補強部材を無溶接で接合する工法。接合に高力ボルトを使用し、既存塗装の除去を不要とする。「スマートボクシス工法」は、H形鋼柱が変形しやすい方向と変形しにくい方向の両方向に、同じ高さの位置で斜めの補強部材を無溶接で接合する工法。こちらも接合に高力ボルトを使用し、既存塗装の除去を不要としている。
今年9月の時点で、「スマートウィクシス工法」は上越新幹線高崎駅・総武本線平井駅ほか6駅と山陽新幹線西明石駅(JR西日本)、「スマートボクシス工法」は武蔵野線西船橋駅でそれそれ導入。「スマートウィクシス工法」を導入した上越新幹線高崎駅では、従来工法と比較して約80%の工期短縮と約30%の工事費削減を実現したという。
溶接不要の新工法は、プラットホーム上家耐震補強工事を推進する他の鉄道事業者でも導入されており、広く水平展開を図ることで全国の鉄道駅の安全性向上に貢献するとしている。