近畿日本鉄道は7日、近鉄奈良駅で新型一般車両8A系の出発式を開催した。8A系の初発列車は近鉄奈良駅10時25分発の快速急行。奈良線を走行し、大阪難波駅まで1往復した後、午後から京都線と橿原線でも運用に就いた。
8A系は10時8分頃、近鉄奈良駅の1番ホームに入線。平日の日中時間帯、奈良線の快速急行はおもに6両編成で運行されるが、新型車両の初発列車ということもあり、特別に8A系を2編成連結した8両編成で入ってきた。ロングシートからクロスシートへ転換可能なL/Cシートを備え、1両の中でロングシートとクロスシートを混在させることも可能だが、初発列車はロングシートでの運行だった。
発車時刻が近づくと、近鉄奈良駅長がホームに立ち、右手を挙げて出発合図を行う。扉が閉まり、8A系が静かに動き出すと、駅長は敬礼で見送った。初発列車が定刻に発車した後、担当者インタビューが行われ、近畿日本鉄道鉄道本部企画統括部技術管理部(車両)の喜多陽平氏は、「無事に初日を迎え、営業開始できたことにほっとしています」とコメントした。
喜多氏は8A系について、「皆さまが安心して使いやすいことをめざし、開発した車両。使い勝手の良さや、安心・安全といったところを感じていただければ」と話す。新設のベビーカー・大型荷物対応スペース「やさしば」(車両中央の扉付近に1両あたり2カ所設置)に関する質問もあり、ベビーカー利用者や大型荷物(キャリーバッグ・スーツケース等)を持つ利用者からの声を受け、周囲に気兼ねなく着席できるよう開発したと説明。「『やさしば』の設置で、ベビーカーの方も、スーツケースを持った方も、一般の方も、すべての方が使いやすい車両になればと思っています」と語った。
近鉄奈良駅を10時25分に発車した8A系の快速急行(大阪難波行)は、大阪難波駅から近鉄奈良行の快速急行として折り返し、正午前に再び近鉄奈良駅へ。その後、回送列車となって西大寺車庫に入庫した。14時台以降、初発列車に使用された2編成を含む計3編成が京都線の普通として運行され、大和西大寺駅を14時41分(新田辺行)・14時57分(京都行)・15時11分(京都行)に発車。京都線の駅で、学校帰りの高校生と思われるグループが新型車両に驚きの声を上げる場面も見られた。
八角形をイメージしたという8A系の外観デザインは、鉄道ファン以外の利用者にも十分なインパクトを与えた様子。運行初日は正午頃から曇り、午後はあいにくの天気となったが、晴れていれば車体カラーの赤色もさらに映えるのではないかと思った。
8A系は今後、奈良線、京都線、橿原線、天理線で運行。快速急行から普通まで各種別で運用に就く予定とされている。一方、奈良線から阪神なんば線、京都線から京都市営地下鉄烏丸線へ直通しての営業運転は行わない。なお、一般車両のため具体的な時刻等は公表していないが、「今後も8A系同士を連結しての運用は予定しています」とのことだった。