皮むきや薄切りと手順を単純にし、盛り付けで豪華に見せる手法を考案した。「一手間加えるだけで見て楽しく、さらにおいしく感じられる」とアピールする。
6月下旬、甲府市内のホテルで講習会が開催された。室内に甘酸っぱい香りが漂い、ペティナイフ1本で手際よくオレンジの果肉をくりぬく。器に見立てた皮に盛り付け、10分ほどで黄や緑の鮮やかな一皿を完成させた。体験した同県富士河口湖町の旅館女将外川由理さん(50)は「手間も少なく楽しい。旅館で皮の飾り切りを飲み物に添えたい」と声を弾ませた。
松山市生まれ埼玉県育ち。東京都内の調理師専門学校を卒業後、勤務したホテルで懐石料理の飾り切りを習った。26歳でタイへ渡り、王室料理の伝統文化で野菜や果物に草花などを模して彫刻する技術を2年間学んだ。
帰国後の2009年、果物は調理せず切るだけでもおいしいことに気付き、彩りや香りを楽しむため本来捨てる皮や葉も活用する独自の手法を考案した。都内でスクールを運営し、約300人に技法を伝えた。茨城県や山形県など果物の生産が盛んな自治体の依頼でPR動画でも実演した。
20年に山梨へ移り住んだ。産地に寄り添って活動したいとの思いからだった。技術を文化として根付かせるため専門家を育成する。県も果物の価値向上への取り組みに注目し、中学生ら向けの教室開催を後押しする。「誰もが認めるフルーツカットにして多くの人に魅力を広めたい」と笑顔で話した。
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