老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。
今回は定年後に年金を受け取らずに、失業給付を受けられるのかについてです。
◆Q:定年後、年金ではなく失業給付を受けることもできるんでしょうか?
「弊社の定年は65歳らしいです。65歳まで勤務したとして、会社を退職した後、年金ではなく失業給付を受けることもできるんでしょうか? もらうとしたらどっちがお得になりますか?」(関東・58歳・会社員)
◆A:65歳以上の人が失業すると、「高年齢求職者給付金」を受け取ることができます
2017年に雇用保険法が改正されて、65歳以上の人も雇用保険の対象になりました。65歳以上の雇用保険加入者が離職したときには、「高年齢求職者給付金」として高齢者版の失業給付を受け取ることができます。
相談者が65歳の誕生日を迎えた後に退職をし、要件を満たすと、高年齢求職者給付金の対象となります。高年齢求職者給付金を受け取れる人とは、高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)です。
離職した日からさかのぼった1年間に、通算6カ月以上の雇用保険加入期間が必要で、いつでも再就職する意思と能力があるにもかかわらず、失業状態であることが条件です。
失業給付は、64歳以下と65歳以上では、受給要件と、受給日数が違います。
現役世代(64歳以下)の失業給付(基本手当)を受給するためには、離職日以前2年間に12カ月以上の被保険者期間が必要で、受給できる日数は少なくとも90日は受け取ることができます。
65歳以上の失業給付(高年齢求職者給付金)は、原則離職前1年間に6カ月以上の被保険者期間が必要であり、雇用保険の被保険者期間が1年未満の人は30日分、1年以上の人は50日分となります。
つまり65歳以上になると、失業給付(高年齢求職者給付金)の受給要件は緩和されますが、支給日数は少なくなるということです。もらえても日数が少ないので、お得かどうかといわれると、迷うところでしょう。
高年齢求職者給付金と年金は併給できるので、どちらかをもらう、というよりは、年金をもらいながら、仕事を探してみることをオススメします。人生100年時代といわれる中、体力が続く範囲で働き続けて収入を少しでも得られると老後の生活が安定するからです。
監修・文/深川弘恵(ファイナンシャルプランナー)
都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。
文=All About 編集部