◆単身世帯の平均貯蓄額は941万円
『家計の金融行動に関する世論調査2023年』(金融広報中央委員会)によると、単身世帯の平均貯蓄額は941万円、中央値は100万円という結果になりました。そのうち金融資産を保有していると回答した人の平均貯蓄額は1492万円、中央値は500万円となっています。
こうした調査は、全年代を通しての平均となりますので、年代や年収によって、貯蓄の実態は変わってきます。この調査での平均年齢は50歳、手取り年収は251万円(中央値200万円)でした。
※ここでいう平均貯蓄額は、『家計と金融行動に関する世論調査2023年』(金融広報中央委員会)の「金融商品の保有額」のことです。金融商品の保有額とは、預貯金、貯蓄性のある生命保険、債券や株式、投資信託、その他の金融商品の総合計。ただし、預貯金に関しては、日常的な出し入れ・引き落としに備えている部分を除いた「運用のため、または将来に備えて蓄えている部分」のみをカウントすることとしているため、銀行口座などに保有している金額のすべてではないことを、前置きとして付記しておきます。また、調査方法が変更になり、2019年~2022年の結果は不連続である点もあわせて付記しておきます
※中央値とはデータを並べたときに真ん中にくる数字のことです
◆50歳代で平均貯蓄額を超える
まず、年代別の実態をみていきましょう。
金融資産を保有していないと回答した人を含む全体の平均は941万円(中央値100万円。以下カッコ内は中央値)ですが、20歳代では121万円(9万円)と、かなり厳しい結果になっています。年代が上がるにつれ、貯蓄額は増えます。30歳代で594万円(100万円)、40歳代で559万円(47万円)、50歳代で1391万円(80万円)と大幅に増え、平均値を超えます。60歳代では1468万円(210万円)となりますが、貯蓄額が増える要因としては、退職金のほか、住宅ローンの返済が終わるなどが考えられるでしょう。
一方、金融資産を保有している世帯のみの集計では、平均が1492万円(500万円)。年代が上がるにつれて貯蓄額が増えるのは同じで、20歳代で219万円(103万円)、30歳代で912万円(300万円)、40歳代で964万円(500万円)となり、50歳代で2288万円(555万円)という結果になります。
中央値でみていくと、金融資産を保有している世帯のみであっても、50歳代でも555万円と1000万円に届きません。また、金融資産を保有していない人を含めた貯蓄額と、金融資産を保有している人の貯蓄額との差は、どの年代を通しても非常に大きいのです。
平均貯蓄額ではわからない、多くの人が抱える老後資金への不安は、こうした実態からもみえてくるかもしれません。
◆年収300万~500万円未満の貯蓄額は平均1019万円
では、年収別ではどうなっているでしょう。
シングルの集計数は2500人で、年収300万円未満が1618人と半数近くを占めており、年収750万円以上はわずか51人と偏りがあります。一覧には記載しましたが、参考程度にとどめ、ここでは750万円未満のデータをみていくことにします。
年収300万円未満で金融資産を保有していない人も含めた平均は663万円(中央値50万円)であるのに対し、金融資産を保有している人だけの平均は1095万円(387万円)。平均で432万円の差があります。
年収300万~500万円未満では、金融資産を保有していない人も含めた平均は1019万円(200万円)なのに対し、金融資産を保有している人のみの平均は1422万円(500万円)と、その差は403万円。同じように、年収500万~750万円未満では、平均1943万円(600万円)に対し、平均2306万円(1000万円)で、差は363万円。
年齢構成まではわからないので、勤労者世帯のみとなると、また異なった結果になるかもしれませんが、やはり年収の多寡によらず、きちんと貯蓄行動をしているかどうかは大切で、年収が低いから貯蓄できないというのは、理由にはならないでしょう。
◆20歳代の貯蓄割合は18%と平均を上回る
若いうちから貯蓄グセを身につけることが大事で、毎月の給料やボーナスから、きちんと積み立てなどをする以外に、貯蓄の王道はありません。
金融資産を保有している20歳代の貯蓄割合は手取り年収の18.0%と平均の13.0%を上回っています。30歳代で17.0%、40歳代で14.0%、50歳代も14.0%と下がっていますが、一般的には年齢とともに年収も上がっていきますから、割合としては減っても金額自体は、年齢とともに積み上がっているはずです。
その一方、金融資産を保有していても、年間手取り収入から貯蓄をしなかったと回答した人は20歳代で30.8%、30歳代で23.8%もいます。コロナ禍の影響もありますが、20歳代、30歳代の年収に対する貯蓄割合は例年、同じ傾向があります。預貯金の低金利もあり、給与から先取りでの貯蓄や天引きでの貯蓄をしない人も多く、残ったら貯蓄という傾向もみられます。
積み立て投資に注目が集まっていますが、まずは積み立て貯蓄でベースを作ることも重要です。若いうちから貯蓄のクセを付けておくことは自信にもつながり、将来の漠然とした不安を軽減させるでしょう。しっかりと貯蓄プランを立て、実践するようにしましょう。
平均貯蓄額の表面的な数値にとらわれる必要はありませんが、同じ年代、同じ年収レベルの人の貯蓄額などを参考に自分の貯蓄行動を見直してみましょう。
文:伊藤 加奈子(メディアプロデューサー、ファイナンシャルプランナー)
マネー誌『あるじゃん』や住宅関連誌、ライフスタイル誌などの数多くの媒体を立ち上げたメディアプロデューサー。マネープランクリニックの執筆を担当し、実際の家計の取材に基づいた「お金の話」や「貯蓄の話」の発信を行う。
文=伊藤 加奈子(メディアプロデューサー、ファイナンシャルプランナー)