『Octane』UKスタッフによる愛車レポート。今回は新たに2005年マセラティ4200GT カンビオコルサを購入したピーターからのレポートだ。
【画像】アズーロ・ネウーノの2005年マセラティ4200GT カンビオコルサ(写真4点)
3台のマシンを擁するヒストリックレーシングチームとの仕事は、終わりのないジェットコースターのような旅に私をいざなった。この半年の間、私はフロリダのセブリング、スペインのバレンシア、ベルギーのスパ・フランコルシャン、オランダのザントフォールト、そしてフランスのル・マンのコースサイドに立つことになった。さらに、シルバーストン、ドニントン、ブランズハッチなど、国内のサーキットにも何度も訪れた。
もちろん、年老いたポップスターのように全国を駆け回るには、それなりの代償が伴う。1950年代のダイムラー・コンクエストのペアであるドリスとオードリーは、英国のパッとしない夏をほとんどガレージで過ごしている。それ自体は大して悪いことではない。しかし、どちらも優しい愛情と世話を必要としているのは確かだ。
ドリスは、ラリー・モンテカルロ・ヒストリックに行って以来、まともな整備を受けていないし、オードリーは通常なら極めて信頼性の高いウィルソン製プリセレクターのギアボックスがダウンシフト時にぎこちなくなるという不安な症状が出ている。長年苦しんでいる友人のクライブと一緒に安上がりな解決策を探しながら、イライラした午後を何度も過ごしてきた。しかしどちらかといえば、安上がりな解決策(と思われたもの)によって私は事態を悪化させただけだった。
その一方で、相変わらず楽観的で無責任な生活は続いている。その証拠に、買ってしまったのだ。マセラティ4200GTカンビオコルサを。
先週のことだ。電車で2時間ほど東に向かい、サインを交わした。手に入れたばかりのとても素敵な2005年マセラティ4200GTカンビオコルサのハンドルを握り、のんびりと家までのドライブを楽しんだ。私はイタリア車が大好きで、長年の間、ほぼ全タイプのランチア、数台のアルファロメオ、そして246ディーノまでを所有してきたが、これまでマセラティとは縁がなかった。
20年近く前の、最高速度177mphのサブスーパーカーを買うのは、控えめに言ってもちょっとしたギャンブルだ。特に、搭載されたフェラーリベースの8気筒エンジンが最高出力400bhpを叩き出し、第一世代の「パドルシフト」ギアチェンジを装備したものはそうだ。しかし、ここで紹介しているのは、多走行で長らく放置されていたり、ずっと広告に掲載され続けても買い手が見つからなかったモデナの孤児のような類の車ではない。むしろ、まったく逆だ。
私のもとにやってきたアズーロ・ネウーノ(ネプチューン・ブルー)カラーのマセラティは、長年のマセラティ愛好家であり、面倒見の良い前オーナーのジェリー・ハットンのおかげで美しく保たれている。各ウィンドウにあしらわれたステッチのコニャック・レザーが、19年の歳月を軽やかに彩っている。また 、走行はわずか34,000マイルで、記録も丁寧に残されている。年代順に整然と並べられた完璧な記録簿には、新しいクラッチ、エアコンの新調、ミシュラン最高級のパイロットタイヤのフルセットなどの請求書が含まれている。どれも良いことばかりだ。
多くの人と同じように、私も最初はトレードマークのブーメラン型リアランプの3200GTが欲しかった。しかし専門家たちは、フェラーリの直接的な庇護と管理の下で製造された後期の車を買うべし、と口をそろえた。なので、私はその意見に従った。
20年近く前のマセラティを購入したのは賢明な判断だったのか?と自問自答しながらも最初の1000マイルを走破した今、私は微笑んでいるよ。
文:Peter Baker