長芋の栽培時期や適した環境とは?

長芋は、ヤマノイモ科のつる性の多年草で、山芋と呼ばれることもありますが、ヤマノイモ(自然薯)とは別の種類です。中世以降に中国から持ち込まれたという説と、日本固有の品種であるという2説があり、詳細はわかっていません。

長芋は主に青森県や北海道などの寒冷地で栽培されており、関東以北が主要な産地となっています。長芋の植え付けに適した時期は、平均気温が13~14℃になる春ごろが理想的です。高温多湿を好み、栽培適温は17℃~25℃くらいになります。
栽培には深く耕され、排水性の良い土壌が適しており、粘土質の土では肉質がしっかり締まり、砂質の土では細長い形状の長芋が育つ傾向があります。

長芋の基本的な栽培方法

長芋は地下に長く伸ばして育てるという性質上、土作りや畝作りがとても大切になります。プロの農家はトレンチャーという溝を掘る農機具を使って、深く長い溝を一気に掘って畝作りを行いますが、家庭菜園では手作業で行います。なかなか重労働ですが、おいしい長芋を作るためにも頑張りましょう。

土作りのやり方

長芋を栽培する際、土作りはとても大切です。長芋は連作を嫌うため、同じ場所での栽培は4~5年の間隔を空けるのが理想です。

植え付けの2~4週間前には、1平方メートルあたり堆肥(たいひ)1kg、苦土石灰100~150g、熔リン30~50gをしっかりと土に混ぜ込みます。長芋は地下に深く伸びるため、土を50~70cmの深さで丁寧に耕し、小石などを取り除くことが重要です。耕した後は、溝を埋め戻し、場所がわかるように目印をつけておきましょう。土が固くて掘りづらいという場合は、耕運機で表層を柔らかく耕してからクワやスコップを入れるとよいでしょう。

畝作りのやり方

長芋の栽培では、畝作りが重要なポイントです。まず、元肥をしっかりと施した後、幅70cm、高さ10cm以上の畝を作ります。幅広で高い畝を作らないといけないので、体力に自信のない方は数日に分けて作業を行っても良いでしょう。また高畝を作る際は、畝と畝の間が掘り下げられるような形になります。この溝に畝の外側へ向けて角度をつけてやると、雨が降った際に水が流れやすくなり排水性が高まるので、余裕があればやってみましょう。

また長芋は酸性土壌を嫌うため、pHを6.0〜6.5に調整することが大切です。なお、プランターでの栽培も可能で、深さ30cm以上のプランターに培養土を入れるだけで簡単に始められます。

植え付けのやり方

長芋の植え付けには、いくつかのポイントがあります。
まず、10cmほどの溝を掘り、株間を20〜30cm程度確保して種芋を配置します。芋に複数の芽が出ている場合は、小さい芽を取り除くことで、より良い生育が期待できます。芋の向きをそろえたら、5cmほどの土をしっかりかぶせます。プランターで栽培する場合は、容器の縁から5cm程度空けて植えることが重要です。

マルチングをする

長芋の栽培において、マルチングは地温管理や水分調整に欠かせません。透明や白黒のマルチを使用することで、地温の上昇や雨水の過剰な浸透を防ぎ、雑草の抑制にも効果があります。また、敷きワラを使う方法もおすすめです。土寄せという作業を行う際、マルチをはがすことになりますが、敷きワラであれば簡単にマルチングし直せるので作業が楽になります。なお、植え付けから約1カ月で芽が出るため、マルチにはあらかじめ切り込みを入れておくと良いでしょう。

高畝をマルチングする際、畝間の土を掘りすぎてしまって、マルチに土をかぶせにくくなることがよくあります。マルチにかぶせる土をしっかり残しておくか、マルチ留めのピンを使うとよいでしょう。

支柱立てのやり方

長芋の栽培では、支柱の設置が欠かせません。まず、溝の外側に2m間隔で支柱を立てます。支柱の高さは150~200cmのものを使うとよいでしょう。支柱を立てるときは合掌式にすることで、より安定し、倒れにくくなります。
さらに、支柱の間にネットを張ることで、芽を効果的に誘引できます。網目の大きさは15センチほどのサイズのものを使いましょう。なお地ばい栽培は病気のリスクが高いため、支柱を使った方法が一般的ですが、ツクネイモ群やイチョウイモ群など、一部の品種では地ばい栽培も可能です。

追肥のやり方

長芋の栽培では、追肥が大切なポイントです。7月下旬と8月上旬に「8-8-8」などの化成肥料を使用し、1平方メートルあたり20グラムを畝肩にまきます。その際、中耕を兼ねて軽く土を寄せておくと効果的です。プランターで育てる場合は、6月下旬から8月にかけて週1回のペースで液肥を与えると良いでしょう。畑栽培では通常、水やりは不要ですが、プランター栽培では表面が乾いたらたっぷりと水を与えることが必要です。

増し土のやり方

長芋の栽培では、追肥と同時に土寄せを行うことが大切です。畝の外側から土を寄せる際は、長芋の根を傷つけないよう慎重に作業しましょう。もしマルチングをしている場合、土寄せ前にマルチをはがしてから作業を進めることが必要です。また、降雨によって土が流れた場合にも、同じ手順で土寄せを行い、畝を整えます。

収穫のやり方

長芋の収穫は、10月中旬ごろから始まる地上部の枯れ具合を目安に行います。ツルが完全に枯れてから10日ほど経過したら、まず茎を取り除き、支柱を引き抜いて準備を整えます。その後、株元から20cmほど離れた場所を掘り、慎重に収穫を進めます。芋を傷つけないように、クワやスコップだけではなく、手を使って優しく掘りましょう。

長芋の栽培に役立つ「クレバーパイプ」

クレバーパイプ栽培は、専用のパイプを使用して長芋を育てる方法です。この方法では、パイプを土に埋めることで、地中深くまで耕さずに栽培が可能です。パイプには水分量を調整する穴や、成長に合わせて広がる背割りなど、長芋の生育をサポートする工夫が施されています。また、長芋は肥料分が直接触れると品質が落ちるため、パイプ内には肥料分のない土を入れて栽培します。

クレバーパイプはホームセンターなどではあまり見かけません。購入する際は、インターネット通販を使うか、園芸品店などで注文しましょう。

長芋を栽培する際のポイントや注意点

長芋の栽培では、次に紹介する三つのポイントに注意しましょう。

・葉が密集するとアブラムシなどが発生しやすくなる
・芽かきや草取りを忘れない
・成熟を待ってから収穫する

それぞれ解説していきます。

葉が密集するとアブラムシなどが発生しやすくなる

長芋の栽培では、生育が進むと葉が密集し、風通しが悪くなることがあります。このような状況は、アブラムシやヤマノイモコガが発生しやすくなるため、注意が必要です。もし害虫が見られた場合には、トレボン乳剤やマブリック水和剤20を散布して対処しましょう。また、風通しを良くするために、枯れた葉や過度に茂った部分を早めに取り除くことも効果的です。

芽かきや草取りを忘れない

長芋の栽培では、株から複数の芽が出た場合、生育の良い芽を1本だけ残すことが基本です。丈が1mほどに成長したら摘芯を行うと、側枝が増え、芋の肥大が期待できますが、側枝を取り除くと収量が減るため慎重に管理しましょう。また、草取りは除草剤を使わず手作業で行い、特に張り出した根を傷つけないよう注意が必要です。

成熟を待ってから収穫する

長芋の収穫時期には注意が必要です。収穫が早すぎると、芋の切り口やすりおろしが褐色に変色することがあります。これはポリフェノール系物質の影響によるもので、長芋が成熟するにつれて減少します。地上の茎葉が枯れてから2週間ほど経過すると熟成が進み、収穫に適した状態となります。未熟な長芋はアクが強く、味も悪いため、収穫時期には慎重に判断し、しっかりと熟成を待つことが大切です。

収穫した長芋の保存方法

長芋の保存にはいくつかの方法があります。まず、泥付きのまま新聞紙にくるんで冷暗所に置くと、鮮度が保たれやすくなります。さらに、冷蔵庫や野菜室に保管する際も、新聞紙に包んでおくと良いでしょう。カット済みの長芋は、断面をラップで包んでから冷蔵保存することで、品質を維持できます。冷凍保存も可能ですが、解凍後の食感が弱くなることがあるため注意が必要です。特に冬場に長期間保存する場合は、段ボールや木箱に入れ、少し湿らせたおがくずに埋めて保管すると、より良い状態で保存ができます。

長芋栽培は畝作りが重要

長芋栽培では、最初の土作りと畝作りが重要になります。栽培の基盤となる土壌は、深く耕して排水性を高め、長芋がしっかりと根を張る環境を整えることが大切です。また、畝作りでは、幅や高さや土壌のpH調整など、長芋にとって理想的な環境を作っていきましょう。最初の準備をしっかり整えることで、その後の栽培管理もやりやすくなります。風通しの管理や適切な収穫時期の見極め、収穫後の保存方法に注意を払うなど、長芋栽培ではさまざまなポイントがありますが、本記事を参考にして挑戦してみてください。