日本海洋少年団連盟の神戸海洋少年団、大阪みなと海洋少年団、舞鶴海洋少年団、姫路海洋少年団は9月28日、淡路青少年交流の家にて「第24回 近畿地区大会」を開催。未就学児から高校生までの20名超の子どもが参加し、手旗信号、ロープワークの検定試験に挑んだ。また翌日にはオリエンテーションの時間がもうけられ、みんなで鳴門海峡のうず潮を見学した。
■国生みの島、淡路へ
子どもの頃から海に親しみ、海の厳しさと素晴らしさを心と身体で学んでいく海洋少年団。カッター(手漕ぎボート)、水泳、手旗信号、ロープワークなどの技術習得を通じて社会生活に必要な協調性、公徳心を養い、ひいては社会に貢献できる人材に成長することを期待されている。
9月28日の早朝、神戸市中央区の『慰霊と復興のモニュメント』のある東遊園地に集合した参加者たちは、たくさんの保護者に見送られながらバスに乗り込んだ。第24回 近畿地区大会に参加したのは神戸・大阪・舞鶴・姫路の4つの海洋少年団と、各団長、そして指導者たち。バスが出発するなり車内は賑やかな雰囲気に包まれたが、早速、ロープの結び方を復習する真面目な上級生の姿も見られた。
バスは明石海峡大橋を渡って淡路島へ。高速道路を降りると、稲穂で黄金色に彩られた収穫期の田園の中を走る南淡路水仙ラインを通って、淡路青少年交流の家に向かった。
体育館で行われた開会式で、神戸海洋少年団の吉田昇団長は「淡路島は、神話において『日本で最初に生まれた島』とされています。ところで私たち海洋少年団の活動のモットーは、海に親しみ、海に学び、海に鍛える、ということですから、地区大会を開催するに相応しい場所にやってきましたね」と挨拶。
続けて、検定試験にのぞむ子どもたちに「本日は、日頃の練習の成果を思う存分に発揮して下さい」と呼びかける。そのうえで「普段はあまり会えない友だちに再会できた喜びもきっとあることでしょう。夜の消灯時刻などの決まりごとは守りつつ、団員同士で大いに親睦を温めて下さい」と優しい笑顔を見せた。
このあと、いよいよ競技会(=検定試験)がスタートした。
■Sクラスに挑戦する子も!!
日本海洋少年団連盟では、これまで全国大会を2年に1回の頻度で開催してきた。しかし令和6年度からは2年がかりの形(1年目に東京で「式典の部」を開催し、2年目に全国各地で「競技の部」を分散開催する)に移行となった。そこで神戸・大阪・舞鶴・姫路の海洋少年団は連携して、毎年独自の『近畿地区大会』を行うことに決めた。2023年は舞鶴、2024年は神戸といったように持ち回りで開催していく。2025年は大阪が担当する予定。
さて、競技会でははじめに手旗信号の検定試験が行われた。上級生たちはBクラス、Aクラスの検定に挑む。
これと並行して、幼い子たちを対象にしたCクラスの検定も実施された。
なお今回の近畿地区大会では、独自の試みとして最高ランクの「Sクラス」を新設。一部の上級生たちが挑戦した。Sクラスを作った理由について、吉田団長は「子どもたちの向上心に応えるためです」と説明する。なぜ子どもたちは、そこまでして検定を頑張れるのだろう?そんな問いかけには「これは理由の1つに過ぎないことですが、検定に合格するとバッチがもらえます。そして先輩たちが胸につけている色とりどりのバッチは、団員の憧れなんです。あれが欲しいから手旗信号を頑張る、ロープワークを頑張る、という子どももたくさんいます」と教えてくれた。今回、Sクラスの新設にともなって、新たに『黒色満点章』を作ったという。見事、合格する子は何人いるだろうか?
このあと休憩を挟み、競技会はロープワークに移った。制限時間内に、決められた結び方で次々にロープを結んでいかなくてはならない。Aクラスでは課題の20問の中から、本結び、二重つなぎ、もやい結び、腰掛け結び、錨結び、巻き結び、両わな結び、投なわ結び、引き解け結び、曳きづな結びの10問が出題された。問題用紙は、すべて平仮名で書いてある。これは素人の勘ぐりだが、最後の「ひきとけむすび」と「ひきづなむすび」には、引っ掛け問題のイジワルな意図を感じる...。頑張れ子どもたち。
同様にSクラス、Bクラス、Cクラスも検定を実施。そして予定されていた競技は、全て滞りなく終了した。
■子どもたちの成長がやりがいに
ロープが結けずに泣いてしまった男の子に誰かがさりげなく声をかける、走り回ってシャツが飛び出た子の身なりを誰かが整えてあげる―――。会場のあちらこちらで、そんな光景を目にした。
吉田団長は「住んでいる地域も年齢層もバラバラな子どもたちですが、こうして助け合いながら1つのことに取り組んでいます。上級生は小さな子どもの面倒を見ますし、小さな子も上級生の行動を見て模範にしている。いまの時代、これはとても貴重な体験になると思うんです。その良さに気付いてくれた保護者の方が、お子さんを海洋少年団に入団させてくれるケースもあります」と話す。
とはいえ、やはり人集めには苦労しているそうだ。「ボーイスカウトと比べると、海洋少年団は団体の規模も小さいのが現実です。昨今は少子高齢化の影響もあります。また塾、習い事、クラブ活動、ゲームなど、子どももやることがたくさん増えましたからね」と苦笑いする。
神戸海洋少年団としては、神戸まつりなどのイベントにパレードで参加して露出の機会を増やしていきたい考え。「それを目にして『制服に制帽の姿がカッコイイ』ということで入団を決めてくれる子もいるんです」と吉田団長。
余談ながら、翌日のオリエンテーションで大鳴門橋遊歩道 渦の道を見学したときのこと。すれ違う人たちは、口々に「どこの子たちかしら」「海洋少年団って書いてある」「かわいいわねぇ」と話していたから、子どもたちが課外活動することによる”宣伝効果”はとても大きいと思われる。
子どもたちの未来については「進学先として『神戸商船(現在の神戸大学海事科学部)を目指したい』、あるいは将来の就職について『海に携わることができたら』と言ってくれる子どもも、たくさんいます。やっぱり嬉しいですね」と吉田団長。子どもたちの成長が私たちのやりがいになっているんです、と笑顔を見せた。