2024年9月26日から29日まで開催された「東京ゲームショウ2024(TGS2024)」のインディーゲームコーナーでは、「Selected Indie 80」枠が設けられた。
「Selected Indie 80」は、世界中から集まったエントリー作品のなかから、審査によって80タイトルが選出されるコンテストだ。選ばれた出展社には、「TGS2024」でのリアル展示に加え、公式サイトの「インディーゲーム企画」ページへの掲載など、さまざまな特典が無償で提供される。
「TGS2024」では、過去最多となる973作品の応募があり、そのうちの81作品が「Selected Indie 80」に選出された。インディーゲーム開発者の登竜門として年々注目度が上がっていることもあり、展示会場のインディーゲームコーナーは連日にぎわっていた。
アクション、パズル、アドベンチャーなど、さまざまなジャンルの作品が並ぶなかで、今年は「猫ゲーム」の出展が多く見られた。猫が大好きだけれど猫アレルギー気味な筆者にとって、ゲームを通して猫を愛でられるのは非常にありがたい。それぞれの猫ゲーム作品で試遊プレイや開発者の方々とのお話を楽しんだので、その様子をまとめてご紹介する。
数えきれないほどの猫たちと出会える! 『ミキとネコの島 -Neko Odyssey』
まずご紹介するのは、タイのゲームスタジオ「シークレットキャラクター」が手がけるアドベンチャーゲーム『ミキとネコの島 -Neko Odyssey』だ。
主人公の少女「ミキ」は、猫が大好き! 町中のいたるところに可愛い猫が存在する「ネコ島」を舞台に、プレイヤーはミキを操作して、島で出会った猫たちの写真をスマホで撮影しながらSNSに投稿する。
早速、島にいる猫に近づいてみると、写真撮影ができる「カメラ」のアイコンと、猫をなでることができる「猫」のアイコンが表示された。
カメラのアイコンを選択すると、ミキがスマホを取り出し写真を撮影する。画面に大きく表示される写真は、猫ごとに違ったポーズや表情を見せるので、撮るたびに「可愛い!」と、つい声に出してしまう。
撮影後は、SNSの投稿に対する反応をチェック。投稿直後は「イイね!」の数が少なく、フォロワーも0人だが、島を歩き回り、たくさんの猫写真を投稿し続けていくと徐々に数が増えていく。
最終的にフォロワーを100人集めることが目標となるが、「イイね!」やフォロワー数はゆったりと伸びていくので、相当数の猫写真をアップしなければならない。
開発者の方に、島全体で猫は何匹くらいいるのかを訊ねてみたところ、開発者も把握しきれないくらいの猫がいると教えてくれた。なかには信頼関係を築かないと写真を撮らせてくれない猫もいるそうで、すべての猫の写真を集めるのにはかなりの時間と根気と猫愛が必要そうだ。
猫だけではなく、本作は島に点在するお店や建物の作り込みも素晴らしい。不意に立ち寄った居酒屋では、メニュー表の書き込みの細かさに度肝を抜かれた。どこか懐かしさを覚えるレトロな街並みを見て回るだけでも、十分に楽しめるゲーム作品だ。
製品版では、猫にごはんをあげたり、おもちゃを使って猫と遊べたりと、さまざまな機能が追加される。発売は、2024年10月下旬を予定。プラットフォームは、Steam、PCだ。
「家」を通して保護猫と飼い主の絆を描く。『偽猫物語(COPYCAT)』
続いてご紹介するのは、オーストラリアのシドニーに拠点を持つゲームスタジオ「Spoonful Of Wonder」のデビュー作『偽猫物語(COPYCAT)』だ。
本作は、保護猫の主人公「ドーン」を操作して物語を進めるアドベンチャーゲーム。愛するペットを失った老婆「オリーブ」が、ドーンを引き取る場面からゲームがスタートする。人間に飼われるよりも自由気ままに野良猫として生きたいドーンは、物語の冒頭ではオリーブに対して警戒心をあらわにする。物陰に逃げ込んだり、差し出されたオリーブの手を引っかいたり、全く信用していない様子だ。
しかし、オリーブの家で過ごすうちに、彼女が病を患っていること、かつて飼っていた猫がドーンにそっくりであったことが判明し、徐々に絆が深まっていく。最初は警戒していたドーンも、自らオリーブへと歩み寄るようになり、おもちゃで一緒に遊ぶくらい仲良くなる。ドーンとオリーブの心情の変化が繊細かつ丁寧に描かれているので、猫を飼った経験がない筆者でも胸を打たれるシーンが多くあった。
プレイヤーはドーンを操作して、オリーブの家をあちこち探索する。試遊プレイでは、出された餌だけでは食べ足りないドーンが、オリーブが留守なのを良いことに部屋中を探し回って食べ物をかき集めるミッションが楽しめた。
家の中には、さまざまな猫の「いたずら」が用意されていて、テーブルの上のものをわざと落としたり、トイレットペーパーを出し切って空にしたりできる。飼い主からすれば、「コラ!」と怒りたくなるようないたずらも、猫の目線になってみると楽しくて思わずニヤリとしてしまった。
試遊プレイでは、野良猫になるか、オリーブと共に家で過ごすか、ドーンが葛藤する様子が伺える。しかし、どうやら製品版のその後の展開としては、ドーンは自分とそっくりな「偽猫(COPYCAT)」に居場所を奪われてしまい、街を彷徨い歩くことになるようだ。帰り道を探しながら、ドーンとプレイヤーは「家」という場所の真意を考えさせられる。
可愛らしい猫のゲームかと思いきや、猫を飼う責任の重さや自己認識を問われるなど、奥深さを感じる作品だった。『偽猫物語(COPYCAT)』は2024年9月20日に発売され、Steamにはデモ版も用意されているので、気になった方はぜひプレイしてみてほしい。
「見えすぎる目の能力」で事件を解決! 『Detective NEKKO - ディテクティブネッコ -』
最後に紹介するのは、日本のゲームクリエイターのアラ氏が手がけるミステリーアドベンチャー『Detective NEKKO - ディテクティブネッコ -』だ。可愛らしいデフォルメキャラクターが印象的で、「Selected Indie 80」のなかでも筆者が特に楽しみにしていた作品である。
本作は、新米探偵の主人公「ネッコ」と相棒の「ジケンボ」がタッグを組み、「見えすぎる目の能力」を駆使して事件を捜査していくミステリーアドベンチャーゲームだ。
「TGS2024」の会場に用意された試遊台では、物語冒頭のネッコとジケンボの出会いを体験できた。真っ暗な部屋で目覚めたネッコは、奥に佇むジケンボに「おはなし しようぜ」と声をかけられる。ジケンボの姿をハッキリと見ることはできず、しかも自身が何者であるかが分からないと言う。そのくせネッコのことは「見えすぎる目の能力」を使って知り尽くし、名前や年齢、ネッコが探偵であることに加え、ジケンボを警戒していることまで言い当ててきた。
不穏な雰囲気が漂うなか、ジケンボはネッコに自身の正体を明らかにしてほしいと依頼する。「ダイジなのは よくミることだぜ」と、アドバイスをしたところで、ネッコは元いた現実の世界へと帰された。
ポップなキャラクターデザインから、朗らかな雰囲気のゲーム作品を想像していた筆者だったが、実際にプレイしてみるとミステリー要素が強く、シリアスな展開にどんどんと引き込まれていった。キュートな見た目に反し、ネッコが探偵らしく淡々とした口調で話すのも実に魅力的だった。
現実の世界に戻ると、ジケンボは鞄に姿を変えてネッコをサポートする。ネッコに「見えすぎる目の能力」を説明し、その能力を使えば「相手からどれだけ信頼されているか」が見えることを教える。
早速、最初の事件で登場するベテランの探偵「イッヌ」に目の能力を使ってみると、信頼度は30%で心のうちではネッコをバカにしていることが分かった。この「見えすぎる目の能力」が本作の肝であり、相手からの信頼度によって得られるヒントや物語の展開が変化するのだ。
また、製品版では信頼度のほか、相手が過去に見たものや、事件を俯瞰して見ることができる能力も登場するのだそう。試遊プレイでは、能力を使った謎解き要素は体験できなかったが、この力が今後どのように物語に影響を与え、事件の解決に役立っていくのか、とても楽しみだ。
試遊プレイのあとには、開発者のアラ氏に本作についてお話を伺った。猫をモチーフにしたキャラクターを主人公に選んだ理由を訊ねたところ、遠くから見ても存在感があり、特徴が表れるようにと耳を付けてみたのが誕生のきっかけだったと話してくれた。
また、「見えすぎる目の能力」についても、目の大きなキャラクターデザインを活かし、キャラクターの特徴とゲームの仕組みをリンクさせようと考えて生まれた設定だと明かした。
また、これからの展望として、本作がリリースされた暁には、映画館を貸し切って皆さんと一緒にプレイを楽しむイベントを開催したいと語った。ミステリー映画のようにドラマティックな演出が満載の本作は、確かに映画館の大きなスクリーンが似合いそうだ。製品版を無事に完成させ、ぜひその夢を実現させてほしい。
『Detective NEKKO - ディテクティブネッコ -』の発売は、2025年初頭を予定している。プラットフォームは、Steamだ。