藤井聡太王将への挑戦権を争うALSOK杯第74期王将戦(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は挑戦者決定リーグが進行中。10月3日(木)には羽生善治九段―西田拓也五段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、得意の振り飛車を用いて銀冠穴熊を攻略した西田五段が174手で勝利。強敵を下して王将リーグ初勝利を挙げました。

待ちに待った大舞台

本リーグは7名からなる総当たりのリーグ戦を勝ち抜いた1名が挑戦権を得るもの。王将獲得12期の羽生九段をはじめとして永瀬拓矢九段や佐々木勇気八段といったそうそうたる面子が並ぶなか、デビュー8年目にして初の王将リーグ入りを決めた西田五段の名前がひときわ目を引きます。

両者の初手合いとなった本局は後手の西田五段が得意の四間飛車を採用、対する先手の羽生九段は銀冠穴熊の堅陣に組み替えて戦いの時を待ちます。現代振り飛車において居飛車側に穴熊の完成を許す持久戦策は苦しいと見られており、その点でここからの西田五段の指し手に注目が集まりました。

西田流の快勝譜

ジリジリとした中盤戦ののち西田五段が打ち出したのは金銀の力を利用した手厚い抑え込み策でした。自陣の金銀が分裂するだけに振り飛車らしい軽いさばき合いは望めませんが、そこは西田五段の土俵。攻められた玉を軽く中央に逃げ出すことで先手の攻めをいなしつつ、うまく反撃の手番を得ることに成功しました。

西田五段はその後も粘り強いコッテリとした指し回しで混戦の終盤を乗り切ります。敵玉攻略を急がずじっと竜を自陣に引き付けたのが攻め駒を補充する好着想。蓄えた豊富な持ち駒で王手をかければ先手玉は長いながらも詰み筋に入っています。終局時刻は19時7分、最後は自玉の詰みを認めた羽生九段が投了。

全体を振り返ると、居飛車党顔負けの手厚い金銀使いでねじり合いの中盤を乗り切った西田五段の快勝譜に。これでリーグ成績は西田五段1勝0敗、羽生九段0勝1敗となっています。

水留啓(将棋情報局)

  • 西田五段は今期通算13勝5敗と高勝率をキープ(未放映のテレビ対局除く、写真は第17回朝日杯将棋オープン戦のもの 提供:日本将棋連盟)

    西田五段は今期通算13勝5敗と高勝率をキープ(未放映のテレビ対局除く、写真は第17回朝日杯将棋オープン戦のもの 提供:日本将棋連盟)