老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。
そんな年金初心者の方の疑問に、専門家が回答します。今回は、厚生年金の満額についてです。
◆Q:厚生年金の満額はいくら?
「国民年金の満額は70万円程度ということは知っています。では厚生年金の満額はいくらになりますか? 老後が不安で、年金をできるだけ満額もらいたいと思っていますので教えてください」(38歳・会社員)
◆A:老齢厚生年金の満額は、平均標準報酬額と勤続年数によって異なります
厚生年金(老齢厚生年金)の満額は、その人の平均標準報酬額(平均的な給与・賞与)と勤続年数(厚生年金加入期間)によって異なります。100人いたら100通りの老齢厚生年金の満額があるといっていいでしょう。ざっくりでも知りたい人は、以下の計算式で老齢厚生年金額は計算できます。
老齢厚生年金の年額=平均標準報酬額(平均年収÷12)×5.481/1000×厚生年金加入月数
相談者の月給が32万円、賞与は48万円と仮定すると、平均標準報酬額36万円(平均年収が432万円)。この平均標準報酬額で22歳から60歳までの38年間(456カ月)勤務した後、平均標準報酬額24万円(賞与なし)で60歳から65歳まで働いたとして、将来受け取れる老齢厚生年金がいくらになるのか、現在の年金水準で計算してみました。※経過的加算については考慮しません。
22歳から60歳までの老齢厚生年金
36万円×5.481/1000×456カ月=89万9760円
60歳から65歳までの老齢厚生年金
24万円×5.481/1000×60カ月=7万8926円
上記を合計すると、89万9760円+7万8926円=97万8686円
したがってこの場合、相談者は65歳から老齢厚生年金を年額97万8686円受け取ることができますね(マクロ経済スライドで金額が少し異なることもあります)。
もし、65歳以降も会社に勤務し続けると、老齢厚生年金を満額で受け取れなくなる場合があるので、注意が必要です。満額で受け取れなくなるのは、「在職老齢年金」の仕組みによるもので、基本月額(老齢厚生年金の年額を12で割ったもの)と就労収入の合計が基準額の50万円を超えると、老齢厚生年金の全部または一部が減額されてしまいます。
したがって、この仮定したケースでは、基本月額8万1557円(年額97万8686円を12で割ったもの)と収入の合計が月額50万円を超えないようにする必要があるでしょう。
ちなみに65歳以降も厚生年金に加入していると、毎年9月1日時点の加入データに基づいて老齢厚生年金額が再計算され、毎年10月分より年金額が増加します(この制度を「在職定時改定」といいます)。基本月額が上がる際は、「在職老齢年金」で支給停止にならないように注意してください。
文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)
銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行うほか、年金相談にも随時応じている。
文=拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)