12日間にわたり繰り広げられたパリ2024パラリンピックのなかで、さまざまなドラマが生まれた。記憶に残る日本代表選手の戦いを、取材班が厳選し、紹介する。

車いすテニス 女子シングルス 決勝
上地結衣 vs ディーデ・デフロート(オランダ)28連覇したライバルに勝てず苦しい時間が続いたが「同世代に彼女(デフロート)がいて幸せ」と上地
photo by Hiroyuki Nakamura

今大会の車いすテニスは、一味違った。とくに単複2冠を達成した上地結衣の活躍は目を見張るものがあった。

第1セット、最初にペースをつかんだのは上地だった。3ゲーム連取し、4ー1までリードする。だが、相手は女王デフロート。簡単な相手ではない。以降、デフロートが5ゲーム連続で取り、4ー6でこのセットを上地が失う。

第2セットは両者譲らず、ゲームの取り合いとなった。ゲームを決定づけたのは4ー3の上地リードで迎えた第8ゲームだろう。ブレークポイントを取ったデフロートだが、上地がデュースに持ち込む。互いにアドバンテージとなるが、最後は上地のエースが決まった。

第3セットも第6ゲームまで3ー3と拮抗する。第8ゲームでは上地が5ー3とリードを広げるが、デフロートも負けじと取り返す。そして第10ゲーム。上地はリターンや相手のミスでポイントを重ね、王手をかける。

上地が2回目のゴールドメダルポイントを握ると、追い込まれたデフロートがダブルフォルト。セットカウント2ー1で上地が勝利を収めた。同時に、王座に君臨し続けたオランダ一強に風穴を開けた瞬間だった。

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陸上競技 男子400m(T52/車いす)決勝
佐藤友祈 vs マクシム・カラバン(ベルギー)「力は東京大会のときよりもついていると、自信を持って言える。ただ、今回、カラバン選手の力が一枚上手だった。次こそは、必ず金メダルを獲って日本に持ち帰りたい」と佐藤
photo by Takamitsu Mifune

ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ佐藤友祈には、倒さなければならない相手がいた。それがカラバンだ。

2020年に競技を始めたカラバンのキャリアはそれほど長くない。しかし、2023年の世界パラ陸上競技選手権で佐藤から1位を奪い、同時に世界記録も更新。2024年の同大会でも1位に輝いた。佐藤は、文字通りの“新星”に敗れ、どちらの大会も2位に終わった。

佐藤はパリ大会を雪辱のチャンスとして位置づけた。雨が降り続くスタジアムで、第5レーンと第6レーンに並ぶ2人。両者から、高い集中力が伝わってくる。そして号砲が打たれた。

猛追するカラバンのスピードは、バックストレートでどんどん上がっていく。スタートから20秒を過ぎたところでひとつ外側のレーンでスタートした佐藤とカラバンが並んだものの、最終コーナーを曲がると、先頭のカラバンが佐藤を引き離していく。

何とか追い越したい佐藤だったが、結局カラバンとの距離を縮めることができなかった。ただ、5月の世界パラ陸上で4秒以上あったカラバンとのタイム差は、パリでは1秒16に縮まった。

4年後、佐藤はカラバンを倒せるか。今後の2人に注目せずにはいられない。

柔道 男子73kg級(J2/弱視)決勝
瀬戸勇次郎 vs ギオルギ・カルダニ(ジョージア)「カルダニは、節目節目で対戦している選手。本当に因縁を感じる部分がある」と瀬戸
photo by Takamitsu Mifune

君が代を歌う瀬戸勇次郎の頬を、一筋の涙が流れる。その後、ライバルたちが瀬戸に寄り添うシーンは見る者の涙を誘った。

瀬戸は、決勝まで一本勝ちで進んだ。金メダルまであと1勝。決勝の相手は、瀬戸が苦手とするカルダニだった。

試合は、落ち着いた表情で畳に上がった瀬戸が、開始早々、積極的に仕掛けていく。開始わずか6秒で、背負い投げで技ありを奪うと、その後も瀬戸が猛攻。カルダニも仕掛けるがなか決められない。

勝負が決まったのは試合開始から45秒。瀬戸が出足払いで技あり。合わせ技一本で瀬戸に軍配が上がった。

瀬戸にとって、“因縁の相手”を倒して金メダルを手にしたことは感慨深かったはずだ。

カルダニをはじめとするライバルたちが瀬戸を称える姿が印象的だった

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text by TEAM A
key visual by Hiroyuki Nakamura