経済産業省はこのほど、大阪・関西万博に出展する日本政府館(日本館)の展示公開第1弾として、「藻類(そうるい)」が主役となるファームエリアを公開した。
大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を、開催国としてプレゼンテーションする拠点である日本館。テーマは 「いのちと、いのちの、あいだに」。日本館は、「Plant Area(プラントエリア)」「Farm Area(ファームエリア)」「Factory Area(ファクトリーエリア)」の3つのエリアで構成され、日本文化の特徴のひとつである「循環」を日本館全体で創出する。
ファームエリアは「藻類(そうるい)」が主役。普段はあまり意識されることのない藻類だが、限りある化石資源への過度な依存や食料不足など、様々な課題を解決し得る存在として注目されている。ファームエリアでは、世界中に愛されるハローキティが32種類の藻類に扮し、藻類の魅力と無限の可能性をかわいらしく伝える。
様々な形の藻類に大変身した32種類の「ハローキティ」が日本館に登場
藻類は、理科の授業でも登場するミカヅキモやケイソウ類のほか、私たちの食卓で馴染み深いワカメやヒジキなど多種多様。さらに、三角形や四角形、正十二面体や四つ葉のクローバーに似た形など、顕微鏡でしか見ることのできない藻類も、実は魅力的な形状をしている。ハローキティのかわいさに藻類の愛らしいフォルムが融合することで、今まで気づかなかった藻類の世界に親しむことができる。
ハローキティが藻類の持つ無限の可能性を紹介
豊かに生きられる持続可能な社会を築くためには、限りある化石資源への過度な依存から脱却することが必要となる。その鍵として注目されているのが、光合成という営みを通じて太陽エネルギーを効率的に蓄えて多様な有機物を生み出す藻類。藻類は、そのまま食品や飼料となるだけでなく、抽出した原料から医薬品、燃料、プラスチック、繊維など様々な分野への応用が可能。さらに、砂漠や荒地のような農業利用が難しい土地でも、太陽光と少量の水で培養でき、陸上植物と比較して物質生産効率が圧倒的に高い特性を持っている。このような多岐にわたる藻類の可能性を、ハローキティを通じて楽しく学べる機会を提供する。
藻類を培養する「フォトバイオリアクター」
フォトバイオリアクターは、藻類を含む光合成を行う生物を培養する装置で、光エネルギーを効率的に利用し、少量の水で藻類を育てることが可能。
日本館ではスピルリナという藍藻類の仲間を培養するフォトバイオリアクターを立体的に配置。藻類による「有機物生産工場」 の可能性を提示するとともに、太陽のような強く優しい光と、幾重にも重なった藻類のフォトバイオリアクターが織りなす幻想的でエネルギッシュな空間を歩くことで、「森林浴」のような癒しの体験を提供する。ファームエリアでのフォトバイオリアクターなどの藻類の展示は、幅広い生物の育種・培養技術を有するちとせ研究所の協力によって展開している。
ファームエリア -「水」から「素材」への循環-
このエリアの主役は、物質をつないでいのちを生み出す藻類たち。ごみを分解することにより生まれた水や、二酸化炭素などの無機物を取り込み、光エネルギーなどを源に、日本館内で育てられる藻類。無限の可能性を持つ藻類の力と、日本が誇るカーボンリサイクル技術により、ものづくりの素材が生まれていく。ファームエリアでは、藻類の多様性を紹介するハローキティや実際に藻類を培養する「フォトバイオリアクター」をはじめ、二酸化炭素を原料にバイオ燃料、プラスチック、化粧品、食品などの素材を生み出す技術を紹介。カーボンニュートラルをはじめ、持続可能な社会を実現する鍵となる藻類や微生物の力を知ることができる。