充電ケースにタッチ液晶リモコン機能を備えた、JBLの画期的なワイヤレスイヤホン「JBL Tour Pro 3」(直販42,900円)が10月3日に発売されます。充電ケースをテレビやゲーム機、飛行機の機内エンターテインメントに有線接続すると、それらの音をワイヤレスイヤホンで聴けるオーディオトランスミッター機能も加わりました。ますます面白くなった注目機の使用感をお伝えします。
イヤホン本体のリモコン操作を覚えなくていい! タッチ液晶付きケースの魅力
JBLのワイヤレスイヤホンが液晶リモコン付きケースを採用した最初のモデルは、日本では2023年の春に発売された「JBL Tour Pro 2」でした。Tour Pro 2の実機に触れるまで、筆者もJBLが充電ケースに液晶リモコンを付けた意味がよくわかりませんでした。
ところが実際に使ってみると、もはや「液晶リモコン付きケースのないイヤホンなんてありえない」と思うほどに、Tour Pro 2の魅力は鮮烈でした。
多くのワイヤレスイヤホンは本体に内蔵するリモコン、またはモバイルアプリを併用して音楽再生や音声通話の操作、本体の設定を行います。イヤホン本体のリモコンは、たくさんの機能を搭載するほどにボタンの複数クリックや長押しなどの操作が覚えられなくなってきます。だからと言って操作するたびに、スマホをポケットやバッグから取り出すのもめんどうです。
充電ケースに、操作の結果を“目で見られる”タッチ液晶が付いていると、上記の悩みはひと息に解消されます。Tour Pro 3のようにノイズキャンセリングや外音取り込み、複数のイコライザーなどを搭載する多機能なイヤホンの場合はなおさらです。
筆者の他にもJBLの英断にたくさんのポジティブなフィードバックがあったのでしょう。日本では6月に発売された2万円台のワイヤレスイヤホン「JBL Live Beam 3」にもタッチ液晶リモコン機能が採用されました。そして、今回フラグシップモデルが進化します。
究極の多機能イヤホン。LDACハイレゾワイヤレス再生も
Tour Pro 3は密閉型ハウジングを採用するスティックスタイルのワイヤレスイヤホンです。アクティブノイズキャンセリングと外音取り込み、コンテンツの再生音量を下げて外音を取り込む「トークスルー」の機能も搭載します。BluetoothオーディオのコーデックはAACとSBCを基本としながら、アプリからトリガーをオンにするとLDACによるハイレゾ再生が楽しめるようになります。
イヤーチップはシリコンとフォームの2種類を同梱。サウンドに立体感を加える独自の「空間サウンド」に「ヘッドトラッカー」が連動したり、10バンドEQでは6つのプリセットとユーザーがカスタマイズした設定値を「マイEQ」として保存して繰り返し楽しめたりします。
Tour Pro 3の多彩な機能を列挙し始めるとキリがないので、ここでは筆者が特別に気に入っている機能を、あと2つだけ紹介します。
ひとつは「Silent Now」。モバイルアプリからこの機能をオンにすると、イヤホンのBluetooth接続を解除してノイキャンをオンにします。つまり、Tour Pro 3を“耳栓”としてぜいたくに使う機能です。JBL HeadphonesアプリからSilent Nowの実行時間を決めて、終了時刻にイヤホンから聞こえるアラームを鳴らすこともできます。仕事や勉強に一定時間集中したいときにとても便利です。
もうひとつが「リラックスサウンド」です。モバイルアプリの「その他」タブの中に5種類の環境音を模したトラックが収録されています。よりにぎやかな場所でTour Pro 3を耳栓のように使いたい場面で活躍します。最大60分間のタイマーが設定できます。
強力なノイキャン性能、騒音環境に自動適応
今回筆者はTour Pro 3を発売に先駆けて飛行機の中で試せる機会を得ました。新搭載のBluetoothオーディオトランスミッターはとても実用的な機能でした。
まずはノイズキャンセリングの性能をチェックしました。
本機に限らず、ノイズキャンセリング機能を搭載するイヤホンの性能を100%引き出すためには、ユーザーの耳にしっかりとフィットするイヤーチップを選択しましょう。JBL Headphonesアプリには「最適なフィット感をチェックする」機能があります。筆者はベストフィットが得られた、左右Mサイズのシリコン製イヤーチップで今回のテストを行いました。
Tour Pro 3は、モバイルアプリからノイズキャンセリング機能の効果をより細かくカスタマイズできます。「アダプティブノイズキャンセリング」をオンにすると、周囲の騒音レベルに合わせてTour Pro 3が最適な消音強度に調整してくれます。
この機能をオフにすると、消音レベルをユーザーがマニュアルで細かく決められます。飛行機の機内であればアダプティブをオンにするか、または消音強度を最大にするとエンジンノイズがすっと消えて、コンテンツのサウンドに深く入り込めました。圧迫感のない、とても自然な消音効果です。
モバイルアプリからは外音取り込み(アンビエントアウェア)の強度もマニュアルで7つの段階から細かく調整できます。デフォルトの最大値にすると、コンテンツのサウンドが鳴っていないとイヤホンの存在を忘れてしまうほど、外音がクリアに取り込まれます。
機内エンターテインメントの音もTour Pro 3で聴ける
続いて、新機能のBluetoothオーディオトランスミッターを試しました。
こちらはTour Pro 3のパッケージに付属するUSB to 3.5mmアナログケーブル、またはUSB to USBケーブル(端子はType-C同士)を使用します。設定はとてもシンプルで、充電ケースのUSB端子にケーブルを接続して、タッチ液晶リモコンのメニューにある下記写真の画面から右側のアイコンを選択して「Bluetoothをオフ」(Auracastのアイコンがオレンジ色に点灯)にします。すると、充電ケースを接続しているデバイスで再生しているコンテンツの音がイヤホンから聞こえてきます。
筆者は飛行機で旅をする際に、機内エンターテインメントを楽しむために有線イヤホンと変換プラグをいつも持参していました。これからはUSB to 3.5mmケーブルを忘れずに持参するだけで、スマホに保存した動画と機内エンターテインメントのコンテンツの両方が1台のTour Pro 3だけで楽しめます。機内エンターテインメントで『帰ってきたあぶない刑事』の再生をスタートして、動画から遅延することなく聞こえてくる音声が耳に飛び込んできたときに思わず歓声をあげてしまいました。
充電ケースの操作から各種のイコライザーを切り替えたり、空間サウンドをオンにすると、機内エンターテインメントのサウンドにも効果がかかります。
安定のサウンド。高額だけど納得の充実度
Tour Pro 3は中高音域用のバランスドアーマチュアドライバーと、低音域用には10mm口径の振動板を採用するダイナミックドライバーを搭載しました。JBLが6月に発売したLive Beam 3のサウンドに比べると、中高音域が格段に伸びやかで、低音は立体感に富んでいます。ボーカルやピアノのサウンドがキリッと引き締まり、スケールの大きなオーケストラの演奏は広々とした情景を描いてみせました。
アプリからLDACをオンにするとその特長はさらに際立ちます。特にボーカルがきらびやかさを増す印象を受けました。Official髭男dismのアルバム「Editorial」から『I LOVE...』を聴くと、ボーカルの高音域が“天井を突き破るような感覚”がとてもよくわかると思います。
Tour Pro 3は4万円台の高級なワイヤレスイヤホンで、誰もがためらいなく買える価格ではないかもしれませんが、音楽を聴くことや音声通話に使えるだけでなく、Bluetoothトランスミッターや集中力を高めるための耳栓にもなります。そして何よりも、リモコン操作に迷わないタッチ液晶付きケースという大きな特長に触れると、「最高のワイヤレスイヤホンと出会えた満足感」が使い込むほどに押し寄せてくると思います。