「N-BOX JOY」についてホンダの開発陣に話を聞いていると、「芸コマ」というワードが飛び出した。初めて聞いたのでどういう意味かわからなかったのだが、どうやら「芸が細かい」を略した言葉らしい。どのあたりが芸コマなのか、ホンダの工夫を聞いてきた。
クルマの後端床下に専用ボックスを組み込んだ?
「N-BOX JOY」(ジョイ)の特徴は後席を前にぱたんと倒すと出現する「ふらっとテラス」という空間。チェックの織物表皮が敷かれたフロアで座ったり寝転んだりしてくつろげる。
ふらっとテラスを(ほぼ)フラットな空間にするため、ジョイの荷室部分の後端は普通の「N-BOX」に比べ80mmも高くしてある。80mmのかさ上げで生まれたスペースに専用の「フロアアンダーボックス」を取り付けたのがホンダの工夫だ。
この部分、普通の「N-BOX」だと白い発泡スチロールが入っていて、パンク修理キットを格納しておけるようになっている。
発泡スチロールを取り除いて、穴の部分をうまく収納スペースとして活用したのが「フロアアンダーボックス」だ。ちなみに、パンク修理キットはすぐ近くのスペースに移動させてある。
「フロアアンダーボックス」のフタにはビード形状を施した。閉じた状態のフタの上は、マグカップなどのちょっとしたものを置いておくスペースとしても活用できる。
普通のN-BOXやN-BOXカスタムに乗っている人の中には、荷室周辺だけジョイのように変えたいと考える人がいるかもしれない。ただ、フロアアンダーボックス周りにはジョイならではの部分がたくさんあるので、換装は「できなくはない」ものの、かなり手がかかるのでオススメしない、ジョイの荷室にひかれた人はジョイの購入を検討してみてほしいというのがホンダ技術者の説明だった。
荷室のライトに小さなスイッチを追加!
これぞ芸コマだと思ったのが、荷室のライトに取り付けられた小さなスイッチだ。
ギア状のスイッチを回せば荷室のライトを付けたり消したりできる。このライト、普通であればテールゲートを開けるとしばらくの間は付きっぱなしとなる。ジョイはテールゲートを開けたまま「ふらっとテラス」で過ごすことを想定したクルマだ。このライトを任意で消せないのは、場合によってはストレスになる。そんな理由からスイッチを取り付けたそうだ。
フロントグリル変更に伴い中身も調整
これは芸コマというより対応不可避な部分なのだが、ジョイはフロントグリルを作り替えているので、ボンネットの中身(エンジン回り)についても変更を加えてある。例えばターボエンジン車であれば、インタークーラーに風を当てるためのダクトを専用パーツに取り換えたり、グリルの穴から入る風がうまく過給機に当たるように清流板を取り付けたりしたそうだ。
チェックの色は単純なベージュではない?
車内はチェック柄が印象的。ベージュのチェックはオシャレなだけでなく、撥水表皮になっているため手入れがしやすいし、色味としてそもそも汚れが目立たないという特性もある。
このベージュ、近くで見ると青やオレンジの色の粒が散りばめられていることがわかる。補色の関係にある(混ぜると黒になる)色を混ぜ込むことで、落ち着いた色を作り出したそうだ。ちなみに「芸コマ」というワードを使ったのは、この説明をしてくれたCMFデザイナーの松村美月さんだ。
N-BOXは軽自動車どころか日本の全ての新車の中で最もたくさん売れるクルマであり、保有台数は256万台と膨大な数に達している。すでに売れていて、気に入って乗っている人がたくさんいるクルマを、これ以上どうやってよくすればいいのか。そんな難題に芸コマな工夫の積み重ねで立ち向かったのが、ジョイというクルマなのかもしれない。