MM総研は9月18日、世界39の国・地域を対象に、米Apple「iPhone」の販売価格を調査し、「世界のiPhone販売価格調査(2024年9月)」として発表した。結果を見ると、日本は「iPhoneの販売価格が低いものの、収入を考えると購入しにくい」という環境であることが分かった。

  • 日本でのiPhone価格は世界各国と比べると割安だが、お給料の低さを考えると購入しづらい…という悲しい実態が調査結果で明らかになった

この調査は、米アップルが2024年9月20日に発売した「iPhone 16」シリーズを中心に、各国におけるアップルオンラインストアの価格を比較分析したもの。対象モデルは iPhone 16(128GB)、iPhone 16 Plus(256GB)、iPhone 16 Pro(512GB)、iPhone 16 Pro Max(1TB)の4モデル。これらにiPhone 15(128GB)とiPhone SE 第3世代(64GB)を加えた6モデルが対象だ。比較分析は、アップルオンラインストアによる直販価格に各国通貨と円の為替レートを用いた円換算ベースで行っている。

iPhone 16シリーズの価格は日本では最安水準

iPhone 16シリーズの価格だが、日本ではiPhone 16が124,800円と3番目に安い水準。最安は中国の119,980円、2番目がタイの124,583円。4番目は香港の125,436円、5番目はオーストラリアの127,182円で、日本以外の平均は147,611円。

iPhone 16 Plusの価格は、日本では154,800円で2番目に安い。最安は香港の154,527円、3番目は台湾の158,261円、4番目は韓国の158,730円、5番目は中国の159,980円。日本を除いた平均は186,453円。

iPhone 16 Proは日本では204,800円で3番目に安く、最安は香港の201,800円、2番目が米国の202,041円となった。4番目は台湾の206,087円、5番目は韓国の211,640円。日本を除いた平均は243,023円。

iPhone 16 Pro Maxは、日本が249,800円で3番目の安さ。最安は香港の247,255円、2番目が米国の248,702円、4番目は台湾の256,087円、5番目はオーストラリアの259,000円だ。日本を除いた平均は299,100円。

この結果から、日本でのiPhone 16シリーズの販売価格は世界で2~3番目に安いということが分かる。一方、最高値は4モデルともにトルコで、次いでブラジルという結果に。要因としては、消費税や付加価値税、輸入品に対する関税といった特有の税制度が影響しているとの見方。

iPhone 16シリーズの発売時の価格とiPhone 15シリーズの発売時の価格を比較しての値上げ(値下げ)率は、38カ国中(チリを除く)5カ国が値上げ、8ヵ国が値下げとなった。日本や米国などでは価格は据え置き。こうした価格設定は、為替レートが影響していると推察する。

値下げされたiPhone 15は6番目 / iPhone SE3は最安水準

一方、型落ちとなったiPhone 15は世界各国で値下げされた。日本では12,000円の値下げとなる112,800円となり6番目の安さ。最安は中国の107,980円、2番目は香港の109,073円、3番目はタイの112,083円、4番目はフィリピンの112,475円、5番目は台湾の112,609円。日本を除いた平均は129,535円。

iPhone SE3についてはiPhone 16の発売による変化はなく、日本での販売価格は62,800円と最安。2番目は台湾の64,783円、3番目はオーストラリアの65,364円。日本を除いた平均は79,893円だった。

2023年9月から2024年9月までの日本での販売価格の順位は、両機種ともに2024年7月まで1位~2位をキープ。2024年は長く円安が続いたが、7月末に日銀が政策金利を0.25%に引き上げ円高への揺り戻しが起こり、2024年8月以降iPhone 15が順位を下げた。iPhone SE3は今なお最安値で、日本での販売価格は諸外国と比較して安く設定されているようだ。

日本のiPhone指数(iPhone 16価格÷平均所得)は2.74%

iPhoneの購入のしやすさ比較のため、それぞれの国におけるiPhone 16の販売価格が年間の平均所得に占める比率を「iPhone指数」として算出。これによると、日本のiPhone指数は2.74%となり、24番目と中位からやや下の水準。販売価格は安いのに購入しやすさは下位に近い、という結果となった。

購入しやすい国のトップはシンガポールで0.77%、2番目はスイスの0.90%、3番目はアラブ首長国連邦の1.00%。指数の算出には、平均所得をOECD(経済協力開発機構)のデータから参照。OECD加盟国以外はIMF(国際通貨基金)による1人当たりGDPを代替データとして使用している。

日米におけるiPhoneの発売時価格・iPhone指数の推移

日本と米国における2013年発売のiPhone 5s以降のナンバリングモデルについて、発売時の価格とiPhone指数を比較したところ、日本ではiPhone 5sが75,390円、iPhone 16が124,800円と約49,400円、65.5%の上昇。米国ではiPhone 5sが70,321円、iPhone 16が128,454円と、約58,100円、82.7%の上昇となった。iPhone指数は、日本がiPhone 5s時に1.82%だったものがiPhone 16時に2.74%に上昇し購入しづらくなったのに対し、米国がiPhone 5s時に1.04%だったものがiPhone 16時に1.12%とほぼ横ばいだった。

iPhoneシリーズの発売時の価格を見ていくと、iPhone 8までは上昇を続けiPhone X、iPhone XSで大きく上昇。iPhone 11では通常モデルとProシリーズに分けられたことで販売価格が大きく下がった。

iPhoneの定価購入を前提とした場合、日本と米国のiPhone指数の差が2013年時点で1.8倍だったが、2024年では2.4倍と大きく開いた。これは2013年時と比較して米国の平均所得が約1.7倍に上昇したのに対し、日本の平均所得が約1.1倍と伸び悩んだ結果と言える。

iPhoneシェア40%以上の国で日本のiPhone指数は最下位

国別にiPhoneのシェアを見ていくと、日本は40%以上のカテゴリに分類される中にあって最もiPhone指数が下位の国だった。総じて、iPhone指数が高くなるほどiPhoneのシェアが低くなる傾向があるが、日本では真逆の結果に。所得に対してiPhone購入の金銭的負担が高いにもかかわらず人気が高い、という希有な例と言えるだろう。

今後のiPhone価格はどうなる?

2024年は、米ドル/円レートが一時期161円台に突入するなど急速に円安が進んだ。結果として、日本でのiPhone 16シリーズの販売価格はiPhone 15シリーズから据え置きだったが、もし160円を超える円安が続いていた場合iPhone 16シリーズの販売価格は1割程度高く設定されていたかもしれない。

今回調査時の米ドル/円レートは142.32円で算出しており、2022年の値上げ実績を考慮すれば為替の状況次第で今後価格改定の可能性もあるだろう。とはいえ、政治・金融・紛争問題など、様々な不確定要因により為替は常に変動する。日本のiPhone価格にとって行き過ぎた円安はリスクとなる可能性もあるので注視していきたい。

出典:MM総研

対象国・地域(全39) 中国、タイ、日本、香港、オーストラリア、米国、台湾、アラブ首長国連邦、韓国、ベトナム、カナダ、マレーシア、インド、フィリピン、シンガポール、スイス、チリ、メキシコ、ニュージーランド、ルクセンブルク、英国、ポーランド、ドイツ、オーストリア、スペイン、チェコ、フランス/オランダ、ベルギー、イタリア/アイルランド、ポルトガル、フィンランド、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、ハンガリー、ブラジル、トルコ