藤井聡太王座に永瀬拓矢九段が挑戦する第72期王座戦五番勝負(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は第2局が9月18日(水)に愛知県名古屋市の「名古屋マリオットアソシアホテル」で行われました。対局の結果、角換わり腰掛け銀の研究勝負から抜け出した藤井王座が123手で勝利。事前準備と読みとを調和させた快勝で初防衛まであと1勝と迫っています。
とっておきの永瀬研究
第1局では△3三金型早繰り銀を採用して勝利を収めた藤井王座、先手番で迎えた本局で正統派の角換わり腰掛け銀を目指したのは大方の予想通りの作戦です。これに対し注目された後手番・永瀬九段の用意は本戦型における王道ともいえる待機策でした。「先手の攻め、後手の受け」という構図で定跡手順が続きます。
ともに想定の範囲内か恐ろしい速さで指し手が進みます。対局開始30分にして盤上は76手を経過。ようやくペースが落ち着いたのは永瀬九段が9筋の端歩を突く新手を指したときでした。将棋ソフトが示す最善手ではないことを知りつつ、永瀬九段は自分だけが評価値を知っているという実戦的な指しやすさを重視した格好です。
藤井王座の対応力光る
定跡を外れた難解な中盤戦を前にして、ともに長考が目立ち始めます。守りの要の銀をタダで取らせるという驚きの勝負術を見せた藤井王座は、その代償に得た手番を生かして攻勢を取ります。4筋に築いた拠点が寄せの要になるのは誰の目にも明らかですが、そのために自玉を危険にさらしても大丈夫という読みと大局観が光りました。
優勢に立った藤井王座の指し手は冷静を極めました。終局時刻は19時48分、最後は敵の香頭に角を打つ珍しい王手が決め手となって永瀬九段が投了。直観的な恐怖感を排除した冷徹な寄せを目の当たりにしたファンは「見たこともない手」「本当に人間かよ」と驚きを通り越した感嘆を口にしました。
一局を振り返ると永瀬王座渾身の研究を前に時間を使いつつも驚異的な読みと大局観で対処した藤井王座の快勝譜に。永瀬流の剛速球を藤井流のフルスイングが打ち返した好局となりました。2連勝とした藤井王座はこれで防衛に王手。第3局は9月30日(月)に京都市東山区の「ウェスティン都ホテル京都」で行われます。
水留啓(将棋情報局)