第50期棋王戦コナミグループ杯(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)は挑戦者決定トーナメントが進行中。9月17日(火)には羽生善治九段―梶浦宏孝七段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、相居飛車の攻め合いから抜け出した羽生九段が105手で勝利。本戦3連勝としてベスト8入りを決めています。
現代矢倉の構図
羽生九段は大橋貴洸七段と菅井竜也八段、梶浦七段は佐々木勇気八段に勝っての登場。振り駒が行われた本局は先手となった羽生九段が矢倉を採用、対する後手の梶浦七段は中住まいに構えて戦いの時を待ちました。先手が囲いの堅さを、後手が玉の広さを主張するのは現代矢倉におけるメインテーマのひとつです。
駒組みが頂点に達したところで梶浦七段が仕掛けます。9筋の端攻めに手を求めたのは棒銀の筋を含みにした厳しい攻めですが、実戦はここからの羽生九段の対応が秀逸でした。香が出払ったことで空いたスペースに角を打ち込んだのがその始まり。手順に馬を作って敵の攻め駒を攻める構想が明らかになってきました。
羽生九段の必勝パターン
ペースをつかんだ羽生九段の指し手は冴えわたります。8三の地点に香を打ち込んだのは厳しい飛車取りでいわゆる「羽生ゾーン」と呼ばれる場所への着手。ここに駒を打ち込んで曲線的に指し回す展開は羽生九段が得意とする勝ちパターンです。いつの間にか梶浦玉が自陣中央に孤立している点が羽生九段の優勢を裏付けます。
優勢を築いた羽生九段はその後も落ち着いた攻めで勝勢を確立。終局時刻は19時28分、最後は自玉の寄りを認めた梶浦七段の投了により羽生九段のベスト8進出が決まりました。一局を振り返ると、梶浦七段の仕掛けに対し鋭い角打ちで切り返した羽生九段の快勝譜に。羽生九段は次戦で広瀬章人九段―斎藤明日斗五段戦の勝者と対戦します。
水留啓(将棋情報局)