熊本・宇城市の日本海洋資格センター(JML)九州海技学院は9月6日、第23回 内燃機関六級海技士(機関)第一種養成講習の閉講式を挙行。内航船員を目指す10~50代の生徒28名に修了証書が授与された。
■感謝の思いを胸に
JR熊本駅前から天草に向かうバスに乗り、揺られること1時間と少し。その途上、車窓には穏やかな有明海が広がる。遥か彼方に行き交うのは、貨物の運搬船。そして干潟から海の中へ、長部田海床路(ながべたかいしょうろ)と呼ばれる電柱の道が続いている。
三角西港は、そんな有明海の南側に位置する近代港湾。明治20年(1887年)に国費で築港されると、九州有数の貿易港として栄えた。三池炭鉱から採掘された石炭を輸出していた港としても知られている。エリアには現在も往時を偲ばせる遺構が残っており、平成27年(2015年)には「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産のひとつとして世界文化遺産に登録された。
さて日本海洋資格センター九州海技学院は、そんな三角西港の小高い丘の上に設置された、船員になるための専門教育学校。こちらで第23回 内燃機関六級海技士(機関)第一種養成講習が2024年4月10日より約4.5か月の間、実施された。
本講習は船員未経験者を対象としたもので、受講生は座学85日、乗船実習49日、工場実習14日のカリキュラムを通じて出力装置、プロペラ装置、甲板機械、燃料や潤滑剤などを学び、救命や消火、また海事法令についても必要な知識を身につけた。
閉講式では冒頭、日本海洋資格センター九州海技学院 学院長の中野隆氏が生徒1人ひとりの名前を読み上げ、修了証書を授与していった。
主催者挨拶で、中野学院長は「皆さんは明日から、船員として各方面で活躍されることになります。名残惜しい心持ちでいっぱいですが、皆さんとも今日でお別れです。中国の儒学者 荀子に『青は藍より出てて、藍よりも青し』という教えがあります。皆さんは4月に入学された頃と比べて、人間的にも大きく成長されました。これから内航海運業界、水産業界で活躍されることを祈っています。どうかお身体だけは気を付けて、頑張ってください」と温かい言葉で送り出す。
このあと、来賓挨拶となった。九州運輸局の吉岡嘉春氏は「六級海技士(機関)の免状を手にした後は、さらなる職域を広げるために四級、さらに上位の資格にも挑戦してもらえたら。新しいことに挑戦するとき、人は困難なことに直面します。この学び舎で一緒に過ごした仲間たち、そして先生方のことを思い出して、ときにお互いに連絡を取り合って乗り越えてもらえたらと思います」。また第十管区 海上保安本部の津村直文氏は「最近の船舶交通事故の原因として、人為的なものがたくさんあります。皆さんは九州海技学院で学んだ知識、技術を活かして、そして使命感や責任感を大事にして、ぜひ海の現場で安全な航行を心がけてください」と呼びかける。
日本内航海運組合 総連合会の林広之氏は「今期は受講生7名の方に、内航総連、海洋共育センター、海技教育財団が連携した奨学金制度をご利用いただきました。内航総連では今後も、内航海運業に携わる企業の円滑な事業運営をサポートするとともに、船員の皆さんの働きやすい環境づくりに努めてまいります」とした。そして海洋共育センターの平井敏視氏は「皆さんは人生を変えたいという思いで船員になられました。いま日本の物流の40%を海運業が支えており、従事する船員は全国に約2万2,000人います。皆さんのご活躍を期待しています」と話し、続けて「これは余談になりますが、私が機関士として働いていた頃、耳栓をしろという指導がなく、歳をとってから難聴になりました。ぜひ機関室では耳栓をしてください」とアドバイスを送った。
このあと修了生謝辞として、実習生代表の平岡さんが登壇。平岡さんは4月の入学の頃を振り返りつつ「機関士とは何か、右も左も分からない中でスタートした講習でしたが、本日、無事に閉講式を迎えられました。これもひとえに、ご指導いただきました先生方のおかげです」と、まずは感謝の言葉を口にする。そのうえで「私たちは明日より、いよいよ内航海運業界および水産業界の仲間入りを果たします。九州海技学院で学んだ知識と技術を発揮し、将来、各分野で大きな飛躍ができるよう、シーマンシップに準じて規律を守り、健康に留意し、業界の発展のために職務を全うすることをここに誓います」と思いを新たにした。