5日夜、パリ南アリーナ。パリ2024パラリンピックのゴールボール男子で表彰台の真ん中に上がったのは、日本代表“オリオンJAPAN”だった。
前日の準決勝で宿敵・中国を倒し、決勝に進出した日本代表には勢いがあった。決勝の相手はウクライナ。今大会の予選で8―9で敗れているが、約1年前の「バーミンガム2023IBSAワールドゲームズ」では勝利している相手だ。
先発3人にライトプレーヤーを入れ替えて戦ったウクライナに対し、日本は守備で横たわる際に、頭の向きが違うセンター2人、レフトとライト両ウイングでプレーする金子和也、得点力のあるウイングプレーヤーを複数擁する強みがある。
試合は先発の金子、宮食行次が得点したあと、メンバーチェンジしながら戦った。3-2でリードしていたものの、終盤に追いつかれて延長戦へ。ゴールデンゴール方式の延長1分半過ぎに佐野優人のゴールが決まり、4-3で優勝を手にした。
両手でガッツポーズをする工藤力也HC元選手の工藤力也ヘッドコーチは、取材エリアに現れると「リアルか夢かわからない」とコメント。
ゴールボールは女子も強豪であり、2012年のロンドン大会で金メダルを獲得するなど実績がある。
「いつも観客席で表彰台に乗る女子選手に拍手を送りながらも、苦虫を噛んでいた。絶対次は自分たちが表彰台に立つんだと努力し続けた」と満足そうに語った。
【#7】金子和也 ※キャプテン/レフト&センター
「このチームを強くしてくれた多くの人たちに感謝しかない。もう(佐野が決勝点を)取った瞬間は、ぐちゃぐちゃになって喜び、それがこのチームなんだなと思った。底力があって(このチームが)大好きだなと思いました。自分自身は、ここ1年、ライトで入ることが増え、ほかのライトプレーヤーが自分と戦ってくれたおかげで、スキルを上げることができた。ライト(を担うの)は、まだ怖い。でも、やっぱりコートに入ると責任もありますし、キャプテンとして自分で得点を取ることでチームを楽にしたいという思いでずっと戦っていました」
【#1】佐野優人 ライト
「(延長で値千金のゴール。ゴールが入った瞬間は)嬉しさで跳び跳ねたんですけど、同時に、脱力というか、緊張の力感が一気に抜けて、『あ、勝ったんだ』とうれしい気持ちになった。とにかく守って、自分の自信のあるボールを投げ返そうと考えていた。ゴールボールは6人でバトンをつなぐものなので、勝てばそれが正解。スタメンで出られなかったのは悔しいが、そんな自分でも、3点目、4点目を決めて日本に勝ちを持ってこられた。自分を褒めたいです」
【#2】鳥居陽生 ライト
「自分の夢も、目標も叶った。(決勝は出場機会に恵まれなかったが)一緒に戦っているような気持ちでずっとベンチのなかでボールを追っていた。実際コートに立ってはいないけれど、得るものが多い試合だった。若手としてこの舞台に立てたので(編集注:鳥居はチーム最年少の20歳)次は自分たちの代が(次の世代を)どんどん引っ張っていく。2028年のロサンゼルス大会に向かって頑張っていこうと思います」
【#4】田口侑治 センター
「技術だけではなく、フィジカルも(重要)。イチから鍛えたことが男子チームにとってよかったと思う。僕は身長168㎝。海外には170㎝以下の選手なんていない。小粒の選手たちが、海外の大きな選手に勝つことにロマンを感じていた。予選のウクライナ戦で右肩をケガし、力が入らない状態だった。(後半の選手交代について)ベンチのいい判断だと思うし、彼(萩原選手)は力があるので(勝利は)実力通り。金メダルへの自信はあった」
【#5】萩原直輝 センター
「メダルを首から下げているこの重みで、なにかどんどん実感が湧いてきました。めちゃくちゃ嬉しい。ウクライナ戦は(予選で敗れたあと)相手がバウンドボールを多投してきてやられてしまったので、しっかり対応していかないといけないと思い、アップのときからバウンドボールを実際に受けて、しっかり音を聞いて取る練習をしていました」
【#8】宮食行次 レフト
「延長に入ってから、『自分が決めてやろう』ではなく、『(同じ状況だったバーミンガム2023IBSAワールドゲームズのウクライナ戦の延長戦でゴールを決めた)佐野が決めるだろう』と心のどこかで思っていた。デジャヴみたいな。だからこそ、守備に集中ができた。そしたら、やっぱり(佐野)優人が決めてくれた。(東京大会のときから伸びた点について)いろいろあるが、一番は海外(チーム)に対してコンスタントに得点ができるチームになったこと。いつでも点が取れる、って思っているから守備も自信を持って守れる。チームとして、そういうメンタリティになったのかなと思います」
text by Asuka Senaga
photo by Hiroyuki Nakamura