今年の夏も暑かった。現在進行形で今でも暑いし、もはや、秋になったら涼しくなるという保証もない。心配なのは、たっぷりと降り注いだ紫外線が頭皮や頭髪に与える影響だ。対策やケアに関することも含め、医師に詳しい話を聞いてみた。
夏の暑さが頭皮・頭髪に与えるダメージとは
夏が頭皮や頭髪にダメージを与える主な原因は大きく分けると3つある。
まずは紫外線だ。紫外線量は5月頃から夏にかけて増加する。髪や頭皮に当たる紫外線の量は、顔に比べると実に2~3倍になるという。
「紫外線を浴び続けると頭髪のキューティクルがはがれたり、枝毛、切れ毛、白髪などの原因となります。頭皮においても炎症を起こしたり、毛周期(髪の毛の生え変わるサイクル)に異常をきたしたりするなど、薄毛や抜け毛を進行させる可能性があります」(以下、カッコ内は圓山先生)
次は汗。人は暑いと汗をかくが、これも頭皮環境に悪影響を及ぼす可能性があるファクターだ。
「暑さによって汗や皮脂が大量に分泌された場合、汚れが残ったり毛穴が詰まったりします。これも頭皮のダメージにつながるため、頭皮を清潔に保つために、シャンプーなどでしっかりとケアする必要があります」
最後が食欲の低下だ。夏バテなどによって食欲が減少して栄養バランスが乱れると、結果として頭皮や頭髪に届く栄養分の減少につながる。
「頭皮・頭髪に届く栄養が減ってしまうと、健康な髪の毛が生えにくくなったり、髪のダメージが回復しにくくなる可能性があります。今年はまだ暑い日が続くと予想されているため、より一層注意が必要です」
頭皮・頭髪のダメージが表面化するのは秋?
夏の間に蓄積したダメージの影響が現れるのは、実は秋頃だ。
圓山先生によれば、「紫外線によるメラニンの増加(いわゆるサンタン)は紫外線を浴びてから数日後から見られ、数週間続く」という。そのため、紫外線が特に強い夏(7~8月)の影響は、9~10月にかけて頭皮の炎症や乾燥、かゆみやフケなどの頭皮トラブルとして目立ちはじめ、10~11月頃まで続くと考えられるのだ。
抜け毛については、そもそも秋は抜け毛が増えやすい季節であるということを理解しておく必要がある。
通常、髪は「成長期」「退行期」「休止期」の3つの過程(毛周期)を経て抜け落ちるが、「退行期」「休止期」に入りやすいのが秋ごろなのだとか。つまり、秋は毛周期の関係からただでさえ抜け毛が増えがちなのだが、夏のダメージが表面化することで、さらに抜け毛が加速する可能性があるのだ。
では、抜け毛が「毛周期」と「夏」のどちらの影響によるものなのかを見抜く方法はあるのだろうか。実はある。
「夏のダメージによる抜け毛の特徴は、紫外線にさらされる頭頂部や分け目付近に集中し、毛髪の乾燥によるパサつきや切れ毛が増加します。一方、休止期脱毛のケースでは切れ毛はなく、抜け毛の根元には白い球状の部分(毛球)がついていることが特徴です」
紫外線から髪を守る方法は?
ここまで読んでいただいた方の中には、「もう8月の猛暑は終わったし、また来年、気を付ければいいか」と思った方もいるかもしれない。少し待ってほしい。
気象庁が8月29日に発表した1カ月予報(8月30日~9月30日)を見ると、9月になってもまだまだ暑い日が続く見込みとなっている。圓山先生も「一般的に、日本の場合は10月まで紫外線が強いため、少なくとも10月までは注意した方がいいでしょう」と警鐘を鳴らしている。油断は大敵だ。
では、どんなダメージ対策が効果的なのか。圓山先生からは「紫外線を防いでくれる帽子や日傘の活用がおすすめです。その他にも、頭皮や髪に振りかけられるスプレータイプの日焼け止めなども有効です」とのコメントが得られた。
髪に日焼け止めスプレーとは意外な対策だが、頭皮に付着してしまうと、かえって悪影響を及ぼすのでは? その点について圓山先生は「もともと皮膚につけるものなので、問題ありません。毛穴につまったとしても、その日のうちにシャワーで流せば大丈夫です」と話す。ただ、多くのスプレー製品にはアルコールが含まれているため、敏感肌の方には刺激となる可能性があるので注意が必要なようだ。
頭皮については、「汚れをしっかり落とすようにシャンプー(洗浄)を行うのが基本です。より気を使うなら頭皮の保湿、炎症を抑える、血流促進を目的としたヘアトニック(頭皮用の美容液のような位置づけのスキンケア)を使うといった方法が良いでしょう。頭皮の紫外線予防に関しては、日傘を差したり帽子をかぶったりすることで、より一層のUV対策ができるので推奨します」とのことだった。