第83期順位戦B級1組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、5回戦計6局の一斉対局が9月5日(木)に東西の将棋会館で行われました。このうち東京・将棋会館で行われた羽生善治九段―石井健太郎七段の一戦は石井七段が71手で勝利。横歩取りの乱戦を制して白星先行としました。
3局目の正直なるか
羽生九段2勝2敗、石井七段2勝1敗で迎えた5回戦。両者の対局はこれまでに2局あり、いずれも羽生九段が制しています。石井七段の先手番で始まった対局は横歩取りに進展、早い段階で飛車角総交換になるのは近年主流となっている青野流において主要定跡のひとつといえます。
ともに研究範囲か、早いペースで指し手が進みます。羽生九段は昨年10月に指された佐々木勇気八段との王将戦挑戦者決定リーグでこの形は経験済み。本局では先手の石井七段がその将棋からのマイナーチェンジを披露しました。狙われそうな右桂を颯爽と跳ね出して敵玉の頭に照準を合わせたのが用意とみられる積極策です。
石井七段が攻め切る
続いて跳ね出した左桂との連携で後手陣を乱すことに成功した石井七段はここから軽快な攻めでリードを奪います。取られそうな角を見捨てて後手玉への寄せを目指したのが「終盤は駒の損得より速度」の格言通りの一手でした。手数は60手台ながら、横歩取りの戦型ではしばしばこうしたギアチェンジが求められます。
終局時刻は18時45分、先手の攻めが切れないのを認めた羽生九段が駒を投じて石井七段の勝利が決まりました。投了はやや早いようでも、数手後に浮き駒の金を取る手が生じており石井七段からの攻めは切れない格好でした。対羽生九段戦初勝利を挙げた石井七段は3勝1敗となり昇級戦線に食らいついています、敗れた羽生九段は2勝3敗となっています。
水留啓(将棋情報局)