「何色でもいいからメダルがほしい」。気合十分でパリ大会に臨んだアーチェリー男子個人リカーブオープンの上山友裕。22位で予選を通過し、9月4日にパリ市内のアンヴァリッドで行われた決勝ラウンドに進んだが、あと一歩及ばず、9位で幕を閉じた。
世界で勝つイメージはできていた2016年のリオ大会、そして2021年の東京大会に続き、3度目のパラリンピック出場となった上山。現在の世界ランキングは6位。ドバイ2022世界パラアーチェリー選手権大会、2023年に行われた杭州2022アジアパラ競技大会では銀メダルと、東京大会以降、着実に実績を積み上げてきた。
「世界でようやく勝てるようになってきたというイメージがあった。この試合でメダルを獲るイメージもあった」との意気込みでパリに乗り込んだものの、予選ラウンドでは、599点。自己ベストが643点ということを考えると、本来の調子とはほど遠い得点での通過となった。
末武コーチと話をする上山友裕実際、調子はイマイチだったと明かす。
「こっちに来てから全然調子を上げられずにやっていたが、(予選から決勝ラウンドまでの期間)末武寛基コーチと(練習を)やって。ようやく一昨日あたりから当たり出し、これは行けるぞって」
好調の友人を上回る安定感決勝ラウンドは、1対1の勝ち点方式。1セットにつき3本の矢を放ち、合計点が高い方が2点、同点なら1点、負けたら0点。勝ち点の合計点が高い方が次へと勝ち進む。
予選22位の上山は、同11位で世界ランキング10位のステファノ・トラビザニ(イタリア)と対戦した。
「今回出場しているメンバーのなかでも、とくに仲のいい友人。予選でバコバコ当てていた。(決勝ラウンドで当たることが決まり)ステファノが相手じゃなかったら1回戦を突破できたのに、と思っていた」と警戒していた相手だ。
決勝ラウンドの1回戦は、友人であるイタリアのステファノ・トラビザニと対戦。上山が勝利したしかし、決勝ラウンドでは、トラビザニが1射目で0点を射つ。以後は、安定した射を見せていたが、それを上山が上回った。
「左上と左下に7を2つ射ってしまった。この7はなんでだというのがあったが、末武コーチに(引き手である)右肩がしっかり回っていないというアドバイスをもらって、そこから立て直せた」というように、アドバイスを得た後は、10点、9点、8点と高得点をマーク。危なげなく2回戦へと勝ち進んだ。
一進一退の2回戦2回戦の相手は、6位通過で、世界ランキング35位のウカシュ・チシェク(ポーランド)だ。チシェクの自己ベストは624点。1回戦の得点は1セットあたり23点から27点で、同じく24点から28点を出した上山にも勝機はあった。
上山自身も「(相手の)1回戦の点数を見れば、勝てていた」と振り返る。たしかに、第1セットは上山に軍配が上がった。しかし第2セット、チシェクも調子を上げてきた。結果、同点となり、勝ち点が3対1となる。
流れが変わったのが、第3セットだ。
「(1射目に)照準器に虫がついた。左からテッテッテッテッって歩いた。やばい、引き直すかと思ったが、時間がギリギリになると思い、そのままいった 」
メダル獲得に向けて戦った上山だったが……結果、7点。このセット、上山は残りの2射を9点、8点とし計24点だったが、対するチシェクは9点、10点、9点の28点。ここで3対3の同点となる。
ここから先は、ハイレベルな戦いとなった。第4セット、上山もチシェクも、的の真ん中である9点と10点の黄色いエリアから矢を外さない。上山28点に対し、チシェク29点となった。
これがアーチェリー最終となる第5セット、少しでも黄色いエリアから外したら負けとなることは明白ななか、上山が3本目で8点を射った。やってしまった、という表情の上山に対し、最後、チシェクは10点を射抜き、弓を高く掲げてガッツポーズ。
「自分の射はできたが、ちょっと運がなかった。あれだけ当てられると、僕も対応できなかった。これがアーチェリー。そのとき乗ってる人が持っていく」
これで上山のパリでの戦いは幕を閉じたが、パラリンピックへの挑戦は続く。
次回のパラリンピックはメダルなるか「パラリンピックで面白い試合をして、勝ちたい。(そのためにも)100の力を発揮できる環境を整えて、2028年のロサンゼルスパラリンピックに行きたい。大ファンであるドジャースの山本由伸選手が活躍している地で自分も活躍したい」
上山の4回目の挑戦は、すでに始まっている。
text by TEAM A
photo by Hiroyuki Nakamura