サムスン電子ジャパンは7月にGalaxy Watchシリーズの最新ラインナップを発売した。今回は、そのうちスタンダードモデルの「Galaxy Watch7」を実際に試用したので、製品概要をおさらいしつつ、新機能を中心とした使用感についてお届けしたい。
プロセッサーが刷新されている
Galaxy Watch7は、44mmまたは40mmサイズのスマートウォッチだ。ディスプレイは円形で、1.5インチの有機ELディスプレイ(480×480ピクセル)を搭載する。「Bluetooth」モデルと、単体でのモバイル通信が利用できる「LTE」モデルの2種類を選択可能で、カラーバリエーションは「グリーン」と「シルバー」の2色展開だ。価格は57,200円から。
標準で同梱されるストラップバンドは「Galaxy Watch7 Sport Band」だ。バンドの素材には「HNBR(水酸化ニトリルゴム)」が採用されており、肌触りは滑らかだ。波状の凹凸の加工もあって、通気性も良かった。バックル部分はピンバックル式だ。
2023年秋に発売された前世代モデルの「Galaxy Watch6」から変更された仕様としては、
- プロセッサーの刷新
- 位置情報取得の精度向上
- 新バイオアクティブセンサーの搭載
この3点を押さえておきたい。
まず、プロセッサーは、5nmプロセスの2コアプロセッサー(Exynos W930)から、3nmプロセスの5コアプロセッサー(Exynos W1000)へと刷新された。関連して、搭載するストレージの容量も従来の16GBから32GBへと倍増している。続いて、位置情報については、GPSの位置測位に使用する周波数帯がL1のみからL1+L5のデュアルバンド対応へと進化している。そして、13個のLEDを搭載した新たなバイオアクティブセンサーを搭載し、より精度の高い測定が行えるようになったとされている。
健康管理機能が実用的だった
Galaxy Watch7は従来通り、体組成の測定など、シリーズのお馴染みのヘルスケア関連機能を備えている。そのうえで、さらに目玉となる新機能として「エナジースコア」と「睡眠コーチング」の2つに注目したい。
まず、「エナジースコア」は、前日のデータから分析・算出したスコアを100点満点中の数値で表示する機能だ。このエナジースコア機能は、左右スワイプして表示する「タイル」という画面として配置して使用する。同機能を使っているうちに、毎朝の起床時に「今日のスコアは何点だろうか」と確認するのが楽しくなってくる。
実際に使ってみて感じたのは、その日の元気度合いをスコアで確認できるというよりも、前日の生活習慣のうち、何が悪かったのかが可視化されることにメリットがあることだ。これによって、自身の生活習慣について反省するための機会が得られる。
具体的には、エナジースコアのタイルをタップして、詳細画面を開くと、睡眠のデータや運動量/心拍関連のデータなど、スコアに影響のあった項目が表示される。筆者の場合には、入眠のタイミングや睡眠時間が良かった一方で、運動量が少ないことでスコアが下がっていることが分かり、「あぁ、夏は暑いから外にでれないけれど、運動量を増やさないとまずいな」と認識させられた。
「睡眠コーチング」は睡眠パターンを分析して、タイプ別の改善指導をしてくれる機能だ。同機能を利用するには、週末2日間の起床を含んだ7日分の睡眠時の着用が必要になる。条件を満たすことで、「ペンギンタイプ」など動物に例えた睡眠パターンの分類が表示されるのが面白い。筆者は幸い「ライオンタイプ」と表示され、睡眠習慣の矯正は必要ないようだった。
なお、睡眠パターンが分析されると、改善するためのポイントがレコメンドされ、3週間のコーチングを通じて、睡眠の改善状況が可視化されていく。今回のレビューでは日数的に3週間は試せなかったものの、睡眠習慣の改善には効果がありそうだ。
睡眠習慣について自力での改善に悩んでいる人には、Galaxy Watch7は良い選択肢となるだろう。ただし、デバイスに鋭いエッジこそないものの、バックル部には金具もある。もし家族で川の字で寝るような機会がある場合には、安全のために装着位置などに少々気を払った方が良いと思う。
バッテリー管理は1日1回充電する程度
画面の常時表示や、血中酸素レベルの測定、いびきの検出、睡眠中の皮膚温度測定など、オン・オフを任意で切り替えられる項目があり、バッテリー消費量は設定によって変わる。今回のレビューでは、これらの項目をすべてオンにして使っていたので、バッテリー消費は大きい状態での検証だった。
そのうえで、Galaxy Watch7のバッテリー持ちは約1日といったところだった。仕様上の最大連続使用時間は40時間であるが、常時表示をオンにし、生活習慣の改善に注力して使う場合には、1日に1回の充電が必要だと思っておくとよいだろう。
なお、充電スピードはかなり速いので、入浴時や食事の準備をしているタイミングなどで、ちょこちょこと数十分の充電を行うだけで良かったのは快適だった。
うまく使いこなせなかった新機能もあった
Galaxy Watch7の目玉機能としては、「AGEs指数」の測定と、一部の屋外ワークアウトでの「レース」機能もある。ただし、筆者が試したタイミング・検証範囲では、これらをあまりうまく活用できなかったというのが本音だ。
1つ目の「AGEs指数」は、新しいバイオアクティブセンサーによって、老化などに関連すると言われるAGEsの蓄積レベルを数値化してくれる機能だ。ただし、現在は「ラボ」という表示が付与されている。少なくとも筆者が2週間ほど装着した間に、一定の測定値のようなものは表示されるものの、具体的なスコアなどではなく、運動や食事量の変化があった日にも、測定数値の変動は確認できなかった。
一応、別ページに機能の説明書きはあるものの、現在の値が何を意味するのか、そこからどういったアクションをすれば良いのかが見えづらい。チャレンジングな先進機能ではあるものの、現状ではユーザーとしてもどのように活用すれば良いのかがまだ未知数だと感じた。
2つ目の「レース」は、屋外ランニングと屋外サイクリングのワークアウトにおいて、過去の自分の記録に挑戦できる機能だ。この機能もうまく検証できなかった。過去14日間のうちに走ったコースと同じコースを、同じスタート地点から走ることで、過去と現在のパフォーマンスを比較するできるはずなのだが、筆者の試した範囲では、同じスタート地点に立っても“過去のコース”が表示されないままだった。
ちなみに、一度走った道のりは位置情報が自動で記録されており、スマートフォンの「SAMSUNG Health」アプリ内からワークアウトの記録を表示し、「ルートを保存」操作を行うことで、ルートとして登録できる。ただし、この操作を行なったうえで再度試しても、レース機能を開始できなかった。
なお、検証時のソフトウェアバージョンは、24年8月末~9月上旬時点での最新のものだった。筆者の検証不足の可能性も否めないが、まだWeb上にも使い方を説明する詳しいドキュメントの類も見当たらなかったので、今後の更新を注視しつつ、長い視野で期待しておきたい。
一方で、シンプルにランニングの測定で活用する機能は、使い勝手が非常に良かった。L1+L5のデュアルバンド対応の恩恵か、位置情報の精度も道の左側と右側がしっかりと認識されているレベルで、看板通り市街地でのジョギング・ランニングなどでの使用に適していると思う。競技レベルでの通常を想定しなければ、レース機能の使い勝手について気にする必要も全くないので、基本的には安心して選択して大丈夫な一台だ。
なお、今回は新機能を中心に紹介したが、従来から踏襲した機能を含めて、デザイン・使い勝手ともに総合的な完成度はかなり高い一台だと感じた。夏のピークを過ぎたこのタイミングで、運動不足や睡眠習慣の乱れを感じている人ならば、Galaxy Watch7はぜひ検討候補として加えておきたい。