7月末に米Qualcommが2024年4〜6月期決算を発表した際に、CEOのクリスティアーノ・アモン氏はSnapdragon Xシリーズの今後について次のようにコメントした。「2025年を見据え、新たなデザインウィンに加えて、NPU性能を維持したまま、700ドル程度のPCにも対応できるように、Xシリーズの製品ロードマップを拡大していく」。
現在、Snapdragon Xシリーズは全てのモデルがMicrosoftのCopilot+ PCの要件を満たし、搭載PCの価格は「999ドルから」となっている。これは普及価格帯の上位からプレミアム価格帯に相当する。ひと月前にアモン氏は、Snapdragon Xシリーズのラインナップ拡大により、Copilot+世代のAI性能を備えたPCをより手頃な普及価格帯に広げることを約束していた。
Qualcommは9月4日、Snapdragon X Plusの新モデル「Snapdragon X Plus 8-core」を発表した。これまでSnapdragon Xシリーズのラインナップは、12コアの「Elite」と10コアの「Plus」で構成されていた。8コアのPlusの追加により、PC OEMは電力効率に優れたパフォーマンスと最大45TOPSのNPUというSnapdragon Xシリーズの特徴を活かしたCopilot+ PCを700〜900ドルの価格帯で実現できる。最初の搭載製品は、Acer、ASUS、Dell Technologies、HP、Lenovo、Samsungから登場する。
AI PC向けのプロセッサは、6月にAMDがRyzen AI 300シリーズを、9月3日にIntelがCore Ultra 200Vシリーズを発表した。これらにより、AMDまたはIntelのプロセッサを搭載するPCにCopilot+ PCが拡大する。さらにSnapdragon X Plus 8コアの登場で、より手頃な価格帯にCopilot+ PCが広がる。
Snapdragon X Plus 8コアには「X1P-42-100」と「X1P-46-100」の2つのSKUがある。8コアのOryon CPUは、4コアごとに2つのクラスタに分割されている。各クラスタは12MBのL2キャッシュを搭載し、システムレベルのキャッシュと合わせたキャッシュ総量は30MBである(Plus 10コアは42MB)。上位のX1P-46-100は、マルチコアの動作クロックが最大3.4GHz、クラスタごとに1つのコアを最大4.0GHzにブーストできる。下位のX1P-42-100は、マルチコアの動作クロックが最大3.2GHz、シングルコアのブーストが最大3.4GHzとなっている。メモリはLPDDR5x DRAMで、最大64GBを搭載可能である。
統合GPUの演算性能は、X1P-46-100が2.1TFLOPS、X1P-42-100が1.7TFLOPSを提供する(Plus 10コアは3.8TFLOPS)。最大3台の外部UHDモニター(60Hz)の接続をサポートする。NPU性能は、Snapdragon X EliteやPlus 10コアと同じ45TOPSである。
通信関連は、5Gモデム「Snapdragon X65 5G Modem-RF System」が統合されており、通信速度は下り最大10Gbps、上り最大3.5Gbpsである。Wi-Fi/Bluetoothシステムは「FastConnect 7800」で、Wi-Fi 6、Wi-Fi 6E、Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4に対応する。
ストレージは、PCIe 4.0 NVMe、UFS 4.0およびSD 3.0に対応。また、USB4に標準対応しており、USB4(最大40Gbps)x3ポート、USB 3.2 Gen 2x2ポート、USB 2x1ポートを搭載することが可能である。
Spectra ISP(Image Signal Processor)を搭載し、最大3,600万画素、高度なMIPIカメラのサポートにより、効率的で高品質な画像処理を実現。自動フレーミング、背景ぼかし、顔認証といったインテリジェント機能を提供する。
Qualcommは、AMD Ryzen 5 8640U/ Ryzen 7 8840UやIntel Core Ultra 5 125U/ Core Ultra 7 155Uを競合として、CPU(シングルスレッド、マルチスレッド)やGPU、Webブラウジング、AI推論のベンチマーク(Geekbench v6.2、3DMark Wildlife Extreme、Speedometer 2.1、Procyon AIなど)比較を公開している。
また、現在Macbook Airの999ドル・モデルが搭載するM2とのベンチマークや仕様の比較も示されている。