「オレオ」「リッツ」「クロレッツ」を持つモンデリーズ
モンデリーズ・ジャパンは、ビスケットとガムを2本柱として事業を展開している企業だ。日本国内では「オレオ」「リッツ」「プレミアム」「クロレッツ」「リカルデント」「ホールズ」という6つのブランドを展開している。
日本市場では、クラッカー市場において「リッツ」がNo.1、「オレオ」がサンドイッチビスケットにおいて主たるブランドのひとつ、ガム市場ではNo.2という位置づけにある。海外を見るとより多くのブランドを持つが、各国の特徴に合わせてグローバルの知見やリソースを落とし込むことで、高いブランド価値を維持・実現している会社といえるだろう。「オレオ」や「リッツ」といった世界的に有名なお菓子を扱っているモンデリーズ・ジャパン。代表取締役社長として同社を率いているのは、まだ41歳という若さの碇祐輔氏だ。モンデリーズ・ジャパンのブランド戦略と社風を碇氏に直接お聞きしてみよう。
2022年11月、30代という若さでそんなモンデリーズ・ジャパンの代表取締役社長に就任したのが、碇祐輔氏。モンデリーズ・ジャパンの商品と魅力、そして同社の社風について伺ってみた。
30代で代表取締役社長に就任した碇祐輔氏
碇祐輔氏は、食品業界においてさまざまなマネジメントを経験したのち、2019年にカテゴリープランニング&アクティベーション本部長としてモンデリーズ・ジャパンに入社した。モンデリーズ・ジャパンに転職した理由を、同氏は次のように話す。
「ひとつ目は、グローバルスケールを活かしながら、日本の消費者のために取り組もうとしている姿勢に共感が持てたことにあります。ふたつ目は、当時の経営陣と面接する中でオープンでフラットな社風を感じ、自分の考えや提案を活かすことができると思ったことです。三つ目はどちらかというとキャリア軸ですが、日本の経営メンバーの一人という形での入社だったので。より広範囲なビジネスに影響を与えることができると考えました」
こうしてモンデリーズ・ジャパンで働くことになった碇氏は、営業部門全体を統括するようになり、前社長の福本千秋氏とともに日本での事業の牽引をしてきた。そして2022年、弱冠39歳で代表取締役社長という重責を担うことになる。
「前任の社長が退職されるというタイミングで私に打診が来ましたが、いま振り返ると、やはり驚きだったというのが率直な感想です。一方で日本のチームと一緒に今後の未来を描く機会になると思ったので、嬉しい気持ちにもなりました。同時に、実績や経験をもとに私にアサインしていただけたので、同じような志を持つメンバーのために、今後に向けたキャリアの道を作っておきたいという思いもありました」
グローバルメリットを活かしつつ地域に落とし込むブランド戦略
モンデリーズ・ジャパンの基本的な商品戦略は、ブランドの基幹となる商品群の強化だ。「オレオ」ならバニラクリーム、「リッツ」ならクラッカー、「クロレッツ」ならオリジナルミントとクリアミントが基幹商品になる。ただし、日本での喫食シーンに合わせてさまざまなパッケージを販売しているのが大きな特徴といえる。
例として「オレオ」「リッツ」は近年、ファミリーパックに力を入れている。また「クロレッツ」ではスタンドパウチが誕生した。日本の消費者ニーズをリサーチした商品展開にも積極的だ。活性炭を配合した「クロレッツ 炭フレッシュ」は、まさに日本で開発された日本の消費者向けの商品だという。
「日本での行事に特化した商品も展開しており、ハロウィンのシーズンには毎年『オレオ ハロウィンパック』を発売しています。各国それぞれのモンデリーズが、その国の消費者に合う販促施策を実行しようという考えを持ってますので、海外では日本とはまた違うフレーバーのオレオやリッツに出会うことができますよ」
モンデリーズ・ジャパンは、各ブランドを通して「ブランドを楽しむ経験」を提起していきたいと考えているそうだ。例えば、オレオを楽しんだときの盛り上がり、リッツを食べていたときの楽しい時間を通じて、商品設計以上のブランドを作るというのが同社の目指す姿といえる。
オレオにおいては、ユーザーから「オレオのチーズケーキ」や「オレオのブラウニー」のレシピなども投稿されており、楽しみ方は本当に多種多様だ。さまざまな国に展開されている歴史あるブランドだからこそ、いろいろなクッキングの仕方があり、それが同社の考えるブランド価値に繋がっているのだろう。
あわせて、碇氏自身がどのようにモンデリーズ・ジャパンの商品を楽しんでいるのかも聞いてみた。
「私はプライベートで結構お酒を飲む機会が多いので、リッツかプレミアムのクラッカーに生ハムやチーズをオントップして食べるのがすごく好きです。あと最近、リッツにこしあんとバターを乗せて食べる機会があって、これは非常に美味しかったです」
ガム市場の変遷とニーズの変化
近年のお菓子市場に目を向けると、新型コロナウイルスの流行を境にガム市場が縮小したことが印象的だ。コロナ禍の収束が見えてからは再びプラスに転じており、2024年も需要は回復傾向だが、それでもグミなどに押されている感は否めない。碇氏はこの状況をどのように捉えているのだろうか。
「ガムとグミは食べる目的もニーズも異なると考えています。コロナ禍以前は外出先でのエチケットのためにガムを食べていた人が多かったのです。ですから、コロナ禍中は外出の減少とともにエチケットニーズが減りました。ただし、テレワークなどを通じて『集中力を高めたい』という新しいニーズも生まれています。商品の売れ筋もだいぶ変化していますが、“息をすっきりさせたい”という需要は根強いと思いますので、人流の回復とともにニーズも復活していくと考えています」
それを表しているのが、スタンドパウチの高いニーズだ。以前から販売されてきた、いわゆるスティックタイプやボトルタイプよりも、想定以上に消費者から支持されているパッケージだという。また「集中」をキーワードに開発した「クロレッツ ゲームマックス」という商品も発売された。
一方、「リカルデント」は口腔の健康への関心の高まりから、クロレッツとは異なるニーズがある商品だ。その特徴は、日本のガム市場において唯一、虫歯を抑制するCPP-ACPを配合することで特定保健用食品(トクホ)として販売されている製品があること。中には日本歯科医師会の推薦を受けている商品もあり、モンデリーズ・ジャパンも自信を持って送り出している。
お菓子業界に新しい風を
現在、円安や原材料費・包装資材費の高騰などを受け、食品メーカーはその舵取りが難しい情勢にある。モンデリーズ・ジャパンも値上げは実施しているものの、そのコストを最小化するためにいまさまざまな取り組みを行っているという。
「ガム業界の慣習として、ボトルガムの中に食べ終わったガムを包んで捨てる紙、いわゆる捨て紙を入れてきました。ですが、ちょうど去年、消費者リサーチの結果とサスティナビリティの観点から、“捨て紙を抜く”という意思決定を実施しました。これによって年間8トンほどの紙資源を削減できています。コストを最小化すべくアクションを行うことでコストを圧縮し、可能な限り消費者のみなさまに価格上昇という形でご迷惑をかけないようにしていきたいと思います」
また、モンデリーズ・ジャパンは社内の働き方の改革にも積極的だ。コロナ禍より前の2016年から同社はフリーアドレス化と在宅勤務の取り組みを進めており、社長の碇氏すら他の社員と同じオフィスで席をともにしているという。これもまた、オープンでフラットな社風に繋がっているのだろう。
「ロッカーに荷物を入れてそのままオフィスに行くんですけど、社内に人数が多いときなどは、すごく端の席しかないときとかもあります(笑)」
最後に碇氏は、次のようにメッセージを送る。
「我々はグローバルで愛される商品を日本に提供しているメーカーですので、継続してブランド価値を高めるようなラインアップの強化をしていきたいと思っています。慣習に捕らわれることなく業界に新しい風を吹き込み、商品・働き方の両面から日本社会に対して少しでも貢献できるよう努めますので、モンデリーズ・ジャパンをどうぞよろしくお願いいたします」