米Intelは9月3日(ドイツ時間)、IFA 2024に先駆けて開催した同社発表イベントにて、Lunar Lakeの開発コードネームで知られていたノートPC向け最新CPU「Core Ultra 200V」シリーズを正式発表した。
従来の呼び方でいえば第15世代Intel Coreにあたり、2023年12月に初の“Core Ultra”シリーズとして登場したMeteor Lake(U)の後継となるが、Intelが「Meteor Lakeの後継ではなく、AI PC向けフラッグシップSoCという位置づけ」と語るように内部構造が大きく進化している。
Core Ultra 200Vシリーズを搭載したPCは、メーカー各社が同日から順次発売。スライドで表示された製品投入メーカーの中に、日本メーカーのマウスコンピューターやユニットコム、サードウェーブのロゴも確認できた。
Lunar Lakeは9種類。コア数は同一、メモリ容量や周波数に違いあり
Lunar Lakeはすでにアーキテクチャーの詳細が2024年のCOMPUTEX TAIPEIで明かされている(関連記事:「Intelが「Lunar Lake」「Xeon 6」「Gaudi 3」をアンベール、AI Everywhereの要」)。
Lunar Lakeの概要は後にまわし、まずは待望のラインナップを見てみよう(アーキテクチャの詳細は上記記事を参照して欲しい)。
Pコア/Eコア | メモリ(LPDDR5X-8533MT/s) | GPU | NPU | PBP/MTP | |
---|---|---|---|---|---|
Core Ultra 9 288V | 4コア(Max 5.1GHz) 4コア(Max 3.7GHz) |
32GB | 8コア Arc 140V(Max 2.05GHz) | 6x Gen4 | 30W/37W |
Core Ultra 7 268V | 4コア(Max 5.0GHz) 4コア(Max 3.7GHz) |
32GB | 8コア Arc 140V(Max 2.0GHz) | 6x Gen4 | 17W/37W |
Core Ultra 7 266V | 4コア(Max 5.0GHz) 4コア(Max 3.7GHz) |
16GB | 8コア Arc 140V(Max 2.0GHz) | 6x Gen4 | 17W/37W |
Core Ultra 7 258V | 4コア(Max 4.8GHz) 4コア(Max 3.7GHz) |
32GB | 8コア Arc 140V(Max 1.95GHz) | 6x Gen4 | 17W/37W |
Core Ultra 7 256V | 4コア(Max 4.8GHz) 4コア(Max 3.7GHz) |
16GB | 8コア Arc 140V(Max 1.95GHz) | 6x Gen4 | 17W/37W |
Core Ultra 5 238V | 4コア(Max 4.7GHz) 4コア(Max 3.5GHz) |
32GB | 7コア Arc 130V(Max 1.85GHz) | 5x Gen4 | 17W/37W |
Core Ultra 5 236V | 4コア(Max 4.7GHz) 4コア(Max 3.5GHz) |
16GB | 7コア Arc 130V(Max 1.85GHz) | 5x Gen4 | 17W/37W |
Core Ultra 5 228V | 4コア(Max 4.5GHz) 4コア(Max 3.5GHz) |
32GB | 7コア Arc 130V(Max 1.85GHz) | 5x Gen4 | 17W/37W |
Core Ultra 5 226V | 4コア(Max 4.5GHz) 4コア(Max 3.5GHz) |
16GB | 7コア Arc 130V(Max 1.85GHz) | 5x Gen4 | 17W/37W |
正式名称が未定だったLunar Lakeだが、「Core Ultra 200V」シリーズ(Core Ultra シリーズ2)に落ち着いたようだ。SKUは9種類(2024年9月3日時点)で、いずれもCPUコア数はPコア(Lion Cove)×4とEコア(Skymont)×4で統一されている。各モデルの主な違いは最大周波数と、今回新たにパッケージ上に統合されたメインメモリの容量、内蔵GPUのコア数、GPU周波数など。
最上位モデルの「Core Ultra 9 288V」は最大5.10GHzの周波数で動作し、グラフィックス機能として、最大2.05GHz動作のGPU Coreを8基搭載する「Intel Arc GPU(Arc 140V)」を内蔵する。熱設計電力はCore Ultra 9 288VのみPBP(Processor Base Power)が30W、MTP(Maximum Turbo Power)が37Wで、ほか8モデルはいずれも17W/37Wとなっている。
Core Ultra 200Vシリーズ搭載PCのリリースを表明しているメーカーは、Acer、ASUS、Dell Technologies、HP、Lenovo、LG、MSI、Samsungなど20社以上で、発表スライドの中には日本のマウスコンピューターやユニットコム、サードウェーブのロゴも。80以上のコンシューマ向け製品を予定し、EUエリアなど早い地域では現地時間9月3日からCore Ultra 200Vシリーズ搭載モデルの一部を予約開始するという。
販売開始は9月24日から順次。なおCore Ultra 200Vプロセッサを搭載し、Windowsの最新版を採用するPCはCopilot+ PCとみなされ、11月からCopilot+ PCの機能がアップデート提供される予定だ。
Core Ultra 200Vシリーズを採用したIntel Evo Editionバージョンの開発も進められており、薄型設計や長時間のバッテリー駆動、Arc グラフィックス、Intel Wi-Fi 7などの要件が設定されている。またIntel vPro版は2025年初頭に登場する予定だ。発表会場ではCore Ultra 200Vシリーズ搭載ノートPCの実機がいくつか展示されていた。各メーカーの最新PCとそのパフォーマンスについては追ってレポートする。
Lunar Lakeの特徴を改めて振り返る
Lunar Lakeの大きな特徴は、同社初のメモリチップ統合型パッケージ(16GBメモリと32GBメモリの2種類)、コンピューティング・タイルとプラットフォーム・コントローラー・タイルの2タイル構成(正確には機能を持たず強度のために載せられたフィラー・タイルもある)、コンピューティング・タイルがTSMCのN3Bプロセス、プラットフォーム・コントローラー・タイルがTSMCのN6プロセスで製造される……といったもの。これらタイルはIntelの3次元実装技術「Foveros」でベースタイル上に積層される。
コンピューティング・タイルにはAI処理向けのNPUが(Meteor Lakeに続き)搭載され、その性能はNPU単体でもMicrosoftの「Copilot+ PC」の基準を満たす最大40 TOPS以上を実現(上位3 SKUが48 TOPS、その下2 SKUが47 TOPS、残り4 SKUが40TOPS)。CPU・GPUを組み合わせた全体では最大120 TOPS以上となり、大幅な改善に至っている。
CPUコア構成はPコア(Lion Cove)×4とEコア(Skymont)×4となり、Meteor Lakeに搭載されていたLP Eコアは省かれた。アーキテクチャはMeteor Lakeから進化し、特に電力効率を重視するためHyper-Threading機能が削除されたことも注目だ。6月時点で、搭載ノートPCのバッテリ寿命は最大60%伸びるとうたわれていた。今回、Core Ultra 200Vシリーズを搭載した実機を見る機会があったが、多くが最長20時間以上のバッテリー駆動をアピールしている。
またグラフィックスはXe2アーキテクチャに進化し、Meteor Lakeから最大1.5倍パフォーマンスが高まったとする。なおLunar Lake上でAIのワークロードを実行する場合、NPUは音声や動画のノイズ除去など比較的軽い処理を担い、Xe2では動画内のオブジェクト検出や画像生成など、重めの処理を担う役割分担になっている。