私立 開成高等学校(東京・荒川区)では9月以降、生徒が開発したモバイル注文Webアプリ「学食ネット」により食堂がPayPay決済に対応する。これまで同校では、食券の購入にともなう大行列に多くの生徒が不満を漏らしていたというが、アプリの導入効果は果たして――。ソフトバンク本社では26日、開発に携わった生徒がプレゼンを披露した。
■行列の解消に向けて
Webアプリ「学食ネット」を開発したのは、開成高校3年の秋山弘幸さんと、同2年の周詩喬さん。開発の経緯について、まずは秋山さんが次のように説明する。「学内の食堂には券売機が2台しか設置されていません。開成高校には1200人ほどの学生がおり、そのうち400~500人ほどが食堂を利用するので、昼休みには30~40人、授業後の10分休みにもそれなりの行列ができてしまう状態が続いています。昼休みに委員会活動などをやりたい生徒の中には、お昼ご飯を諦める人も出ているんです」。食券購入のために発生する行列の解消が喫緊の課題だった、と明かす。
秋山さんは「ほかの生徒も同じ悩みを抱えているのでは」という思いから、昨年秋に生徒アンケートを実施。すると、約半数の生徒が食券購入の待ち時間に不満を感じており、食券を購入するだけでも平均で5分の待ち時間があることが分かった。
そこで秋山さんは周さんに相談。周さんは、事前アンケートで多くの生徒が日常的にPayPayを利用していることを知ると、PayPayが開発者に向けて公開しているAPIを活用して「学食ネット」を開発することを決める。そして4月からプログラミングに取り掛かり、約半年で完成させた。
「学食ネット」の利用方法は、次の通り。まずWebアプリを開くと、ランチメニューが閲覧できる。この画面からは日替わりメニューの内容、そして売り切れ情報も確認可能。さて食べたい料理を選んだら、PayPayで「支払う」をタップすると「購入済み食券一覧」の画面に遷移する。あとは実際に食堂に行き、購入済みの電子食券の画面を厨房スタッフに見せれば料理を受け取ることができる。
秋山さんは「実証実験に協力してくれた友人たちから、たくさんの好意的なコメントをもらえました。これまで券売機で食券を購入する際は、後ろの人を待たせないために時間をかけてメニューを選べなかったけど、これからはアプリを使って食べたいものをゆっくり選びたい、といった声もありました」と嬉しそうに報告する。
アプリ開発にあたって、周さんは「まずは公開されているドキュメントを読んで、手順通りに作成していきました。分からない問題に直面したときは、PayPayの開発者向けフォームから問い合わせました。支払い処理を含むプログラムは初めて作成しましたが、バグやエラーが許されないという思いもあり、例外処理の実装に苦労しました」と振り返った。
■若年層に大きな伸びしろ
学生たちのプレゼン発表に先駆け、PayPayの高木寛人氏は事業の進捗状況について報告。それによればPayPay登録ユーザー数は2024年8月現在で6,500万を突破しており、決済取扱高は23年度実績で12.5兆円に達している。
PayPayではかねてから、若年層に向けた取り組みにも注力してきた。高木氏は「クレジットカードを持てない高校生が、人生でイチバン最初に手にするキャッシュレスツールにしていきたい。利用者が伸びてきたところですが、まだまだ10代のユーザーに大きな伸びしろが存在します」と評価する。
教育機関における普及にも一層の力を入れていく。たとえばPayPayを導入すれば、部活動費、修学旅行費、給食費、文化祭の売上、購買費など、あらゆる金銭にまつわる校務負担を減らすことができる。現金を用意する手間が要らず、盗難、紛失のリスクもない。PayPayはサービスの性質上(クレジットカードのように)番号が流出する被害も起きようがない。そんなメリットを、学校関係者にも広く伝えていく考え。「昨年(2023年)は20校の学園祭・文化祭でPayPayが導入されました。今年はすでに、その数を超える学校で利用が始まっています」と高木氏。今後の利用者拡大に向けても意欲を示した。