クラシエは9月3日、「睡眠に関する意識調査」の結果を発表した。調査は2024年7月27日~7月28日、35歳~54歳の女性400人を対象にインターネットで行われた。
眠りの質を下げる「カサカサ睡眠」とは
寝具だけでなく、サプリや食品、アプリなど睡眠に関連する市場は年々伸長しており、「レム睡眠」や「ノンレム睡眠」、「快眠」、「熟眠」、「睡眠負債」などの睡眠の質に関するワードが話題になることも多いことから、睡眠に対する関心度は高まっていることが伺える。しかし、本調査では、7割以上の人が未だに睡眠不足を実感。さらに、約8割の人が「良い睡眠を取るための知識を持っていない」と回答し、「情報が多すぎて何をしたら良いか分からない」という理由も挙げられ、睡眠対策迷子となっている人が多くいることが判明した。
この結果を受け、同社は、多くの人が知らず知らずのうちに抱えている睡眠の悩みを「カサカサ睡眠」と名付けた。睡眠の質に影響を与える要因として、日中の運動や食生活などが挙げられることは多々あるが、一般的に認知されている要因以外にも陥りやすい課題がある。この、意識されづらい睡眠課題に着目したのが「カサカサ睡眠」。
同社では、眠りとお風呂の専門家・小林麻利子さんとともに、より良い睡眠をとるための新しいルーティーンを提案している。
様々な外部環境による「肌のカサカサ」
様々な外部環境・生活空間の影響や、生活における各種の刺激などにより、肌状態が悪化して引き起こされるのが「肌のカサカサ」。日本では寝室に複数人で寝る文化があるため、二酸化炭素濃度が高くなったり、高湿度になることで皮脂が出やすくなったりするという。また、布団や肌着との擦れなど、寝ている間に多数の肌摩擦が起こると、肌あれの原因となり、肌のカサカサにつながる。肌がカサカサしないような、素材選びや肌ケアができているかも睡眠の質に関係しているという。
実際、今回の調査でも、3人に1人が「睡眠中の乾燥によるカサカサ悩みを実感している」と回答した。一方で、約8割の人が「ボディケアが睡眠に影響を与えていること」を知らず、満足な睡眠をとるためにしていることに「ボディケア」を挙げる人は1割未満の少数派であるという実態も明らかになった。
ポリエステルの製品は静電気が生じて乾燥肌の原因になりやすいため、小林さんは、パジャマや寝具は綿や麻といった天然素材100%の製品を選ぶことを提案している。眠りが深くなるにつれて、身体は発汗し、深部体温が低下していくため、寝具に求められるのは深い眠りに入る際に多く分泌する汗を外に逃がす機能だという。天然素材は通気性や吸湿性・放湿性が高いといえる。最近はポリエステル製品でも機能性が高いものもあるので、汗を外に逃す機能が高いかをみることも重要だという。
マットレスは体が沈みすぎると寝返りができず、肌の同じところに負担がかかってしまうため、枕だけではなくマットレスも物によるが、10年に一度は交換するのがおすすめだとか(枕は3~5年に一度の交換を推奨)。
ボディソープは、乾燥や肌あれが気になる人や、敏感肌と感じている人は、肌あれ防止の薬用処方(医薬部外品)のものがおススメだという。きちんと汚れを落とす必要があるが、肌に配慮しているかどうかも選択ポイントに。また、ボディソープはしっかり泡立てて良い泡の状態で使用すると、肌の摩擦が軽減されてやさしく洗うことができる。泡で出てくるタイプは簡単で便利だが、液体タイプは上手に泡立てると良い泡になる。泡立てるのが苦手な人は、泡立てネットなどを利用することもできる。
入浴時間は、美容を考えると7分ほどで問題ないという。5分以下の入浴は、血圧が下がる前(=リラックスする前)にお風呂から上がることになることも。また、20分以上の入浴はそれ以上つかっても血流が良くなることはなく、つかればつかるほど肌が乾燥してしまうという。ただし、月経前や多少の脳疲労を感じる場合は、あえて深部体温を一時的に上昇させた方が、その反動で入浴後に深部体温がしっかり低下し、眠りの質を高めることができる。その場合は、40度のお風呂に10分~15分の入浴がベストだという。また、入浴すると浸透圧がかかってお湯が角質層に入った後、肌のうるおいを保つ天然保湿因子がお湯に逃げてしまい乾燥しやすくなるため、敏感肌の時や、季節の変わり目など肌がゆらぎやすい時は、塩素除去作用のある入浴剤や保湿系のオイル等が配合されている入浴剤を用意すると良いという。
起床時に「光」を浴びることも大切。体内時計の司令塔である脳の視交叉上核は、起床後太陽を浴びることで、身体が朝だと認識することができる。そのため、起床後はすぐにカーテンを開けて日光を浴びるだけでなく、部屋の照明をしっかりつけて光を浴びることが重要だという。また、寝起きから30分以内に消化活動を促すことで、視交叉上核は本格的に朝が来たと認識し圧や深部体温を高め、体を日中モードに切り替えていく。お肌にも体内リズムがあり、肌は夜に修復され、朝昼は紫外線の防御機能が働く。こうした朝の日光浴や、朝食の摂取により、体が日中モードにカチっと切り替わることで、お肌のリズムも整い、健康は肌へ導くことも可能になる。
目を酷使することによる「目のカサカサ」
目から情報を入れすぎることによって目が酷使されると「目のカサカサ」を引き起こす。五感を感じて外部情報を知覚する割合において視覚は8割以上と言われており、目からの情報量が多く目に負担があると脳の活動量も多くなるため、目のカサカサは脳疲労の要因にもなるという。また、目のカサカサ状態では、瞼を閉じても目が潤わずに乾燥していると感じることも。スマートフォンやテレビから発せられるブルーライトを浴び過ぎると、うまく眠りに入っていけない状態になり、睡眠を維持する力も低下する可能性がある。途中に起きてしまい眠れなくなる途中覚醒や起床時刻よりも早く起きる早朝覚醒や、朝の寝起きの悪さといった状態を引き起こすことも考えられる。
ホットアイマスクを使う人も多いが、心臓などを制御する副交感神経の末端は目には到達せず、耳に到達しているため、耳を温めることも効果的だという。日中など、メイクをしていて目を温めることができない場合は、指で耳をしごいたりまわしたりと血流を良くすることができる。
就寝時刻は、起床時刻から睡眠時間を考慮した上で設定できる。その時間軸を元に入浴などを計画的に行い、15分前にはスマホやテレビを見るのは控え、ベッドに入るようにするのがオススメだという。また、自分ならではの眠れる方法(頭皮マッサージ、ストレッチ、アロマ等)を3つくらい用意し、それを順番に行うことで、寝る前のリズムを体に覚えさせることも効果的。
日頃のストレスによる「心のカサカサ」
心がマイナスに動くと交感神経が刺激され、自律神経のバランスが乱れることにつながる。「心のカサカサ」はこの気持ちの乱れによって、ストレスを抱えている状態を指す。疲労が溜まっているとすぐに眠れるが、交感神経が刺激されている状態では深い眠りに入ることが難しくなり、睡眠の質の低下を招く。ストレス状態が悪い人は、更年期になってホルモンバランスが悪くなることで、さらにストレス状態が悪化し、体の不調にもつながるため、ストレスそのものを事前に防ぐこと、またストレスをなるべく軽減した状態で睡眠をとることが大切。
意識が散り散りになると、いろんなことが頭によぎるが、目の前にある1つのことに意識を向ける「マインドフルネス」の状態を作ることが重要だという。湯船につかる時や体を洗うときなど、ひとつひとつの動作に対して意識を注ぐと、その心地良さや香りなど、日頃は流れ作業になっていたことを五感で感じ、心を整えることに繋がる。
「思考を整理する」ことも大切。人々は頭の中で様々なことを考えてしまうが、考えることが多ければ多いほど、頭の中だけで整理はできない。そこで、ストレスを強く感じる場合、紙に書き出して思考の整理ができる。どのような対策を取るのが良いのかアウトプットをして、さらにそれをインプットすることで、思考を整理しながら心を整えていくことができる。