今回のテーマは雨。実は石川県は全国でダントツの雨県だ。1年間の降水時間を調べると、東京の1,633時間に対し石川県は2,301時間で日本一雨が多いのだ。年間降水日は177.3日で、約2日に一回雨が降っている。
 (21569)

石川県に行って金沢駅を出るともう雨!金沢の繁華街、片町にいた女子たちに聞いた。「マジで雨多いです」「雨降ってるのが普通」といきなり強い反応が!

女子高生たちにも聞くと「湿気が多くて髪の毛がもわ〜。マジ爆弾」と、湿気が多い生活を憂いている。

そしてあちこち聞いて回ると、多くの人が「弁当忘れても傘忘れるな」という言葉があると語ってくれた。

 (21579)

「天気が変わりやすいので弁当は忘れても傘は持って行った方が間違いないよ」という意味だそうだ。

「朝晴れていたので窓を開けて家を出たらバーっと雨が降って家に帰るとビシャビシャ」だから傘を忘れてはならない。

石川県では、なぜ頻繁に天気が変わるのか?

テレビ金沢の「なるほど週末天気」で県民にはお馴染みの気象予報士、小野和久さんによると「日本海一面に冬場発生するすじ状の雲があり、雲と雲の間に切れ間があります。この切れ間が通過するときに雨や雪が止んで晴れ間が出る。次に雲がやってきたらまた降り出す。」なるほど、だから天気が変わりやすいのか。「晴れの日が週間予報に1日あっても非常に嬉しくなります。」と小野さんはおっしゃる。

雨が多い最大のデメリットが「洗濯物が乾かない」ことだ。あるご家庭に行くと2畳ほどの空間に洗濯物がギチギチに干されている。この部屋は何ですか?ベランダに干さないの?「洗濯物部屋になります。ベランダはないです。」えー?ベランダないの?

「いつ雨が降るかと心配なので、外で干したことは一回もないです。」石川県では、除湿機全開の洗濯物部屋がスタンダードらしい。

 (21571)

雨が止んだので、金沢市を流れる犀川のほとりでデート中のカップルに聞いてみた。

「僕、晴れ男なんで晴れさせました。」ドヤ顔で晴れと彼氏さんは言うが、空はほとんど雲に覆われている。くもりではないのか?

「あそこに太陽がいる限り晴れです。」雲を透けて白く見える太陽を指して言う。

「雨さえ降ってなければ基本的に晴れです。」堂々と言ってのける彼氏さんだが、いやこれはくもりです。

そこで金沢の皆さんにくもり空の写真を見せると「晴れっすね」「間違いなく晴れ」と言ってのける。

青年たちは「大学東京やったんすけど、こんなに晴れるんや!と思いました。」「東京に行ったとき、電車の数の多さと晴れの多さにびっくりした。」と、東京の晴れに驚いたそうだ。

なにしろ石川県の快晴日数は年間たったの14日で残りは雨かくもり。晴れとくもりに差がないようだ。

それほど雨が降ることにも、メリットがある。

まず先ほどの片町の女子たちが言うのが、「肌が潤います。」「乾燥することない。」お肌にはいいらしい。実際、美肌県グランプリで石川県が日本一に輝いている。

 (21573)

また加賀友禅の呉服屋さんは「石川の工芸では湿度がとても大事な要素。」とおっしゃる。「加賀友禅も、くもった空の下で一番素敵に見える色になっている。だからちょっと抑えたグレイッシュ。」他の地域にはない、加賀友禅独特の美しさに、くもり空が関わっているのだ。

そして湿度がいつも70%前後なので、静電気が大敵の金箔工芸にとっていい環境。輪島塗で使う漆の乾燥にも最適だ。加賀の伝統工芸は雨の多い天気の賜物なのかもしれない。

 (21581)

そして雨の多さを嘆いていたように見えた人々も、実は雨を愛している。

片町の女子は「雨が降った後、空を見たら虹がかかっている。それを見て幸せになる。」とうっとりする。

晴れ男の彼氏さんも「雨は憎めない。石川は雨が似合う。夜の金沢城の前を車が通るライトで雨が照らされる光景が好き。」と言う。

子どもたちも「晴れが続くと、最近雨が降ってないなと寂しくなる。」「雨はいつも隣におる。雨は友達。」なんて言うからジーンとする。

 (21577)

雨はうざい。でも雨が多いことが加賀の文化や気風を生んだのなら、悪くないじゃない。石川県民は雨の民。なんだかうらやましくなってきたぞ!