サントリー白州蒸溜所(山梨県北杜市)の第2期リニューアルが9月に完了する。サントリーウイスキーのさらなる品質向上、そして蒸溜所の魅力訴求に向けた強化が図られたという。これにあわせて、自然と共生した”ものづくり”のこだわりや挑戦が感じられる新たな見学ツアー「白州蒸溜所ものづくりツアー プレステージ」も9月20日よりスタートする。その内容とは? 現地で取材してきた。
リニューアルで何が変わった?
サントリー白州蒸溜所は、南アルプス甲斐駒ヶ岳のふもとに1973年に竣工した蒸溜施設。昨年50周年を迎えた。今回のリニューアルでは、原料にもさらにこだわり、より高品質な原酒のつくり込みを目指す「フロアモルティング」と「酵母培養プロセス」が導入されている(後述参照)。
「白州蒸溜所ものづくりツアー プレステージ」は、これまで実施していた白州蒸溜所ものづくりツアープレミアム(2024年8月で終了)に代わるもの。シングルモルトウイスキー白州でつくる「森香るハイボール」や「サントリーシングルモルトウイスキー 白州12年」などをテイスティングできる。
ツアーは抽選申し込み制で、開催日は毎週月曜日と金曜日(年末年始・工場休業日を除く)。開催時間は11:30~13:40(所要時間130分)、定員は10名。スタッフの案内に従い、貯蔵庫、ものづくり棟、フロアモルティング、テイスティングルームなどをめぐる。参加費は10,000円。
貯蔵庫は、蒸溜されたばかりのニューポット(無色透明な原酒)を樽に詰めて長時間じっくり寝かせて熟成させる施設。ウイスキーの種類、目指す味わい、香味などにより、詰める樽の大きさ・形状・材質・庫内の保管位置などを変えているというから興味深い。ツアーでは、ここで特別な試飲体験が提供される。
ものづくり棟は、白州蒸溜所の歴史を感じられる施設。巨大なポットスチルを間近で見学しながら、プロジェクターの映像で白州ブランドについて詳しく知ることができる。
フロアモルティングの取り組みも見学できる。フロアモルティングとは、水分を含ませた大麦を床に広げてスコップなどで転拌して発芽させる、伝統的な製麦方法。多くの手間がかかるため、近代式の大規模な製麦方法と比較すると効率が良いとは言えないが、担当者は「つくり手が大麦と直接向き合うことで、今後、麦芽の質と最終的な味わいの関係が解き明かされるかも知れません」と説明する。
テイスティングルームは、窓の外に豊かな緑の大自然が感じられる落ち着いた空間。地元の食材を使った小料理と一緒に白州を楽しみたい。
サントリー ウイスキー部長の奈良匠氏は「サントリー白州蒸溜所および山崎蒸溜所(大阪府)では2023年より、合わせて100億円規模の投資を行ってまいりました。品質向上はもちろん、蒸溜所におけるお客様体験価値の向上も目指しています」と説明する。白州蒸溜所では2024年の来場者数として16万7,000人を見込んでいる。
続いて白州蒸溜所 工場長の中島俊治氏が、品質向上の取り組みについて具体的な内容を明かした。「サントリーウイスキーでは長期熟成を大切にしており、そのためニューポットの作り込みにこだわっています」と中島工場長。これまで仕込み、蒸溜、貯蔵、ブレンドなどのプロセスを中心に研究を重ねてきたが、これに加えて今後は、麦芽・酵母の品質向上に向けた研究にもより注力していく構え。「原料にまで踏み込んだチャレンジを行うことで、自然の恵みについてさらに理解を深め、より高品質な原酒づくりを実現します」と話す。
中島工場長は、フロアモルティングによるウイスキーづくりにも期待を寄せた。「これは私の主観ですが、従来の製麦方法と比べるとより香味のしっかりした、そして飲みごたえの感じられるニューポットになるのではないかと思います」と語る。
レストランもオープン
ちなみに9月1日より、白州の森と響きあうレストラン「Hakushu Terrace」(ハクシュウ テラス)もオープンとなる。ここではシングルモルトウイスキー白州や、地元の食材を使った食事などを提供する。なかでもイチオシのフードメニューは、山梨県産の食材をふんだんに用いて店内の石窯で焼き上げた「白州フォレストピザ」。
ドリンクメニューでは、森の若葉のような瑞々しい香りと軽快な味わいが魅力の「白州 森香るハイボール」、山梨県産の白桃果汁を組み合わせて甘く爽やかな白州ハイボールに仕上げた「白桃ハイボール」などが楽しめる。Hakushu Terraceは8月28日より、専用サイトにて予約を開始した。