何年も前から多くの日本人が「英会話」を学んでいます。実際に私も、駅前にある英会話学校の看板をしばしば目にします。就学前の子どもからリタイア後のシニアまで、いろいろな年齢層の人が英会話レッスンを受講し、旅行英会話からビジネス英会話などを学んでいます。このような英会話スクールに通う人たちの目的は、まさに「英語が話せる」です。
では、資格試験として日本で人気の「TOEIC」の学習は「英語が話せる」とは無関係なのでしょうか? そのようなことは決してありません。むしろ、TOEIC学習は、英語が話せることと密接な関係があります。今回は、英会話能力の向上になぜTOEICが役立つのかをお話しします。
理由1.日常生活のあらゆる場面の英語が使用されている
TOEICではビジネス英語だけと考えている方がいますが、少なくとも現在では、それは全くの誤りです。
厳密に言えば、TOEICが日本で実施され始めた1980年代頃は、ビジネスで用いられる表現や会話が中心でした。しかし、この20年ほどは、ビジネス関連も含まれていますが、日常生活におけるシチュエーションが圧倒的に多いです。
TOEICの問題は持ち帰りできませんので、実際に出題された問題の話はできませんが、公式問題集のリスニングパートを見てみても、「駐車車両の移動のお願い」「美術館での展示品の説明」「小売店でのクレジットカード決済導入」「レストランでの新料理長就任のお知らせ」など、日常生活のあらゆる場面が設定されています。
このことは、TOEICの英語学習において学んだ語句や表現が、そのまま実用英語として使用できることを意味します。私は特に、リスニングパートの音読と暗唱をおすすめしています。英会話能力の向上には良質な英文のインプットが必須です。このような学習には公式問題集を用いることがベストだと思います。
理由2. 4カ国の英語に触れることができる
はじめに、「英会話能力」という言葉を聞いたとき、多くの人は「話す」能力のことを考えがちです。しかし、実際の英語を用いた会話場面において、会話が続かないのは「話せない」のでなく、「聞きとれない」ために何を話せばいいのかわからず、会話が継続できないケースの方が多いはずです。
TOEICのリスニングパートでは4カ国(アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリス)のスピーカーが均等に採用されています。
このことにより、さまざまなアクセントに慣れることができ、実際の会話における理解力の向上が見込まれます。それぞれの国のスピーカーが満遍なく登場してくるため、自然に異なるアクセントや発音に触れることが可能になっているのです。
また、かつての日本の英語教育は、アメリカ英語の音声のみで行われていたため、他の国の英語に慣れていない方には特に有益です。
理由3. 英文そのものが実用的
学生時代に、"A whale is no less a mammal than a horse is."(クジラも馬と同じく哺乳類だ)という例文に心当たりのある方もいると思います。まさに、大学受験用参考書には必ずと言っていいほど掲載されていた例文です。このような例文を、暗唱したり筆写したりして、覚えた方も多くいると思います。
しかし、残念ながらこのような例文が、日常の英会話で使用されることはまずありえないでしょう。また、ネイティブと「哺乳類」の話をする確率も極めて低いと言えます。
一方、先ほどのTOEICでは以下のような表現が出てきます。
・I'm calling to reschedule my flight. (私の飛行機の日時を変更するためにお電話しています)
・Do you have your booking confirmation number? (お客様の予約確認番号はおわかりですか?)
・I'd like to buy this book. (この本を購入したいのですが)
・Sure, I'll ring you right up. (はい、すぐにお会計します)
どちらの文章が、より実用的で実践的かはすぐに理解できると思います。このような英文を用いた学習をすることで、効率的な英会話能力向上につながるはずです。