伊藤園お〜いお茶杯第66期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は予選が進行中。8月29日(木)には計4局が行われました。このうち東京・将棋会館で行われた第2ブロックの佐藤康光九段―中村太地八段戦は143手で佐藤九段が勝利。二転三転の終盤を乗り切り予選突破に向け好スタートを切りました。
王位戦予選の幕開け
本予選は20名程度からなるトーナメントを勝ち抜いた8名が挑戦者決定リーグに進むもの。両対局者は枠抜けまでに4連勝が必要です。振り駒が行われた本局は先手となった佐藤九段が雁木の作戦を披露。後手に飛車先の歩交換を許すのは6月の対羽生善治九段戦(順位戦B級1組)でも見せた趣向です。
対する後手の中村八段は左美濃囲いに自玉を収めて先攻を目指します。敵玉そばの端に手をつけたのが実戦的な迫り方で、相手の受けすぎに乗じて徐々にペースをつかむことに成功。両者秒読みが迫るなか、首尾よく敵陣に竜を作った中村八段が先手玉を寄せ切るのは時間の問題かと思われました。
二転三転の激戦
中村八段が銀取りの桂打ちで寄せを目指した局面で先手の佐藤九段も一気にギアチェンジ。金取りの桂打ちで迫ったのは、竜捨ての勝負手から後手玉を一気に詰ます狙いですが、中村八段もタダのところに桂を合駒する秘術で応じて詰みを免れます。佐藤九段が詰みを諦めてゲタを預けた局面が本局最後の勝負所でした。
反撃の手番を得た中村八段は歩成りから先手玉を詰ましにかかりますが、これが終盤の落とし穴。ここは先に竜捨てから入る盲点の寄せ方があり、結果的に先手玉は詰んでいた形でした。九死に一生を得た佐藤九段は再び冷静に寄せに着手。終局時刻は20時18分、最後は自玉の受けなしを見た中村八段が投了を告げました。
感想戦では竜捨てで迫った佐藤九段の勝負手に代えて、着実な王手で種駒を増やすのが安全な勝ち方とされました。二転三転の熱戦を制した佐藤九段は次戦で千田翔太八段―渡辺正和六段戦の勝者と対戦します。
水留啓(将棋情報局)