パッションフルーツの特徴とは?

パッションフルーツは南米原産のつる性の熱帯果樹で、明治時代中期に日本に持ち込まれました。その名前は、花の形が十字架に似ており、キリストの受難を連想させることから、「受難」を意味する「パッション」に由来しています。和名は「クダモノトケイソウ」で、花が時計の文字盤に似ているためこの名が付けられました。最近では、夏の節電対策としてグリーンカーテンとしても人気があり、花や果実も楽しめる植物として注目されています。

果実は甘酸っぱく、ゼリー状の半透明の仮種皮に包まれた種も食べられます。栄養面ではβ-カロテンやナイアシンが豊富で、健康にも良いとされています。パッションフルーツの品種は紫色と黄色、更にその交雑種に分かれます。紫色の品種は日本で主流ですが、耐暑性が弱いため熱帯地域では栽培されません。現在では、世界の熱帯から亜熱帯地域で広く栽培されており、ブラジルが最大の生産国となっています。

パッションフルーツの種類

食用のパッションフルーツは数十種類もありますが、ここでは国内でも手に入りやすく、人気のある品種を紹介します。

エドリス

日本でパッションフルーツといえばエドリスが一般的です。エドリスには赤紫系と黄色系の2種類があります。

エドリス赤紫の特徴

エドリス赤紫は、果皮が赤紫色で、生食向けの品種です。甘味が強く、芳醇な香りと酸味があります。果実の重さは100~200gで、甘味に比べて酸味が強いですが、皮の表面がシワになるまで追熟すると甘味が増します。種も食べられるため、そのまま楽しむことができます。

エドリス黄の特徴

エドリス黄は、果皮が黄緑に近い黄色で、生食向けの品種です。甘味が強く、芳醇(ほうじゅん)な香りと酸味があります。果実の重さは120~140gで、大きさや形がそろいやすく、品質が安定しています。エドゥリス赤紫と同様に、酸味が強いですが、皮の表面がシワになるまで追熟すると甘味が増します。種も食べられるため、そのまま楽しむことができます。

ルビースター

ルビースターは、芳醇(ほうじゅん)な香りと強い酸味が特徴のパッションフルーツです。甘みよりも酸味が強く出るため、生で食べるよりもジャムやシャーベットに加工するのがおすすめです。更に、お酒で割って楽しむのにも適しています。

ミズレモン

ミズレモンは、果実がレモンに似ていることからその名が付けられました。黄色く熟した果実は非常に甘く、酸味はほとんどありません。つぶつぶの種ごと食べられるため、果実全体を楽しむことができます。更に、トケイソウ特有のエキゾチックな花も美しい見た目と芳香(ほうじゅん)で楽しめる魅力的な植物です。

パッションフルーツの栽培暦

植え付け時期 5月上旬
収穫 9~10月
追肥 6月下旬
植え替え 3月下旬~4月中旬

関東地方を例にしたパッションフルーツの栽培スケジュールを紹介します。植え付けは5月上旬に行い、収穫は9月から10月にかけて楽しめます。追肥は6月下旬に施します。

パッションフルーツの植え付け

パッションフルーツの植え付けについて説明します。
パッションフルーツは国内では鹿児島県や沖縄県、小笠原島や大島など温暖な地域で盛んに栽培されているフルーツです。そのため、地域によっては栽培に向かないところもあるため、あくまで参考としてください。

植え付け時期

パッションフルーツの植え付け時期は5月上旬が最適です。露地栽培を行う際は、できるだけ大きな苗を使用することが重要です。特にグリーンカーテンとして仕立てる場合、植え付け時の苗の大きさが成長に大きく影響します。しっかりとした苗を選び、適切な時期に植え付けることで、元気に育ちます。

プランターの場合

◯プランター栽培に必要なもの

・パッションフルーツの苗(なるべく大きく、葉が青々したもの)
・植木鉢またはプランター(直径30センチ以上あるもの)
・野菜用の培養土
・鉢底ネット
・鉢底石
・支柱、誘引用の麻紐

◯植え付け方法

1.植木鉢に、鉢底ネットを敷き、鉢底石を設置します。
2.培養土を7分くらいまで入れます。
3.鉢を揺らして土をならします。
4.植え付け穴を作り、苗を植え付けます。苗は鉢・プランター1つにつき1株です。
5.支柱をあんどん仕立てで立てます。グリーンカーテンにする場合はあんどん仕立てにはせず、支柱と支柱の間にネットを通して仕立てましょう。
5.たっぷり水やりをします。

◯プランター栽培の注意点

鉢は通気性の良い素焼きのものを使い、用土には排水性の良いものを選びましょう。

また、鉢やプランターを置くときは、すのこやブロックなどの上に置き、通気性を確保しましょう。エアコンの室外機などの近くには置かないようにしてください。

地植えの場合

◯地植えに必要なもの

・パッションフルーツの苗(なるべく大きく、葉が青々したもの)
・堆肥
・肥料(8-8-8が良いが、緩効性肥料やボカシ肥料でも良い)

◯植え付け方法

1.植え付けの2週間前に土作りを行います。堆肥を1株当たり10キログラム、元肥を1株当たり150グラム入れてしっかり土作りを行っておきましょう。
2.畝を立てます。畝幅は80センチにします。排水性の高い土を好むので、やや高畝にすると良いでしょう。
3.植え穴を掘って苗を植え付けます。株間・畝間共に2メートルは取りましょう。
4.たっぷり水やりをします。
5.株元に敷きわらなどを敷いて、乾燥対策と保温、雨の跳ね返り対策を行うと良いでしょう。

栽培管理について

パッションフルーツは育てやすいといわれますが、しっかり手入れを行うとなかなか大変です。家庭菜園やグリーンカーテンとして楽しむ分には、気にしすぎず、できることをしっかりやるくらいに考えるとストレスなく栽培を楽しめるでしょう。

水やり

◯プランターの場合

土の表面が乾いたらたっぷりと水をやります。株の生育が旺盛な時期は1日に2回水やりしましょう。枝葉が大きく展開したら一旦水やりを控えめにし、果実が付いたらまた1日2回水やりをします。

◯地植えの場合

地植えの場合も水やりが必要です。土の表面が乾いていたら、水やりしましょう。また、夏や生育旺盛な時期は朝夕の2回水やりをすると良いでしょう。こちらも枝葉が大きく展開したら一旦水やりを控えめにし、果実が付いたらまた1日に2回水やりしましょう。

支柱・誘引

農業の現場では、逆L字仕立てといった、直立に伸ばして大きく育てる誘引方法がよく用いられますが、広いスペースやこまめな手入れが必要になります。
家庭菜園では、市販の支柱セットを使ったあんどん仕立てや、シンプルにネットを使ったグリーンカーテンとするのが良いでしょう。
あんどん仕立ての場合は主幹を伸ばした後はリングを使って誘引していけば良いですが、グリーンカーテンにする場合は少し手間が掛かります。やり方としては、主幹を一本立ちさせ、地表から30センチぐらいの高さで左右に枝を伸ばし、そこから側枝やつるをネットに誘引させて広く育てます。

肥料

元肥として、チッソ・リン・カリウムの比率が8:8:8で配合されている肥料を1株当たり150グラム施しましょう。
追肥としては、ボカシ肥料を75グラム施します。
なお、生育初期はチッソ肥料を、生育途中はリン酸肥料を多めに施すのがポイントです。

植え替え

3月下旬~4月中旬に植え替えを行います。パッションフルーツは毎年植え替えを行う必要はなく、数年に1度様子を見ながら植え替えれば良いでしょう。
植え替えの際は、一回り大きな鉢に植え替えます。

剪定

家庭菜園におけるパッションフルーツは、収穫するまであまり剪定をしないのが一般的です。どうしても茂りすぎて混み合ってしまった部分だけ若干取り除くくらいに留めておきましょう。

収穫後は、その年に実をつけた側枝やつるを切り落としたり、伸びすぎた主幹を整理します。ただ、九州以北の地域では冬の気温が低く、露地のパッションフルーツは越冬できません。その場合は剪定する意味がないので、翌年に向けて畑の整理を行いましょう。

鉢植えの場合、冬越しの剪定としてパッションフルーツ全体の高さを低くします。そうすることで暖かい屋内に鉢を移し、冬を越すことができます。

人工授粉

パッションフルーツは人工授粉して実を付けます。5月から2カ月ほどの間に花が咲き続けますが、花は一日花で、その日のうちに枯れてしまいます。開花後、花を見つけたらその日のうちに人工授粉を行うことが重要です。

人工授粉の方法は、雄しべについた大量の花粉を、3本の雌しべの先端に付けます。筆や指を使って行いますが、授粉後3〜4時間以内に雨が降る場合は避けてください。

授粉が成功すると、翌日には子房が緑色になりツヤを帯びます。失敗した場合はツヤがなく黄色味を帯びます。成功した花は、その後、3カ月ほどで収穫できます。授粉がうまくいかない花柄は2〜3日以内に摘み取ってください。
多くの果実が付きすぎると実が小さくなるため、一枝に5個程度を残し、あとは摘果してください。

収穫

パッションフルーツの収穫は、果実がある程度熟し、持ち上げたときに簡単に取れる状態になったら行います。自然に落ち始めたら収穫のサインですが、果実袋を事前に掛けておくと、地面に落とさずに収穫できます。

収穫した果実は、風通しの良い場所で追熟させます。追熟することで、余計な水分が抜け果実にシワができ、甘みが増します。パッションフルーツは生食の他、ジュースやデザート、サラダに使うことができます。

増やし方

収穫後の枝や、実を付けないで育てている枝を使って挿し木を行います。これらの枝は元気が良く、成功率が高いです。葉の色が濃い部分を挿し木当日に切り取り、枝の先端や基部は使用しないようにします。

上の方の葉は蒸発を防ぐために1/3ほど切り取り、他の葉や脇芽も元から切り落とします。また、巻きひげも見つけたら取り除きます。枝の下端はくさび形になるように斜めに切ります。

排水穴が多い容器に挿し穂がしっかり立つように土を入れ、たっぷりと水をやります。挿し穂はまっすぐでも斜めでも構いません。市販の挿し木用土を使わない場合は、割り箸で穴を開けてから挿します。

挿し木は、直射日光や雨、風が直接当たらない明るい日陰で管理し、発根に適した温度は25度くらいです。挿し木の容器は通気性の良い台の上に置き、水はけを良くすることも大切です。

気を付けたい病害虫

立枯病

立枯病は土壌にいる病原菌によって引き起こされ、植物の根や茎が腐ってしまいます。被害が進むと、葉が黄ばみ、やがて植物全体が枯れてしまいます。

予防としては清潔な土壌を使用し、適切な排水を確保することが重要。被害が確認された場合は、速やかに被害を受けた植物を取り除き、周囲の土壌を消毒しましょう。

アブラムシ

アブラムシは小さな昆虫で、植物の汁を吸い取ります。葉や新芽に集まり、植物の成長を妨げます。また、アブラムシが分泌する甘露は、カビの発生を引き起こします。
アブラムシを発見した場合は水で洗い流すか、殺虫剤を使用して駆除します。天敵であるテントウムシを利用することも効果的です。

ハダニ

ハダニは非常に小さな虫で、葉の裏側に住み、葉の汁を吸います。被害が進むと、葉が黄色くなり、やがて落ちてしまいます。

ハダニは水で洗い流すことができ、湿度を高く保つことで予防できます。発見した場合は適切な殺虫剤を使用して駆除すると良いでしょう。

カイガラムシ

カイガラムシは硬い殻を持つ虫で、茎や葉に付着し、植物の汁を吸います。被害が進むと、植物の成長が阻害され、弱ってしまいます。

カイガラムシを発見した場合は手で取り除くか、ブラシを使って削り取ります。殺虫剤を使用することも有効ですが、薬剤が届きにくいため、確実に塗布することが重要です。

適切な管理と観察がカギ

パッションフルーツの栽培は、適切な管理と注意深い観察が重要です。栽培スケジュールを守り、水やりと施肥、誘引と人工授粉などの大切な作業をしっかり行いましょう。また立枯病やアブラムシ、ハダニ、カイガラムシの対策を怠らず、適切な環境で育てることが大切です。これらのポイントを押さえて、おいしいパッションフルーツを楽しみましょう。