牛丼チェーン「吉野家」を展開する吉野家ホールディングスが新事業に乗り出す。「オーストリッチミート(=ダチョウ肉)」を使った新メニューを発売すると同時に、オーストリッチミートが持つ美容成分などに着目したスキンケア商品も子会社を通して展開するという。
代表取締役社長の河村泰貴氏は8月28日に開催された事業発表会の中で、「我々のミッションは、人も地球もウェルネスになれる選択肢のひとつとして、オーストリッチを定着させることだ」と意気込みを語った。
▼「環境に優しい動物」ダチョウの肉を商品化!
創業から125年、チェーン展開開始から56年を数える吉野家だが、その長い歴史は「牛肉をめぐる情勢に左右され続けた歴史でもあった」と河村氏は語る。実際、BSEが世界的に問題視された2003年には牛丼の提供停止を余儀なくされるなどしてきた。
「牛丼の品質を守りながら、事業を持続的に成長させるにはどんなリスク分散が必要かを考える必要があった。こうした課題は2000年代前半から感じていて、そこで出会ったのがダチョウの肉、オーストリッチミート。牛肉の赤身にも似た味で非常に美味しかったし、それでいて飼料効率が高いということで興味を持った」
さらに、2012年に代表取締役社長に就任して以降は、「企業化(チェーン化)された飲食業の社会的役割」について常に考えるようになったとし、「食べておいしいだけでなく、身体にもうれしい健康な食事、そしてエビデンスに裏付けられた健康の追求、こういった取り組みを深化させることが企業化された飲食業である私たちの使命だ」と結論付けたという。
2017年にはオーストリッチの自社牧場の経営をスタートして機能研究を本格化。生産、飼育、研究を一気通貫で行うなかで、オーストリッチミートは低脂肪・高タンパクでビタミンや鉄分、抗疲労成分のイミダゾールジペプチドも豊富に含む健康的な食材であること、さらには脂から抽出できるオイルには美肌成分の浸透促進効果があることもわかったという。
その結果として今回、吉野家では新商品「オーストリッチ丼~スープ添え」を新たに販売し、100%子会社の「SPEEDIA」ではスキンケア商品を展開するに至った。河村氏は「これはまだキックオフに過ぎない。我々のミッションは人も地球もウェルネスになれる選択肢のひとつとしてオーストリッチを定着させること。持続可能な未来に向けて、人も地球も健康で豊かにする選択肢になることを願ってやまない」と訴えた。
実際にオーストリッチ丼を試食してみると、確かに牛の赤身肉を彷彿させる味わいで、癖や臭みなどはほぼ感じない。山ワサビが効いたローストビーフ風の味付けになっているので、何も知らされずに食べたらダチョウ肉とは気づかず、いつものローストビーフを食べていると思い込んでしまうかもしれない。
この日の発表会には獣医師・獣医学博士で京都府立大学の学長でもある塚本康浩氏、吉野家ホールディングス執行役員で農学博士の辻智子氏も登壇した。
ダチョウ研究の第一人者として知られる塚本氏は、ダチョウは地球上で一番大きな鳥でありながら必要とする飼料は肉用牛の4分の1であること、排泄物によって排出するメタンガスが少ないことなどから「環境に優しい動物」だと説明。
一方、ダチョウは非常に飼いにくく、家畜向きではないため、これまでは食用肉としての流通経路は確立されていなかったと指摘。「(吉野家ホールディングスは)短期間で純日本産のダチョウ肉を提供できるところまで持っていった。これは素晴らしいことで、これから楽しみだ」と期待を寄せた。
吉野家ホールディングスでオーストリッチ研究の任にあたっている辻氏は、「オーストリッチの腹脂、背脂から抽出して高度精製したオイルはパルミチン酸、オレイン酸、リノール酸の3つの成分だけで80%以上を占めている。これが人の皮脂の組成と非常によく似ている」と主張する。
▼オーストリッチオイルを用いたスキンケア商品の展開も
さらに、美容成分の浸透を助ける効果もあると紹介し、「オーストリッチオイルを塗ったあとの細胞への浸透率はビタミンCで1.7倍、ナイアシンアミドで23倍」という実験結果を提示。オーストリッチオイルを配合したSPEEDIAの製品「グラマラスブースターオイル」などの有効性を訴えた。
SPEEDIAのアンバサダーに起用されたフリーアナウンサーで俳優の宇垣美里さんも挨拶に立ち、グラマラスブースターオイルの使用感について「すっと浸透するし、肌が柔らかくなるのがすぐに実感できるのもおすすめのポイント」と声を弾ませた。そのうえで、「すごくいい香りで、肌に載せた瞬間にウットリする」「普段使っている化粧水がいつも以上に浸透していくように感じたし、化粧水の効果もより感じさせてくれるようになった気がする」と感想を述べた。