東京商工リサーチは8月27日、「企業のカスタマーハラスメント」に関するアンケート調査の結果を発表した。調査は2024年8月1日~13日、5,748社を対象にインターネットで行われた。
直近1年間でカスタマーハラスメントを受けたことが「ある」企業は約2割
直近1年間でカスタマーハラスメントを受けたことが「ある」と回答した企業が19.1%(5,748社中、1,103社)と約2割に達した。5社に1社が「カスハラ」を受けている。一方、「ない」との回答は80.8%(4,645社)だった。規模別では、受けたことが「ある」との回答は、大企業が26.1%(567社中、148社)、中小企業は18.4%(5,181社中、955社)で、大企業が7.7ポイント高かった。大企業ほど「カスハラ」を受けていることがわかった。一方、「ない」は大企業が73.9%(419社)、中小企業が81.5%(4,226社)だった。大企業ほど取引先、顧客が多く、クレームに接する機会が多いことが背景にあるようだ。
カスハラを受けた経験がある企業の業種、「宿泊業」がトップ
「カスハラ」を受けた経験がある企業の業種別(母数10社以上)は、宿泊業が72.0%(25社中、18社)でトップ。宿泊客とのトラブルなどで「カスハラ」を受けるケースが多いようだ。次いで、「飲食店」の64.8%(37社中、24社)、タクシーやバスなど「道路旅客運送業」の55.5%(18社中、10社)が続く。個人客と接することが多いサービス業や小売業が上位を占めた。
「休職や退職が発生」企業13.5%
「カスハラ」を受けたことがある企業から回答を得た。その結果、「休職が発生した」が4.3%(1,040社中、45社)、「退職が発生した」が5.3%(56社)、「休職と退職が発生した」が3.8%(40社)で、「休職や退職が発生した」は合計13.5%(計141社)と1割超に及び、企業の10社に1社がカスハラによる休職や退職を経験していることがわかった。規模別では、「休職や退職が発生した」は大企業が17.4%(132社中、23社)、中小企業が12.9%(908社中、118社)で、大企業が4.5ポイント高かった。一方、「退職や休職には至らなかった」は、全企業で86.4%(899社)、大企業は82.5%(109社)、中小企業は87.0%(790社)だった。
休職・退職が発生した企業の業種、「窯業・土石製品製造業」が5割
「休職や退職が発生した」と回答した企業の業種別(母数5社以上)は、最大が「窯業・土石製品製造業」の50.0%(6社中、3社)だった。次いで、「道路旅客運送業」(10社中、4社)、「化学工業」(5社中、2社)の各40.0%、「各種商品小売業」の33.3%(6社中、2社)、「不動産取引業」の26.08%(23社中、6社)と続く。「カスハラ」による休職や退職は、幅広い業種に広がっている。
カスハラの内容「口調が攻撃的・威圧的」が73.1%
「カスハラ」の内容について尋ねた。最多は「口調が攻撃的・威圧的だった」が73.1%(1,047社中、766社)だった。次いで、「長時間(期間)にわたって対応を余儀なくされた」が50.1%(525社)、「大きな声を上げられた」が38.9%(408社)、「一方的に話し続けられた」が37.5%(393社)、「過度に謝罪を要求された」が24.5%(257社)、「自社担当者の人格否定 があった」が24.0%(252社)と続く。一方、少なかった回答では、「暴力を振るわれた」が2.1%(22社)、「録画・録音された」が3.3%(35社)など。クレーマーも露骨なコンプライアンス違反は避ける傾向が見えてくる。規模別では、「口調が攻撃的・威圧的」は大企業が72.6%(139社中、101社)、中小企業が73.2%(908社中、665社)で大きな差はなかった。一方、「長時間(期間)にわたって対応を余儀なくされた」は大企業が59.7%(83社)、中小企業は48.6%(442社)で大企業が11.1ポイント高かった。
「対策は講じていない」が7割超
「カスハラ」への対策は、「特に対策は講じていない」が71.5%(5,651社中、4,041社)と7割超が対策を講じていなかった。現場の社員に対応を任せ、会社として組織的な対策は広がっていない。一方、講じた対策のうち最も多かったのは、「従業員向けの研修を行った」が12.4%(701社)、「従業員向けの相談窓口を設置した」が8.7%(496社)、「カスタマーハラスメントの対応方針(に類するものを含む)を策定した」が6.3%(359社)など。
規模別では、「特に対策を講じていない」は大企業が54.4%(569社中、310社)、中小企業が73.4%(5,082社中、3,731社)と中小企業は大企業より19.0ポイント高かった。また、従業員向けの「研修」実施は大企業24.0%(137社)、中小企業11.0%(564社)、「相談窓口の設置」は大企業18.8%(107社)、中小企業7.6%(389社)で、いずれも中小企業は大企業より10ポイント以上低いが、大企業でも対策は進んでいない。