帝国データバンクは8月26日、「東京都の猛暑が家計支出に与える影響調査(2024年)」を発表した。2024年7月および8月の東京における猛暑による家計消費支出の試算は、「家計調査」「国勢調査」(いずれも総務省)、地点気象データ(気象庁)、「日本の世帯数の将来推計」(国立社会保障・人口問題研究所)の統計資料等を用いて算出。本調査における家計消費支出への影響は、東京都内に居住している世帯による支出額への影響を対象に試算した。
2024年の夏は、平均気温が過去最高を更新する見込みとなっている。気象庁によると、東京都における2024年7月の最高気温は平均33.5℃で、平年値(1991年から2020年の30年間の平均値)より3.6℃高かった。さらに8月は同33.4℃と平年より2.1℃高くなると見込まれる(気象庁による8月22日14時30分発表の2週間気温予報を含む)。また、東京都では7月と8月の猛暑日が合計19日に及んでいる。
平均気温の上昇は家計における消費支出に加えて、企業の売り上げ動向にも影響を及ぼす。猛暑による天候不順に台風、ゲリラ豪雨とも相まって、農作物の生育状況とともに、夏物商材の販売や屋外レジャーなどにも影響する。そこで同社は、猛暑が東京の家計消費支出に与える影響について分析した。
東京の家計消費、猛暑により約390億円増加と試算
2024年夏の猛暑が家計消費支出に与える影響を試算した結果、平均最高気温が平年通りだった場合と比較すると、東京の家計消費支出は約390億6,300万円増加する可能性があることがわかった。
支出項目別にみると、「食料」は、主食となる穀類や魚介類への支出が大きく減少した一方で、弁当など火を使わない調理食品は増加した。また、飲料は、炭酸飲料(約14億円増)や茶飲料(約11億円増)、発泡酒等(約9億円増)、ビール(約7億円増)などを含め、大幅に増加した。さらに、アイスクリーム・シャーベットなどが大幅に増加した菓子類など、「食料」は約149億3,700万円の増加となった。「家具・家事用品」はエアコンなどの冷房器具への支出が増加したほか、「保健医療」は熱中症対策など医療サービスを中心に支出が増加したと見込まれる。また、宿泊料を含む「教養娯楽」が約100億7,900万円増加したとみられる。
なお、世帯当たりの消費支出額では、7月に2,621円、8月に3,623円の増加が見込まれ、平均すると猛暑により今夏は月平均3,122円の支出増と試算される。
東京都内企業の主なコメント(TDB傾向動向調査2024年7月調査より)
東京都内企業からは、プラスのコメントとして「猛暑過ぎるため夏に洋服が売れないが、その分、服飾雑貨の購入マインドが増えてジュエリー・アクセサリー市場は堅調に売り上げを伸ばしている」(貴金属製品小売)、「夏休み期間でもあり旅行需要の高まりを感じる」(一般旅行)といった声が。「対策はしているが暑すぎて仕事の効率がかなり落ちている」(建設)、「熱中症や大気が不安定なことによる豪雨は取引先となる小売業にとってマイナスであり、厳しい状況が見込まれている」(包装用品卸売)といったマイナスのコメントも寄せられている。
9月も気温は高め傾向で推移予想、家計の購買行動変化に注視
東京都の気温上昇による家計消費支出への影響を分析した結果、猛暑により東京の家計消費支出は飲料や冷菓、冷房器具、旅行などを中心に約390億円増加したとみられることがわかった。食品など生活必需品の値上げはやや沈静化の兆しがみられるものの、エネルギー価格の高騰は続いていた。8月には政府による電気・ガス代への補助金が再開されたが、2年あまり続いた実質賃金の低迷は家計の購買力を奪い、節約志向を強める要因となった。
こうしたなか、2024年は大企業から中小企業への波及がみられた賃上げやボーナスの増加などもあり、個人消費の押し上げが期待される。気温は9月以降も高めで推移するとみられており、猛暑による家計の購買行動の変化が今後、企業にどのような影響をもたらすか、より長期的な視野で注視していく必要があるという。