第18回朝日杯将棋オープン戦(主催:朝日新聞社・日本将棋連盟)は一次予選が進行中。8月27日(火)には伊藤匠叡王―高橋道雄九段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、矢倉対左美濃の競り合いから抜け出した伊藤叡王が84手で勝利。二次予選進出まであと2勝としています。
新旧対抗の矢倉対左美濃
本一次予選はそれぞれ10名からなる16個のトーナメントを勝ち抜いた16名が二次予選に進むもの。棋戦優勝までを合計すると9〜10連勝が求められる、長い戦いの幕開けです。振り駒が行われた本局は先手となった高橋九段が矢倉を志向。角道を止めての重厚な構えはかつてタイトル5期獲得の原動力となった得意戦法です。
高橋九段の作戦選択を受けた後手の伊藤叡王は現代的な急戦策で迎え撃つことを決意します。左美濃の低い陣形と右四間飛車から繰り出す鋭い攻めの組み合わせはここ10年ほどですっかり市民権を得た攻撃力ある布陣。盤上は伊藤叡王が6筋の銀交換から仕掛ける形で動き出しました。
急転直下の結末
戦いは一段落を迎えて第二次駒組みへ。持ち時間40分の早指し棋戦なだけあって、中盤戦たけなわの局面から始まる一分将棋での指し手に反射神経が求められます。伊藤叡王に好手が出たのは高橋九段が秒読みに入ったすぐあとのことでした。銀ぶつけによる金取りにかまわず角を飛び出して交換を迫ったのが読みの入った対応。
激しい駒の取り合いが一段落してみると駒割は伊藤叡王の金銀得。終局時刻は11時36分、この駒損を重く見た高橋九段の投了によって伊藤叡王の初戦突破が決まりました。高橋九段としては中盤の競り合いの局面での見損じに泣かされた格好です。勝った伊藤叡王は次戦で行方尚史九段と対戦します。
水留啓(将棋情報局)