第83期順位戦A級(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は3回戦が進行中。8月23日(金)には菅井竜也八段―千田翔太八段の一戦が関西将棋会館で行われました。対局の結果、怒涛の攻め手で菅井流振り飛車を攻略した千田八段が125手で勝利、今期2勝目で白星先行としています。
飛車が主役の序中盤
菅井八段0勝2敗、千田八段1勝1敗で迎えた一局。後手となった菅井八段はダイレクト向かい飛車の態度を表明します。中央の歩を早めに突いたのは居飛車からの両成りの角打ちを防ぐ意味合いですが、「角交換に5筋を突くな」の格言に反するため、まとめるには技術が求められます。
菅井流の力戦志向を見た先手の千田八段はここからユニークな指し回しを披露します。地下鉄飛車の要領で飛車を遠く左辺に回ったのは、後手陣の金銀を分裂させるための高度なテクニック。首尾よく9筋の香交換に出た局面は後手の飛車を遊び駒にすることに成功しており、千田八段の好調を思わせました。
急転直下の端攻め決着
うまく戦機を捉えた千田八段ですがその後の構想に苦心します。飛車角両方を切り飛ばして寄せに向かったのは、やむを得ないとはいえリスキーな攻め方。孤立した後手玉ですが丁寧に面倒を見られてみるとあと一歩の決め手がありません。指し手の苦労を物語るように、ひと足先に千田八段が一分将棋に突入しました。
夜戦に入るとともに局面もねじり合いに突入。それでも形勢不明の押し引きを抜け出したのは千田八段のほうでした。9筋への合わせの歩で敵玉の直接攻略に乗り出したのが勝因で、数手後に上下からの挟撃を狙う角打ちが待っていては勝負ありです。終局時刻は翌24日0時21分、最後は形勢差を認めた菅井八段が投了。
菅井八段としては受けに回る時間が長くなる中で先手からの攻め筋への応手で読み抜けが生じた形に。これで勝った千田八段は2勝1敗と白星先行、敗れた菅井八段は0勝3敗の苦しい星取りとなりました。
水留啓(将棋情報局)