8月24日に正式リリースされたヒーローシューター『CONCORD』。Sony Interactive Entertainment(以下、SIE)が独自に送る新規IPタイトルで、各所で精力的に配信されているWeb CMを目にしたゲーマーも多いはずです。
今回SIEから『CONCORD(デジタルデラックスエディション)』の提供を受けたので、正式リリースに先駆けて行われたアーリーアクセスに参加しました。そこでこの記事では、日頃からFPSゲームに親しみ過ぎている筆者が『CONCORD』の楽しかったところと、気になったところについてお伝えしようと思います。個人的にはやはりどうしても、4,480円という価格がプレイヤーの参入障壁になってしまうような気がしてなりません。
キャラクターは超豊富、個性が戦場を駆けるヒーローシューター
『CONCORD』自体の説明はあまり難しくなく、多様なキャラクターを選択して戦場に身を投じていくタイプの、いわゆるPvPヒーローシューターです。アーリーアクセスでプレイできたキャラクター(ゲーム内では“フリーガンナー”と呼称)は16人。リリース初期としてはかなり豊富な選択肢が用意されていて好感触です。
開発者はSIE公式ブログで、「有料拡張コンテンツやバトルパスで制限されることなく、初日からすべてのコアコンテンツを楽しめる完全な体験にしたいと考えていました」と述べ、シーズンごとに無料で新規キャラクターの追加を予定しているとのこと。新キャラをプレイするためにバトルパスを埋めたり、ゲーム内通貨を使う必要はないようです。
各キャラクターはそれぞれアンカー、ブリーチャー、ハウント、レンジャー、タクティシャン、ワーデンというロールが割り当てられており、対応するボーナス(バフ)が付与されている模様。この手のゲームとしては珍しく、純粋なヒーラーが存在していない点が目新しく感じました。
今回しばらくアーリーアクセスをプレイしてみて、「ロカ」なるハウントのキャラクターが非常に気に入りました。ミサイルランチャーとジャンプスーツを装備した人物で、高い機動力と圧倒的な火力を両立しています。空を飛びつつ軽快に移動でき、多少適当に撃っても爆風でダメージを与えられるミサイルランチャーの使用感はかなり素晴らしかったです。
ここだけの話、ロカは自分が使う分には楽しいですが、どこかのタイミングで弱体化が入るであろうレベルで強力でした。ミサイルの火力がかなり高いのに連射速度もだいぶ速く、しかもロックオン機能で遠距離の敵にもダメージを与えられます。タンク系キャラもミサイルの集中砲火でさくっと削り切れる上、低HPのDPSキャラはほとんど相手になりませんでした。ホバリング状態から高速で落下する「ブラストダイブ」も離脱技としてかなり強力で、隙がほぼない印象です。
ちなみにゲームモードはテイクダウン(チームデスマッチのこと)とトロフィーハント(キルコンファームドのこと)から選択される「ブロール」、エリア・コントロール(ドミネーションのこと)とシグナル・チェイス(エスコートのこと)から選択される「オーバーラン」が用意されています。ヒーローシューターとしては珍しくチームデスマッチがあるので、どんどん撃ちあってキャラクターについて知ることができそうだと思いました。
グラフィックス設定においては、昨今のGPU向け最新機能をしっかりカバーしている点がとても好感触。筆者はNVIDIA GeForce RTX環境でゲームを遊んでいるので、NVIDIA DLSS フレーム生成とNVIDIA Reflexで最適化したリッチなプレイ体験が得られました。AMD Radeon環境ではAMD FSR 3、FSR フレーム生成をサポートしており、AMD派のゲーマーも最新機能を利用可能です。
ただ、描画負荷は高いグラフィックの品質相応に大きめなので、高リフレッシュレートでの高いパフォーマンスには十分強力な構成で臨んだ方がベターだと感じました。
気になったところ
今回『CONCORD』をプレイしていて……プレイしようとしてまず行ったのは、PlayStation Networkへのサインインです。昨今SIEは精力的にWindows向けの展開も行っており、PlayStation Networkアカウントでのサインインでアチーブメントの同期機能を利用できることもあります。
『CONCORD』はSIE独自タイトルなので、PlayStation Networkへのサインインが求められても不自然ではありませんが、CONCORD内で表示されるスクリーンネームをPlayStation Networkアカウントから転用してしまう仕様には少し抵抗がありました。これは自分で設定させてくれてもいいんじゃないかな、というのが普段Windowsでゲームをしている筆者の気持ちです。
次いで数分のシネマティックが再生されるのですが、正直これはやや冗長だと感じました。対戦ゲームにおいてキャラクターの設定や背景はプレイヤーの関心を引くものですが、プレイが先、ストーリーテリングは後じゃないかなと。ムービー自体はとんでもなく高いクオリティなのによくわからない話からゲームが始まってしまうので、個人的には空回りしている印象が先行してしまいました。
宇宙を舞台にした多種多様なキャラクターたちのお話に親しむには、まずゲーム部分に触れたいところ。またはPvEベースのキャンペーンモードがあっても楽しめそうです。
ゲームプレイ面においてはなかなか楽しめましたが、キャラの移動速度がマップの広さと見合っていないのか、スピード感はあまり感じられませんでした。高くて上りにくい壁や段差、オブジェクトもちらほらあり、飛んだり跳ねたりできないキャラクターはそもそも移動がやや大変。上述したお気に入りのロカはジャンプスーツのパッシブ飛翔アビリティでびゅんびゅん移動できたので、マップに適応しているという点でも強力だったように感じます。
そのキャラクターに関しては、ゼロベースの独自IPで出発していく決断と勇気には感銘を受けましたが、同カテゴリの他社ライブサービスと競合していく困難は生半可なものではないように思います。造形からは多様性への強いコミットメントを感じますが、正直なところ、わかりやすい「格好よさ」「かわいさ」のようなキャッチーさに欠けていると思います。
『オーバーウォッチ2』のような大勢力や、UbisoftのIPが一堂に会している『エックスディファイアント』、世界最強のIPを引っ提げて参入予定の『Marvel Rivals』など、にわかにレッドオーシャンになりつつあるヒーローシューター市場はかなり過酷な環境。CONCORDにも「このキャラ使ってみたい!」とプレイヤーに思わせる必要がある気がします。
最後に、筆者がこのゲームにおいて最大の障害になると感じているのは、4,480円という決して低くはない価格設定です。おそらく本当はフルプライスに設定したいところ、大出血覚悟でこの価格にしたと思われますが、競合するヒーローシューターの大半はFree to Play(基本プレイ無料)です。いま無料で楽しくゲームを遊べているのに、お金を出して別ゲーに移行する……コストの大きさは並大抵のものではありません。
開発者の方が「開発に8年かかった」と言及していることや、ゲームそのものの高いクオリティ、キャラクターの豊富なバリエーションからかなりの開発費がかかっていることは想像に難くありませんが、にしてもこの価格はプレイヤー数を成長させていくにはネックになるはず。
今回のアーリーアクセスでは粗削りな部分もありながら楽しめたので、正式リリースされればいつもFPSゲームを遊ぶ友人を誘って一緒にプレイしてみたいなと思いましたが、友人に支出させるにも自分が払ってあげるにしても、決してすんなりいく価格ではありません。高くても2,000円前後が限度で、本音を言えば基本プレイ無料じゃないと「新作FPSゲームならまず触ってみる」勢の取り込みにすら失敗してしまうように思います。
まとめてみると、このゲームにはソロプレイ用のキャンペーンモードがない点がネックになってしまっている気がします。キャンペーンモードがあれば、4,480円という価格でも固有のプレイ体験を確保できることである程度の出費を正当化できます。さらにプレイヤーは豊富なキャラクター・シナリオをスムーズに体験でき、その上でPvPコンテンツが乗っかっていくような形が自然だったように思います。ちょっと前でいえば、『タイタンフォール 2』が似たような形態でうまく展開していました。
いくつか気になるところについても言及しましたが、そうは言ってもまだノーススター(主人公が加わることになる一味)の旅は始まったばかり。個性的なキャラクターの中にはきっと好みのキャラクターも存在するはずで、美麗なグラフィックと高いパフォーマンスでのプレイはとても快適です。
現在『CONCORD』はすでに正式サービスが展開中。Steamの他、PlayStation 5でも、もちろんプレイ可能です。
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