映画『恋を知らない僕たちは』(公開中)に出演する、猪狩蒼弥にインタビュー。水野美波氏による同名コミックを実写化した同作は、英二(大西流星)・直彦(窪塚愛流)・泉(莉子)・小春(齊藤なぎさ)・太一(猪狩蒼弥)・瑞穂(志田彩良)の交錯する恋愛模様を描いている。

HiHi Jetsのメンバーとして活動する猪狩は、2024年に2作続けて出演作が公開されるなど、俳優としての活躍が続いている。今回は猪狩に演技への思いや、主演の大西と自身の共通点などについて話を聞いた。

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    猪狩蒼弥 撮影:友野雄

映画『恋を知らない僕たちは』出演で映画公開が続く猪狩蒼弥

――7月、8月と出演映画の公開が続きます。ご自身ではどのように感じられていますか?

撮影期間がズレているとはいえ、2カ月連続で、しかも夏に出演作品が公開されるのはびっくりします。別に意図していたわけじゃないんですけど、今まで自分の活動にあまり演技の色をつけてこなかったので、ここ最近に急激に演技に触れることが増えて、楽しいです。率直に今までの活動スタイルとだいぶ変わり、バラエティのお仕事が多いところから、舞台挨拶などでも演技について語ることもあるし。もちろん今までやってきたことも続けていくんですけど、これから演技もやっていけるのかもしれないという選択肢が増えたのはすごく嬉しいです。

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――過去には『Act ONE』などの舞台の出演もされていましたが、また違う感覚なのでしょうか?

僕らがやっている舞台は、どちらかというと総合エンターテイメントショーで、パフォーマンスがメイン。でも演技1本で行くとなると、自分の芝居に対してより高いクオリティが求められます。改めて映画に触れてみて、やっぱり何テイクも撮影されるし、「一個の作品」という部分も強いので、「演技に対する情熱を高めなければ」という思いはありました。

――太一を演じる上で心がけていたことはありましたか?

そもそも、演技が久しぶりだったんです。演技というものに対していろいろな考え方があると思いますが、僕は監督が見せたいものに近づけることが良いと思っているから、まず「監督と話そう」と考えました。監督と話していく上で、「アドリブの色を入れてほしい」とか、「和やかにしてほしい」ということを聞いて、「大得意だな」と思ったんです。なので、「監督の見せたいものに近づける」ということと、「できるだけ太一がそこにいるかのような自然さ」ということを心がけました。ベクトルは違うと思うんですけど、近いところがすごく多い役でした。僕も、ネガティブになったり暗くなっちゃったりということはないので。

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  • 窪塚愛流、猪狩蒼弥

大西流星の「あざとさ」にもある種の尖りを感じる

――今回は恋愛映画で、猪狩さんは「大西流星氏の胸キュンIQから多くを学びたい」というコメントをされていましたが、学べましたか?

僕が演じた太一は、胸キュンシーンがほぼなくて(笑)。だから胸キュンIQは学べなかったですけど、座長としての背中は大きく見えたし、頼りがいがありましたね。無理にみんなを牽引して「ついてこい」というのではなく、一緒に輪になって進んでいってくれるような、包み込む感じはずっとあって、「すごいな」と思いました。和気藹々としていました。

――大西さんはあざとい系で、猪狩さんはガツンとしたラップで尖っているイメージがあります。スタイルの違いを感じられることもあるのでしょうか?

あります! 同じ事務所とはいえ、まず関西出身、関東出身というところからだいぶ違います。いい意味で進んでいる道が全然違うし、目指しているとこもちょっと違う。とはいえ、通ずるものもすごくいっぱいあるんです。大西くんにも、尖りがある。あざとさって、ある種の尖りだと思います。SNSなどでこれだけ素が見える世の中で、「あざとい」をキープし続けるのはすごいことだし、本人もある種自分で俯瞰してそこをいじっているところもあるじゃないですか。それが面白いし、自分の中にあるものを引っ張り出してきて昇華するという考え方も似てるなと思います。

何にもないところからキャラクターを生成するなら嘘でしかない気がするけど、自分の中にあって、自分が面白いと思ってるものを引っ張り出して魅力に変えている。僕も共感しますし、そういう意味では同じサイドの考え方なのかな、と。グループの話もちょこちょこしたんですけど、やっぱり、考えが近いところはありました。

  • 映画『恋を知らない僕たちは』

――猪狩さんがそれだけ言語化できるのもすごいなと思います。それはもともとの才能なんですか?

僕、頭がいいので!(笑) というのは冗談で、本が好きだったので、もしかしたらそういうところなのかもしれません。でも大西くんも自分の言いたいことをすごく表しているし、僕も一応芸能人なので、自分の考えを伝えるのは、ある種必要な技術の一つではあって。自分の考えていることを言語化して、人に理解してもらうというのは、「磨かなきゃ」と意識しています。

――子供の頃から本を読まれていたのかなと思いますが、今回は図書室でのシーンが多いので、図書室や本にまつわる学生時代の思い出があったら教えてください。

図書室はテンションが上がるんです。 今回の図書室のシーンもロケーションがすごく良くて、見たことないくらいの素敵な図書室だったし、撮影中も、自分の映ってないシーンの合間を盗んで本を読んでいたくらい、好きなんです。中学校の時はスマホを初めて持った興奮がすごくて、一時期本を離れた時期もあったんですが、小学生の頃は図書委員だったし、休み時間の度に図書室に行って本を借りていました。読むのもすごく速くて、家で読んで次の日に返して、でまた次の本を借りて……みたいな。小学5年生で事務所に入ったんですが、行き帰りも電車で本を読んでいました。

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――どういうジャンルの本がお好きなんですか?

今は、知識を得られる本が好きです。チャップリンについての本や、哲学思想を解説する本を読んだり。昔は小説一択だったんですが、それも今思えば良かったな。小説でしか使わない言葉もあるから、美しい日本語をいっぱい知って、自分の中にインプットできましたし、作詞にも活きていると思います。今は、意識的に難しい本を読もうと頑張っているところです。

■猪狩蒼弥
2002年9月20日生まれ、東京都出身。HiHi Jetsのメンバーとして活躍し、俳優としての主な出演作にドラマ『恋の病と野郎組』(19年)、『恋の病と野郎組 Season2』(22年)、『全力!クリーナーズ』(22年)、『トモダチゲームR4』(22年)、映画『先生の白い嘘』(24年)、『帝国劇場 2024年新春公演 Act ONE』(24年)などがある。

(C)2024「恋を知らない僕たちは」製作委員会 (C)水野美波/集英社