2013年の東京2020オリンピック・パラリンピック召致決定を受け、小・中・高校生の段階で学校の授業にオリンピック・パラリンピック教育が導入され、また自治体や企業などが中心となり積極的に実施したパラスポーツ体験やパラアスリートの講演などにも触れてきていると思われるのが、現在の大学生世代です。
日本財団パラスポーツサポートセンター(パラサポ)も、2016年からこれまで、全国47都道府県で約3,500回、40万人を超える児童生徒を対象に、パラアスリートを中心とした講師と一緒に障がいや共生社会について考える教育プログラム「あすチャレ!」(小・中・高・特別支援学校対象)を実施してきました。
そこで、共生社会の実現に向け、多様な子どもたちが一緒に学び、共に過ごす時間を通じて多様性への理解や他者を思いやる心を育む教育として「インクルーシブ教育」にも注目が集まっている中で、これから社会に出る大学生が求められる「共感力」や「多様性への理解」の醸成と、障がいのある人やパラスポーツ・パラアスリートとの関わり合いについてアンケート調査を実施しました。
今回のアンケートでは、ライフヒストリーの中で障がいのある人と接した・身近にいた(いる)経験がある、またはパラスポーツやパラアスリートと出前授業、調べ学習、体験会、ポランティアなどを通して接点があると回答した学生と、接点がないと回答した学生との間に、行動や意識の面での差が見られる結果となりました。
◎調査目的
①これから社会に出る大学生のライフヒストリーの中で、これまでの「障がいのある人」や「パラスポーツ・パラアスリート」との接点、関わりについて明らかにする
②社会で求められる「共感力」「多様性の理解」などの醸成に、「障がいのある人」や「パラスポーツ・パラアスリート」との接点、関りがある場合、どのような影響があるかを探る
調査対象者の約4割がこれまでの生活の中で「障がいのある人との接点があった」と回答。どのような間柄であったかを聞いたところ、障がいのある人と接点があったと回答した人のうち47.6%が「小学校のクラスメイト・同級生」、次いで、「中学校のクラスメイト・同級生(31.8%) 」 「家族・親戚(16.6%) 」と続きます。
その他の回答としては「実習先の人(12.3%)」「アルバイト先のお客さん(12.3%)」、「ボランティア先の人(4.9%)」「小学校の先輩・後輩(4.1%)」という回答が目立ちました。
調査対象者の約1割がパラスポーツやパラアスリートとの接点があったと回答。関わった時期を聞いたところ、「小学生の時(34.4%) 」「中学生の時(34.4%) 」と回答した方が多い結果になりました。「高校生の時」に関わった方の割合は上記より低く出ており、次いで「大学生の時(32.8%) 」という回答が多く見受けられます。
「パラスポーツやパラアスリートと関わった時期」と「関わった場面」について掛け合わせて結果を確認したところ、小学生・中学生の時と回答した方は、「学校での出前授業(小:69.0%、中:50.0%)」「学校での授業(小:35.7%、中:45.2%) 」にて関わった方が多く、大学生の時では、「学校での授業(40.0%) 」「大会ボランティア(27.5%) 」にて関わった方が多いようです。
パラスポーツやパラアスリートとの具体的なエピソード(自由回答より一部抜粋)は以下のとおりです。
■パラスポーツやパラアスリートとの接点を通しての、パラスポーツに対する意識の変化これまでにパラスポーツやパラアスリートと接点があった人に、パラスポーツに対する意識の変化を聞いたところ、「パラスポーツ、パラアスリートに対する見方がポジティブに変わった(45.9%) 」が最多となり、「パラスポーツはスポーツとして面白いと感じた(43.4%) 」「パラアスリートの努力がすごいと思った(43.4%) 」という回答が続きます。
■困っているシーンに出くわしたときの行動障がいのある人が困っているシーンに出くわしたとき、どのような行動を取ったか(取ると想定されるか)を聞いたところ、全体的にみると「声をかけてサポートした(28.4%)」と回答した方が最も多い一方、「声をかけたかったが、声がけの仕方が分からなかった(18.4%) 」と回答した方も多い結果になりました。
さらに「障がいのある人またはパラスポーツ・パラアスリートとの接点有無」と「困っているシーンに出くわしたときの行動」について掛け合わせて結果を確認したところ、接点があった人は接点がない人に比べ、「声をかけてサポートした(すると思う)」という回答が多くみられます。
■障がいのある人やパラスポーツ・パラアスリートとの関わりによる気持ちの変化・感じたこと障がいのある人やパラスポーツ・パラアスリートとの接点があった人に、気持ちの変化・感じたことについて聞いたところ、「他者を思いやるようになった(47.4%)」が最多となり、次いで「他者の目線で物事をみるようになった(37.1%)」、「日常生活の中で、バリアフリーやバリアに気づくようになった(30.4%)」、「多様性について考えるようになった(28.1%) 」、「障がいの有無に関わらず、だれもが活躍できる社会になれば良いと思った(25.3%)」という結果になりました。
共感性や多様性に結びつく項目が上位に挙がっていることがうかがえます。
調査対象者に自身について共感力があると思うかを聞いたところ、74.5%が「そう思う」「ややそう思う」と回答しています。
さらに「障がいのある人またはパラスポーツ・パラアスリートとの接点有無」と「自身について共感力があると思うか」について掛け合わせて結果を確認したところ、接点があった方は接点がない方に比べ、TOP2(「そう思う」「ややそう思う」)が+23.2pt高い結果になりました。
同じく調査対象者に自身について多様性への理解があると思うかを聞いたところ、78.9%が「そう思う」「ややそう思う」と回答しています。
さらに「障がいのある人またはパラスポーツ・パラアスリートとの接点有無」と「自身について多様性への理解があると思うか」について掛け合わせて結果を確認したところ、接点があった方は接点がない方に比べ、TOP2(「そう思う」「ややそう思う」)が+21.0pt高い結果になりました。
調査協力 マイナビ学生の窓口
調査手法 インターネットリサーチ
調査対象者 性別:男女 年齢:18歳以上 居住地:全国 その他:大学生1~6年生
有効回答数 1,000サンプル
調査期間 2024年6月5日(水)~6月10日(月)
※n=30未満は不十分なサンプルサイズとなるため、参考値としてご確認ください。
本アンケートでは、「障がいのある人」は身体に障がいのある人について質問しています。
text by Parasapo