八芳園は22日、来年(2025年)実施する大規模リニューアルについてのメディア説明会を開催。代表取締役社長の井上義則氏が登壇し、八芳園グループの新たなビジョンについて説明した。それによれば、地域創生に貢献する「HAPPO-EN AREA PRODUCE」事業を日本各地でスタートするという。

  • 八芳園が思い描く2025年以降のビジョンとは?

■新事業として"エリアプロデュース"を発表

その冒頭、井上社長は直近の取り組みについて紹介した。それによれば同社は現在、東京・白金台を拠点にしながら事業領域を拡張し、DMO GATEWAY TAKANAWA・SHINAGAWAの共創パートナーとして高輪・品川エリアの活性化に注力しているとのこと。

井上社長は「この地域の宿泊施設、飲食施設、観光施設、そしてエンタメなど多様な機能をベースにして、他の地域にはない特別な体験を提供中です。最終的には、大きな成長産業であるMICEの目的地にすることを目指しています」と説明する。

ちなみにMICEとは、企業や団体などが行う会議(Meeting)、研修旅行(Incentive Travel)、国際会議(Convention)、展示会(Exhibition / Event)を総称したもの。

  • 八芳園 代表取締役社長の井上義則氏

こうした事業展開を通じて得た経験やノウハウを活かし、今後は全国各地でエリアプロデュースを展開していく、と宣言する。「八芳園グループは100周年に向け、本物を追求するエリアプロデュース企業へと進化していきます」と井上社長。具体的には、どんなことを考えているのだろうか?

  • 観光振興は(八芳園の前身である)長谷観光が創業時に思い描いた理念だった

「グローバルの観光市場における日本の競争力を維持するため、いま、日本が誇る美しい文化資産を守ることが急務です。近年はオーバーツーリズムによる弊害も表面化しており、観光産業の成長、文化資産の継承というものは、たくさんの観光客を受け入れるだけでは実現できないことも分かってきました。そこで私たちは地域に根付いた文化、風習、ローカルルールを遵守した上で人々の交流を促進し、地域の方々の応援もいただきながら観光産業の持続的な成長を促していきたい」

続けて、「これまで八芳園では、たくさんのお客様が結婚式を挙げられました。八芳園が続いている限り、いつまでも、お客様の心のふるさとであり続けられる。それと同様に、全国各地の文化資産が地域の人々の心のふるさとであり続けられるよう、私たちもアクションを起こしていきます。それがHAPPO-EN AREA PRODUCEです。これは第2の創業期として自社の社会的役割を捉え直した結果であり、日本観光の奉仕者としての役割をさらに強く全うしていこう、というものです」と、言葉に熱を込めた。

  • HAPPO-EN AREA PRODUCEの意義

八芳園グループの強みとして文化資産への理解と保有、文化資産活用のノウハウ、企業・団体・自治体などと連携・共創してきた実績、さらには事業を継続的に成長させてきた実績がある、と井上社長。そしてHAPPO-EN AREA PRODUCEは、すでに福岡・天神エリアにて今春スタートした、と明かす。

「警固神社の社務所ビル9階に次世代型の総合会場THE KEGO CLUB by HAPPO-ENをオープンいたしました。神前式、祈祷、祝祭などを提供している警固神社が100年後も市民に開かれた場所としてあり続けるため、今後も、より多様な人々の交流が生まれる場にアップデートしていきます」

  • THE KEGO CLUB by HAPPO-ENのホームページより引用

  • 多彩な集いの場をプロデュースする(画像はイメージ)。運営は、グループ傘下の八芳園エリアプロデュース警固

ここで、「私たち八芳園グループはこれまでの知見を活かし、全国各地にある文化資産を再生し、そこに付加価値のあるソフトを乗せて、非日常体験を提供することで文化と経済をつないでいきます。HAPPO-EN AREA PRODUCEにより新しい町づくりを行い、日本が真の観光立国になるための後押しをしていきます」と、井上社長。

インバウンド需要を取り込むほか、MICEのニーズにも対応することで事業を持続的に成長させていく、と意気込む。

  • 100周年に向けて、全国各地で事業展開していく

八芳園グループが100周年を迎えるのは19年後の2043年。これを踏まえた上で「現在の八芳園グループの総売上は100億円前後ですが、2030年度には120億円以上まで引き上げていきたい。そして公益も上げていきます。つまり連携協定先の皆さんのもとにも、きちんと収益が入るようなビジネスにします」と約束する。

なお、すでに連携協定を進めている自治体については、東京五輪2020大会において交流を深めた岩手県山田町のほか、岩手県久慈市、山形県長井市、福島県岩瀬郡鏡石町、栃木県那須塩原市、山梨県山梨市、徳島県板野郡松茂町、宮崎県宮崎市などを挙げている。

■館内のリニューアルについて

この後、八芳園 取締役総支配人の関本敬祐氏が登壇し、館内のリニューアルデザインについて紹介した。八芳園は2025年3月から8月末まで約半年間ほど休館した後、2025年10月にリニューアルオープンを予定している。

  • 八芳園 取締役総支配人の関本敬祐氏

新しい八芳園ウエディングのシンボルとなるのが、独立型挙式会場「Celebration Hall -The Garden- 」。円形に大きく開かれた天井開口から降り注ぐ光を水盤が鏡のように映し、さまざまな光の表情でカップルを祝福する。ウエディングの用途に限らず、例えば企業の入社式などにも利用できるという。

  • 独立型挙式会場「Celebration Hall -The Garden- 」

  • 収容人数は最大80名、挙式スタイルはキリスト教式

八芳園が手掛けるコスチュームサロン「The Bridal Boutique KOTOHOGI by HAPPO-EN」も新たに併設される。和の世界観を取り入れた上質な空間に、400年続く庭園を有する八芳園ならではの婚礼にふさわしい衣装を取りそろえた。関本氏は「八芳園だからこそ纏(まと)うことのできる、そんな"ここにしかない"衣装を用意しています」と話す。

  • コスチュームサロン「The Bridal Boutique KOTOHOGI by HAPPO-EN」

また、ウエディングサロンは、体験と創造を届ける「Experience Lab」(エクスペリエンスラボ)に全面リニューアルとなる。ここでは商品を実際に手に取り、体験しながら選ぶことができる。

入り口にはバーカウンターを構えるほか、試食専用のシークレットダイニング、そしてアトリエ、フォトスタジオも併設。ウエディング以外の打ち合わせにも使用できるという。

  • 体験と創造を届ける「Experience Lab」

結婚式、成人式、アニバーサリーなど、大切な一瞬を映しとる「LIFE EVENT PHOTO STUDIO」もリニューアル。シンプルな白を基調とする、心地よいぬくもりを感じる空間となるようだ。

  • 写真スタジオ「LIFE EVENT PHOTO STUDIO」