伊藤園お~いお茶杯第66期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は予選が開幕。8月19日(月)には計4局が行われました。このうち、関西将棋会館で行われた第8ブロックの牧野光則六段―折田翔吾五段戦は108手で牧野六段が勝利。予選突破に向け幸先よいスタートを切りました。
長い予選の幕開け
本予選は20名程度からなるトーナメントを勝ち抜いた8名が挑戦者決定リーグに進むもの。両対局者は予選突破までに5連勝が必要です。振り駒が行われた本局は後手となった牧野六段が一手損角換わりを採用、先手の折田五段が棒銀の要領で銀交換を果たして盤上は第二次駒組みに移ります。
ジリジリとした間合いの計り合いが続いたのち、牧野六段は受けを基調にペースをつかみます。自陣に引き成った馬の力で相手の攻めを封じたのが堂々とした指し回し。攻めの手を指さずとも自陣に築いた金銀四枚の銀冠の堅さが物を言って、徐々に先手の指したい手が限られてくるのを見越しています。
牧野六段のにらみ倒し
十分な態勢を得た牧野六段は満を持して反撃に乗り出します。9筋、8筋と連続で歩の突き捨てを入れてから6筋の歩を突いて争点を作ったのは右桂の活用を目指した本筋の一手。この注文を外すべく折田五段もなんとか攻め合いの形を目指しますが、飛車と角が働きに欠けるためやや無理攻めの感は否めません。実戦はここから牧野六段の反撃が始まります。
たたきの歩の手筋を用いて矢倉囲いの香を釣り上げたのが教科書通りの矢倉崩しでした。終局時刻は18時47分、最後は形勢の開きを認めた折田五段が投了。無理ない指し手で優位に立った牧野六段の快勝譜が完成した瞬間でした。勝った牧野六段は次回戦で大橋貴洸七段と顔を合わせます。
水留啓(将棋情報局)