「ナフィールド国際農業奨学金制度」とは

70年以上の歴史を持つ国際的制度

ナフィールド国際農業奨学金制度は、1943年にイギリスで設立されたナフィールド財団がその起源。現在は世界的に広がり、これまでに約1700人のスカラーが世界で農業技術や文化を学び、各国で活躍をしています。
スカラーに選ばれると、スポンサー企業などからの奨学金を得て、2年間にわたって世界六大陸の農業生産現場を見に行くことができます。近年では、年間で約80人のスカラーが世界から選ばれています。
世界の先進農業を学び、その知識を自身の農業に役立てられることはもちろん、スカラー同士のネットワークが構築されることも大きな魅力です。

次世代農業者を育成していくナフィールドジャパン

日本では2019年、一般社団法人ナフィールドジャパンが設立され、ナフィールドインターナショナルの加盟国として認められました。
「地域農業に貢献したいと思う若手農業者たちを応援したい」という思いから始まったナフィールドジャパン。毎年、日本代表スカラーを選出しており、今年もその募集が始まっています。
日本で選ばれるスカラーは年に1人だけ。スカラーに選ばれたら自身で研究テーマを設定し、関心ある国の農業者や政府、食品関連企業、関連団体などの視察やディスカッションにより見識を深め、最終的にはレポートを作成します。
どのように貴重な経験が得られたのか、日本代表スカラー第1期生の森上翔太(もりがみ・しょうた)さん、第2期生の久保宏輔(くぼ・こうすけ)さんのレポートから紹介します。

奨学生たちの貴重な体験

京都で九条ネギを栽培する森上さん

第1期生の森上翔太さん

非農家から新規就農した森上さん。
アメリカ・カリフォルニアでの研修や、群馬県の農業法人での勤務などを経て、2013年に27歳で九条ネギの周年栽培を行う株式会社あぐり翔之屋を設立しました。2019年には、同じく九条ネギを栽培する経営者と、販売会社である京葱SAMURAI株式会社をスタート。
そしてその2019年に応募したのが、まだ始まったばかりナフィールドジャパンの、ナフィールド国際農業奨学金制度でした。
森上さんはスカラーとして「環境と調和した農業」と「生産性の向上」の両立の実現を研究。チリ、オランダを訪れ、農業者にインタビュー。そこから得た学びを、日本の農地集約を進めるためのアクションプランとしてレポートしています。
森上さんはその学びに感謝しながら「社会にインパクトを与えられるような農業を実践していきたい」と語っています。

国内外の放牧酪農家とネットワークを築いた久保さん

第2期生の久保宏輔さん

広島県で酪農を営む砂谷株式会社の3代目である久保さん。動物アレルギーを持っていたことから、当初は家業を継がなかったそう。しかしある日、父親から酪農経営に関する相談を電話で受け「牧場をなくしたくない」と思い、2016年に家業に就きました。
新型コロナウイルス禍の2020年には経営危機に陥りながらも、消費者へ新たな価値を提供したいという思いから、放牧酪農の実現を決意します。
とはいえ「圧倒的にその目標を実現するための戦略を描くのに必要な知識も経験もなかった」という久保さん。
そのときにナフィールド国際農業奨学金制度を知ったといいます。そして、スカラーに選ばれると、国内外の多くの放牧酪農の現場を見て回ったそうです。
海外はイギリス、ジンバブエ、スペイン、イタリアなど。国内は北海道や熊本など。多くの土地と人に出会えたのはスカラーという立場ならではと言えるでしょう。
久保さんは「研修を通して国内外の多くの放牧酪農家とのネットワークを形成できた」といいます。

2025年度の募集を開始

ナフィールド国際農業奨学金制度による研修、視察、ディスカッションについて、スカラーたちはみな「Lifetime changing experience」(人生を変革させる経験)と語るそう。
2025年度(第6期)の募集は2024年7月29日から。詳しくはナフィールドジャパンのホームページなどからご確認ください。
次世代の農業リーダーが育っていく貴重なプログラムは、大きな成長を促すに違いありません。

(編集協力:三坂輝プロダクション)