Windows InsiderのCanaryチャネルは、Windows開発の早期段階の機能をプレビューする場である。非常に初期の段階であるため、エンドユーザーへのリリースに長い期間を要し、時にはプレビューされても最終的に製品に搭載されない場合がある。しかし、”プラットフォームの変更”が最初に試される点で重要な役割を果たしている。

Microsoftが8月15日にCanaryチャネルにリリースした「Windows 11 Insider Preview Build 27686」の機能変更および修正が注目を集めている。Windows 95時代から変更されてこなかったFAT32のパーティションサイズの上限32GBを2TBに引き上げた。また、最小システム要件を満たさないデバイスにWindows 11をインストールする非公式なバイパス手法を無効化する修正も実施された。

30年続いたFAT32の32GB制限 2TBに緩和の動き

Canaryチャネルのビルド27686では、コマンドラインからformatコマンドを使ってディスクをフォーマットする場合、FAT32で最大2TBのフォーマットが可能となっている。現段階では、エクスプローラーやディスク管理などGUI(グラフィカルユーザインターフェース)によるフォーマットの上限は従来と同じ32GBのままだ。

Windowsで作成できるFAT32パーティションのサイズが32GBに制限されているのは、技術的な制約ではない。元Microsoftの開発者のデビット・プラマー氏によると、1994年に同氏が暫定的に設定した上限であり、それが約30年にわたって残り続けてきた。ただし、最大2TBサイズのFAT32パーティションの読み取りはサポートされており、Windowsで32GBを超えるパーティションは作成できないが、サードパーティのツールを用いて作成した32GB以上のパーティションを扱うことは可能である。

現在、ユーザーがFAT32を選択する理由は減少している。WindowsのOSドライブのファイルシステムはNTFSであり、また外付けドライブ用のファイルシステムとしてもファイルサイズの制限が少ないexFATを選ぶユーザーが増えている。FAT32は互換性に優れるが、単一のファイルサイズが最大4GBに制限される。exFATをサポートするデバイスの普及度は十分に高まっており、大容量ドライブの増加や、動画やアプリケーションで大きなファイルを扱う機会の増加に伴い、FAT32のファイルサイズ制限がより大きな制約となりつつある。しかし、古いデバイスとの互換性や軽量なファイルシステムという点で、FAT32は今なお必要とされており、32GB制限の見直しはFAT32を必要とする一部のユーザーから歓迎されると予想される。

Windows 11、対応デバイスチェック厳格化!?

Windows 11は、動作周波数1GHz以上で2コア以上の64bit互換プロセッサーやTPM (トラステッド プラットフォーム モジュール) 2.0など、Windows 10から最小システム要件が厳しくなった。これがWindows 11へのアップグレードの障壁の1つとなっており、 2024年7月時点のWindows全体におけるシェアは、Windows 10が「65%」、Windows 11は「30.82%」と、今でもWindows 11の倍以上の規模でWindows 10が使用されている(Statcounter)。

しかし、Windows 10の最終バージョンになるWindows 10 バージョン22H2のサポート終了日が2025年10月14日に迫っている。Microsoftは延長セキュリティ更新サポート「Extended Security Updates」(ESU)を発表したが、これは有料プログラムであり、最大3年である。そうした中、ユーザーコミュニティにおいて非対応のデバイスでWindows 11を動作させる方法が共有されていた。

その1つである「/product server」コマンドラインを使用してハードウェア要件のチェックを回避するバイパス手法が、Canaryチャネルのビルド27686では使用できなくなったとBob Ponyが報告している。

非対応デバイスでWindows 11を動作させる方法は「/product server」だけではなく、他にもいくつか存在する。だが、「/product server」は非常に簡便な回避方法であり、情報が広がり始めてからしばらく経過している。そのため、Microsoftはユーザーの自己責任で容認するという見方もあったが、今回の修正により、同社が今後、対応デバイスのチェックを厳格化する可能性が指摘されている。

これらに加え、Canaryチャネルのビルド27686には、Windows SandboxをWindows Store経由で提供する「Windows Sandbox Client Preview」が含まれる。Windows Sandboxは、システムから独立した軽量な実験環境を提供する。信頼性が不十分なソフトウェアの試用に役立つツールである。