インタビュアーは、『ダウンタウンDX』を20年以上演出してきた読売テレビの西田二郎。「西田二郎のメディアの旅」今回は中編からのつづき。テレビ局がテレビを超えたビジネスを展開する未来ついて語っている。
【構成・鈴木しげき】
仕事好きを増やして社会を豊かに『#シゴトズキ』
清水 : 経営者の方が多いんですけど、武田双雲さんなどタレントの方にも出ていただいたり、国境なき医師団の看護師の方にも出ていただいたり。元々このチャンネルはコロナ禍でやりたいことができないと思ってる後輩たちや、将来の進路どうすればいいのかわからないといった学生たちに、いろんなロールモデルがあるんだよってことを示せるように始めたんですね。ですから、男女半々、年代も若い人から高齢の方まで。ダイバーシティを大事にしようと、いろんな方に出てもらっています。
西田 : イベントもされたとか?
西田 : へえー。
清水 : 動画再生数だけで考えると、ネガティブワードをいっぱい入れて「仕事嫌いの何とか」だとか「仕事場のアイツはバカだ」とか、そんなふうにやった方が多分、再生数は稼げるんだと思うんですよ。
西田 : YouTubeで回すためにはそういう方法もあるんでしょうね。けど、そうじゃないと。
清水 : ミッションは「仕事好きを増やして世界を豊かにしたい」ってことですから。そのためには何が必要かな? と考えたら、まずは好きな気持ちの「好き」を「スキル」に変えてもらって、『#シゴトズキ』を見ながら自分も何かできるかも、と思ってもらえたら素敵だなと。で、そのスキルをシェアできるようにイベントをやったりしてるんです。
西田 : 交流会的な要素が大きいんですね。それは参加者のみなさん喜びはるんちゃいます? 自然に場ができていくってことですよね。
清水 : おっしゃる通りなんです。
西田 : 『#シゴトズキ』ってのは動画の配信であり、コミュニティなんですね。
清水 : ゆくゆくは3万人くらいがお台場に世界中から集結して、音楽やアニメや映画、あとテクノロジーも含めてみんなで交流したり、カンファレンスやってたり、そういう世界ができたらいいなと。
西田 : フジテレビってエンターテイメントのイメージがありますけど、今はビジネスを介したエンターテイメントを清水さんみたいな人が開拓してるところがめちゃめちゃ面白いですよね。
清水 : ありがとうございます。
西田 : 混ぜますねぇ。今度はもう、テレビ局を飛び越えた方がいいですよね。読売テレビと何かできることありませんか、みたいところへ。
清水 : 本当にそういう感じでできたらいいなっていうのが今日まさにここに来た理由なんです。せっかく港区にテレビ局が全部揃ってるんですから。
西田 : テレビがそういうタイミングに来てるのかもしれませんね。みんなで手を合わせて仲良くやっていきましょう、みたいな。
未来のテレビとは?
清水 : 今までは機能性でとにかくたくさんの人に見てもらおうとやってきましたが、だんだんアナタのための番組になってきて、好きな人に向けて送るような感覚に変わってきてると思うんです。そういう感覚は、ネットやYouTubeのほうが得意かもしれませんが、いずれにせよ一方通行の部分が強いと思ってるので、これからは参加するという部分も大事になってくるかなと。
西田 : ほー。
清水 :『#シゴトズキ』ってマスではないけれど、イベントやったら必ず来てくれる人たちがたくさんいて、参加することの意義を感じてもらえてると実感します。大学生の方から「何でもいいから手伝わせてほしい」とボランティアのDMが来たりするんですよ。なにか“自分たちでつくる”そういったところになってきてるなと感じます。
西田 : はいはい。
清水 : 双方向でつくっていく。これをやることによって、テレビでまたマスやろうとした時に、テレビは一方通行ですけど、相手が見えてやりとりができるんだと思うんです。ですから、参加できるものをつくって、新しいことをどんどん生み出したいなと。
テレビマンがポーラと共同開発で冷凍食品をつくる
清水 : はい。冷凍食品をつくった時は、さすがにいろんな人から「えっ!?」と言われましたね(笑)。
西田 : それが『わたしのための、BIDISH。』ですね。
清水 : アナウンサー、『めざましテレビ』のディレクター、『ぽかぽか』のAD、国際ビジネスのディレクター。彼女たちが美の食材にこだわって考案したオリジナルメニューを冷凍食品として出したんです。
清水 : 新しいことが好きな女性たちを僕が個別に設定しました。元々『BIDISH』はマーケットインというよりプロダクトアウトで、自分たちが食べたいものをつくろうという考えなんです。『ぽかぽか』のADさんが開発したポークジンジャーがあるんですが、彼女は疲れた時のリフレッシュ法がサウナで、サウナの中でもほうじ茶のサウナが大好きで、それで汗を流してから生姜焼きを食べるのが至福! というので、それを冷凍食品にしました。「ほうじ茶香るうまみたっぷりポークジンジャー」と言います。テレビ業界にかかわらず、自分と同じように頑張っている人たちに食べてもらって元気になってほしいと。
西田 : へぇ~!
清水 : 今回、ストーリーから商品をつくるということを5品やりました。これ、株式会社ポーラさんと組んで出したんですが、まさに『#シゴトズキ』のイベントで出会った方たちなんです。「もうポーラは『化粧品の会社』をやめたんです。我々は美の可能性を広げる会社なんです」ってその人が言うんです。なるほどと思って、こちらも「フジテレビも『テレビの会社』やめたんです。フジテレビはコンテンツの力で驚きや感動をつくる会社なんです」って言ったら、「なんか似てますね!!」となってご一緒することになったという。そしたら、食べて美しくなるというコンセプトで考えてるというので、「じゃあ、食というコンテンツで驚きや感動をつくりましょう!」といろんなメンバーを局から集めたんです。
西田 : 今、世の中はマーケティングで最大公約数を意識して誰にでも好かれるものが出てますけど、『BIDISH』は真逆ですね。
清水 : そうなんです。共感してもらえるんだったら買ってもらえませんかっていうタイプのもので。やっぱり響く人たちがいるんですよね。本当に何回試食したかわかんないくらいで、「これだったら納得できる!」というものが完成したので出させていただきました。
清水 : ビジネス推進局の上司が「文化をつくれ」と僕によく言ってて。仕事って何か言われたからやるとなると、これって面白くないですよね。作家の森鴎外が仕事を「為事」と書いていましたが、自分で何を為すかを仕事にしていくと、こんな楽しいものはないでしょう。楽しそうに仕事をする人がいたら、自分もやってみたくなる。そんな文化をつくりたいんですよ。
西田 : もう、テレビを超えて冷凍まで行きましたからね。次は?
清水 : 先日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)さんとしゃべってた時に「これから月旅行へみんなが行くようになったら、宇宙船の中って暇じゃないですか。宇宙船の中でどんなコンテンツが必要ですかね?」みたいなことが話題になって。そういうことを考えるのが楽しくて。
西田 :(笑)
2002年フジテレビ入社。報道局に配属され、記者、ディレクター、プロデューサーなどに従事。2016年にコンテンツ事業局(現・ビジネス推進局)へ異動すると、テレビニュースのデジタル化や新規事業開発などを担当。「FNNプライムオンライン」などネットメディアの立ち上げや、テレビ番組との連動コンテンツなど幅広く手掛けた。2023年、再び報道局へ異動。ビジネス推進局も兼務。「ニュース番組プロデューサー」と「ビジネスプロデューサー」の二刀流を務める。また、フジテレビ公認YouTuberの顔も持ち、経済番組『#シゴトズキ』で企業幹部やスタートアップCEO、タレントなど多彩なゲストから「仕事に役立つ思考法」を聞き出している。